風と雷、激突の空舞台
ついに幕を開けた、カップ無差別グループ対抗トーナメント上位16戦。
先鋒戦──一将を務めるのは、元気印の風魔法使い・ユーニ。
対するは、Dカップグループの実力者、キールのカップリングパートナーであり、雷属性の魔法を操るリサ。
落ち着いた佇まいと涼やかな表情の奥に、確かな技術と魔力量を秘めた強敵だった。
「ユーニ=グランシェル、前へ」
「リサ=アルディス、前へ」
開会の合図が鳴り響いた瞬間、風が、競技場を駆け抜けた。
ユーニの一撃目は、疾風のような突進魔法。
自らの足元に風を纏わせ、瞬間的に加速。鋭く間合いを詰めて、接近戦を挑む。
「風脚――《スカイステップ》!」
宙を蹴るように浮かび、間合いを縫うユーニ。
だがリサはその機動を読み切っていた。
「……甘いわ」
リサの指先が弧を描くと、足元に電磁を帯びた文様が展開された。
「《スリップマグネス》」
滑るように足を取られ、ユーニの軌道がズレる。その瞬間を逃さず、リサの雷刃が斜めに奔った。
「くっ!」
ユーニは地を転がりながら回避。髪の一房が裂けた。
一撃の重さよりも、細やかなテクニックとタイミングで削り合う戦い。
性質の異なる魔法の応酬に、観客席も静まり返る。
「こうなったらっ――!」
ユーニは大きく息を吸い込み、両手を広げた。風が渦を巻く。
「《ウィンドスラッシュ・バースト》!」
断続的に飛ぶ風の刃が、連続してリサを襲う。
しかしリサは焦らない。両手を前に構え、小さく詠唱を囁く。
「《エレクトロニックドーム》」
瞬時に展開された雷の障壁が、ユーニの連撃を吸収する。
攻めあぐねたユーニの表情が、わずかに焦りを帯びた。
(……強い……! けど、ここで引いたらダメっ!)
リサもまた思っていた。
(勢いで押すだけの子かと思ったけど……見くびっていたわね)
お互いが真剣に相手を認めた瞬間、戦場の風向きが変わった。
リサは細かい魔力操作で磁場を操作し、ユーニの足元を乱す。
一方、ユーニは全身を使って空中機動を繰り返し、斜め上や背後からの不規則な攻撃をしかけていく。
一進一退の攻防。
風と雷がぶつかり合うたび、観客の頬をかすめる余波が吹き抜ける。
そして終盤、ふたりの体力も魔力も限界に近づいたそのとき。
どちらからともなく、最後の魔法が詠唱される。
「《トルネードスピア》!」
「《マグネティックブラスト》!」
巨大な風の槍と雷の衝撃波が互いに突き進み――正面衝突。
爆風と砂煙が競技場を覆い尽くした。
しばらくして、風が静まり、視界が晴れた時──
ユーニとリサは、お互いの一歩手前で地に伏していた。
「ふふ……すごいね、リサちゃん……」
「そっちも……なかなかだったわよ、ユーニ……」
互いの実力を認め合うように、拳を軽く合わせて、目を閉じる二人。
勝敗はつかず。
引き分け、という結果ながら、どこか誇らしげな顔で戻ってくるユーニに、ハルトたちは微笑んで出迎えた。
「おかえり、ユーニ」
「……うん、ただいまっ!」
――そして、静かに名が呼ばれる。
「第二将、サナ=リヴェール。前へ」
水の魔法使いが、静かに歩み出る。
次なる戦いの幕が、今、上がろうとしていた。




