立ちはだかる大地の脅威
三将を倒したティア=クラヴィアは、勝利の余韻に浸る暇もなく、次の試合へと呼び出された。
相対するのは、土属性の使い手、キール=バリオット。リサ、マルク、エミリアをまとめる、このチームの大将。
ティアは呼吸を整えるが、疲労はすでに限界に近かった。二連戦のダメージは無視できるものではない。
(あとひとり……ここで倒せば、終わる……!)
その強い意志だけで、ティアは足を前に進めた。
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試合開始の合図とともに、地が鳴いた。
キールは即座に両手を地に叩きつけ、前方へ複数の石槍を飛ばす。
ティアは咄嗟に飛び退き、手を振るって火の障壁を展開。
「ファイアウォール!」
石槍は燃え尽きる前に火の壁を突き破り、ティアの肩をかすめる。
(重い……っ!)
ティアは後方にバックステップしつつ、炎の槍を生成。
しかし、それを投げようとした瞬間——
「遅いな」
キールが踏み込んだ。足元から隆起した土の柱がティアのバランスを崩す。
「っく……!」
なんとか体勢を立て直し、近接戦に切り替えようとするティアだが、キールの圧倒的な硬さと重さが防壁のように立ちはだかる。
ティアの炎の拳が命中しても、キールの土の鎧がダメージを吸収してしまう。
「その程度の炎じゃ、俺の土は砕けない」
言葉通り、キールは防御一辺倒ではなく、確実に隙を狙って攻め続けていた。
地面から突如生える岩柱、足元を掴もうとする土の腕、そして土砂の投擲。
「動きにキレがないな。無理もない。さっきの大技、見事だったぜ」
ティアは歯を食いしばる。消耗しきった身体は思うように動かず、攻撃は回避にまわりがちになる。
(っ、足が重い……視界も、にぶい……)
攻撃を続けなければ、ジリ貧になる。ティアは最後の力を振り絞り、詠唱した。
「ファイア・バースト!」
燃え上がる炎が一帯を飲み込む。
キールの姿が炎に包まれた——かに見えた。
だが次の瞬間、煙の中から突き出された岩の拳が、ティアの腹部を打ち抜いた。
「ぐっ……!」
ティアの身体が宙を舞い、地に叩きつけられる。
審判が駆け寄り、確認ののち手を挙げた。
「ティア=クラヴィア、戦闘不能!この試合、キール=バリオットの勝利!」
ティアの意識は薄れかけていたが、最後に見えたのは、誰かが走ってこちらに来る姿だった。
いつも頼りなく見える顔が、今はなんだか頼もしく見えていた。
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「ティアはよくやってくれた。あとは——」
僕は静かに歩み出る。
ユーニ、サナ、そして倒れたティア。
彼女たちの想いと戦いを受け継ぎ、いま、大将として立つのは自分の番だった。
相対するは、キール=バリオット。
学園きっての土魔法の使い手であり、実力者。
(僕の、力が試される……)
今まで、守られてきた自分。
けれど、これ以上は——
「僕が、みんなを守る番だ」
静かに握りしめた拳の中に、確かに宿るのは、未完成ながらも燃える覚悟だった。
そして、大将戦の幕が上がる。




