紅蓮の誓い、ティア炎上す!
試合場に立つティアは、いつになく静かな佇まいだった。
その双眸に宿る紅の光は、まさに怒りの焔――サナを傷つけられた怒りが、彼女を突き動かしていた。
「三将戦、ティア=クラヴィア 対 エミリア=ローデン。……開始!」
審判の宣言と同時、両者が走り出す。
「《アクア・スパイラル》!」
「《フレイム・バレット》!」
水と炎が空中で激突し、蒸気が試合場を包む。
煙を突き抜け、エミリアの水刃がティアの肩をかすめる。
「くっ……!」
ティアはすぐに体勢を立て直し、距離を取った。
(この子……水魔法の制御力が高い。攻撃だけじゃなく、防御も徹底してる……!)
だが、エミリアはさらに追い打ちをかける。
「《アクア・ミサイル》!」
複数の水弾が矢のように飛来する。ティアは連続ステップでかわすが、一発が足元をかすめてよろめく。
「ふふ……やっぱりあなたも、マルクを誘惑する泥棒猫なのかしら?」
「チッ……そんなわけないでしょ」
ティアが舌打ちしつつ構え直すと、エミリアが勝ち誇ったように口元を歪めた。
「まあ、誘惑する胸がないものね」
「……!」
ティアの目が一瞬だけ鋭く光る。
(ああ、またか……)
そう思いながらも、ティアは深く息を吸って――静かに吐いた。
「……そんな安い挑発に、誰が乗るのよ」
静かに、しかし力強く言い放ったティアに、エミリアが眉をひそめる。
「……ふぅん。余裕ぶっていられるのも今のうちよ!」
エミリアはさらに水を操り、槍状の氷を生み出して飛ばす。ティアはこれを炎の輪で焼き払い、火柱を巻き起こす。
「《バーン・リング》!」
火輪の魔法が爆風を巻き起こし、エミリアの視界を奪う。
同時に、ティアは魔力を集中し、次の攻撃の準備に入っていた。
(今の私は、一人じゃない。ハルト、サナ、ユーニ……みんなの想いを背負ってる)
ティアの両手に火炎の球体が集まりはじめる。
「《クリムゾン・ブレイズ》!」
地面を這う炎がうねるようにエミリアへ襲い掛かる。
「ぐっ……!」
間一髪で防御魔法を展開したエミリアだったが、その刹那、視界の端に――
「しまっ――!」
ティアが跳躍していた。上空からの強襲。
「これで終わりよ!!」
「《エクスプロージョン・フレア》!!」
巨大な火球が炸裂。試合場を包む熱波と光。
蒸気と煙が視界を奪い――やがて晴れた時、そこに立っていたのはティアだけだった。
観客席がどよめき、審判が腕を振り上げる。
「三将戦、勝者――ティア=クラヴィア!!」
ティアは深く息を吐き、髪をかきあげながら勝者として立ち尽くす。
その様子を観客席で見ていたハルトは思わず声を漏らした。
「……すごい。やっぱり、すごいな……ティア」
そして、試合場の反対側――
Dカップチームの大将であり、ティアの次の相手でもあるキールがニヤリと笑っていた。
「さすがはハルトのパートナーってところか……面白くなってきたじゃねぇか」
炎の戦いは終わり、次に訪れるのは――大将戦。
ティアとキール、異なる道を歩んできた2人の、意地と意志のぶつかり合いが始まろうとしていた。




