雷と水、そして──無自覚なラッキー勝利!
「第二将、サナ=リヴェール。前へ」
「対する、マルク=ファルマント。前へ」
緊張感の漂う中、二人が静かに歩みを進め、試合場の中央で向かい合った。
小柄でおとなしいサナに対し、対峙するジークは長身の細身。整った制服に銀縁の眼鏡、几帳面で品のある所作。
だが、その眉間にはかすかに冷や汗がにじんでいた。
「……できれば、傷つけたくはありません……が、試合なので……容赦は……なるべく、しません」
カクカクとした口調で紳士的な言葉を投げるマルク。
だが彼の手元に走る微細な雷光が、彼が本気で戦うことを物語っていた。
審判の合図とともに、地を這う雷が咆哮した。
「《ライトスティング》!」
鋭い雷の閃光が床を割るように突き進み、サナの足元を狙った。
即座にサナは小さく詠唱。
「《ウォーターシールド》!」
薄く張られた水の膜が雷撃を受け止め、弾け飛ぶ。
しかし雷の速度はそれを上回り、肩にかすった衝撃にサナがよろめく。
「くっ……!」
続けざまに、マルクは宙に指を掲げ、無数の雷の針を形成した。
「《ライトニードル》──行きます」
空中に浮かぶ雷の槍が雨のようにサナに降り注ぐ。
サナはステップで横に回避しつつ、水の渦を腕に纏い始める。
「……今度は、こっちの番……!」
「《アクアランサー》!」
ねじれた水の槍を放つサナ。だがマルクは軽くそれを逸らすように指先をはじき、雷撃で相殺する。
「……水の魔法は、見切りやすい……」
「っ……そんなの、わかってます……!」
防御しながら魔力のタイミングを調整し、間合いを保つサナ。
だが攻撃の手を緩めないマルクの集中力と緻密な魔力操作に、徐々に押し込まれていく。
(……このままじゃ……負けちゃう……!)
歯を食いしばりながら、サナは水の弾幕を複数展開する。
「《ウォーターアロー》、……っ、連射!」
放たれる水矢の雨。しかしそれさえも、マルクの正確な《ライトバリア》で防がれてしまう。
「……これで終わりにしましょう」
雷の矢が巨大な槍へと変わり、マルクの背後に浮かび上がった。
「《ボルトランス》!」
雷の重槍が一直線にサナへ突き刺さる。
回避しきれず、サナは膝をつきながら間一髪でそれを逸らす。
だが、その爆風で体勢を崩し、サナは前のめりに倒れてしまった。
(やだ……負けちゃう……)
その瞬間だった。
「あっ……!」
マルクも体勢を崩し、思わず前のめりに。
次の瞬間、サナのFカップに正面からダイブした。
「ぬああああああああっっっ!!??」
鈍い音。鼻血。混乱。
轟く悲鳴。電撃が暴走する。
「ち、近い……ちかちかちか……っ」
ぶくぶく……。
マルクの顔が真っ赤に染まり、目がぐるぐると回りはじめる。
ついには鼻血を噴きながら、その場に崩れ落ちた。
「……勝負あり! マルク、戦闘不能!」
「……え?」
審判の宣言に、サナはぽかんとしたまま立ち上がる。
観客席には爆笑が巻き起こり、ティアはあきれたように額を押さえていた。
「まったく、サナも変なところで運がいいわね……」
「ふふっ、でもよかったよ。勝てて」
ユーニも明るく笑い、ハルトは内心ほっとしていた。
(ま、勝ちは勝ちだよね……!)
だが、サナの胸に顔面ダイブしたマルクは、しばらく試合会場でぴくぴくしていたという──。
「…あの女、ゆるさない」
ハルトたちが勝利を喜んでいる裏で、相手チームの三将の選手がサナのことを睨んでいた。
そして、次なる三将戦。
サナの前に再び壁が立ち塞がる。




