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ballare!  作者: ポメ
9/18

クックポン

 僕はクックポンが正常に動くかどうか確かめるべく、試用運転をすることにした。

 クックポンはお料理機器だ。

 簡単に説明すると、材料を入れるだけで勝手に料理を作ってくれる道具だが、メニューは限られている。作れるのは、カレーやシチュー、ハヤシライスなどの市販で売られているルウが存在するもので、肉・じゃがいも・ニンジン・玉ねぎを使うメニューだ。

 全体は、4段構造になっており、まず一番下にお鍋の部分が存在する。さらに上に向かって、材料切断エリア、皮むきエリア、洗浄エリアという構成だ。使い方は簡単で、1番上の洗浄エリアに野菜を洗わずそのまま入れる。洗浄エリアは3つに分かれており、じゃがいもを入れるところ、ニンジンを入れるところ、玉ねぎを入れるところがある。ここで野菜を洗った後、下に移動する。皮むきエリアだ。ここではそれぞれの野菜に合わせて皮をむいてくれる。そのあと切断エリアに移動して野菜を切るという訳だ。肉は切断エリアにサイドから入れる仕組みだ。セットした肉が切れていない場合は切ってくれる。別口にある投入口に水を入れると鍋の部分と洗浄エリアに水が流れ込む仕組みにした。ルウは鍋に近い部分に別の投入口を作った。

 この出来上がりイメージが、左手マッスル君に、なかなか伝わらなかった。作成する製品入力画面にイメージを文章で伝えるのだが、これがなかなか難しい。僕は最初に出来上がったクックポンを思い出して苦笑した。


 僕は、お父さんの会社の倉庫にある、発注ミスでいらなくなった金属部品の山を利用して、どうにか別の物を作れないか考えていた。どうせだったら自分が必要なものを作りたかった。以前は欲しいゲームソフトもあったが、今は欲しいと思わなかった。

 僕のご飯事情だが、朝はシリアル、昼は給食、夜は弁当とだいたい決まっていた。夕飯の弁当は近くにある弁当屋に、決められた時間に取りに行く。もちろん、常に全てのメニューを食べ尽くしており、新メニューが出ると迷わずそれを選択した。弁当屋の全てのメニュー、おかずの配置まで覚えていた。

 僕は以前、学校の行事でキャンプファイヤーに行ったことがあった。その時にみんなで作ったカレーライスを食べて、これは上手いと思った。給食や弁当屋にもカレーはあったが、またそれとも違う。もう一度食べてみたいと思ったが、自分で作ろうとは思わなかった。面倒くさがり屋あるあるだ。


 クックポンに材料を入れると、後は出来上がりを待つだけだった。

 左手マッスルは充電中だ。

 マッスルに関しては新しい発見があった。クックポン作成 地獄の51回作業が終わった後、マッスルは妙な動きをした。いつもなら行儀よく鎮座して静止するはずが、その時は、何かを探すようにうろうろした挙句、丸みのある起動部分を照明の電球にくっつけて、そのままの姿勢で止まった。何をしているんだろうと観察していたが、どうやら熱を吸収しているみたいだった。マッスル君はパワー不足になると、自分で熱供給できる場所を探して充電するようだった。クックポンを作るのにかなり動いたせいで、たまっていたパワーが無くなったのだ。今はクックポンの蒸気部分に頭をくっつけている、やめてほしい。


 ポンっという音が聞こえる。どうやら出来上がったようだ。僕は最下層の鍋を引き出して、カレーを見たが、妙な感じがした。僕はスプーンで少しすくってみた。食べてみて初めて気づいた。


 そうだった・・・。僕には臭覚が無かったのだ。

 僕はクックポンとマッスルに囲まれて、匂いのないカレーを食べたのだった。


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