試作品
「だめか~」
これで50回目だ・・・僕の疲れはピークに達していた・・。左手マシンは「何か?私のせいではありません」と言わんばかりにすまして静止している。
あの日、お兄ちゃんの部屋から出た後、僕は自分のスマホの検索画面に例のアドレスを入力してみた。するとパソコンの時と同じように入力画面が立ち上がったので、ロボットキーを入力したら、スマホと左手マシンを連動することができた。
後は材料だった。僕はまず図書館へ行き、物を作るためのいろんな素材についての本を探して読み漁った。ロボットから貰った言語能力があるので、世界中の本を読むことができた。言語能力は本当に素晴らしかった。ヒアリングだけでなく、視覚で理解することも可能で、もちろん読み書きも瞬時に行うことができた。
それから僕はお父さんの会社の倉庫へ行き、例のうず高く積み上げられた金属のお山から、部品を少し拝借した。その他の素材集めには苦労した。僕は工場や倉庫を探し回り、燃えないゴミの日には、捨てられているゴミを漁り、必要であれば廃品回収業者を訪ねたりもした。僕のあだ名は「変態」から「カラス」に変わった。
「次で51回目か・・・」
半径50cm以内に先ほど失敗したものを置き直し、左手マッスル君を起動させる。
僕は少し考えると、スマホで例の入力画面に文章を打ち込んだ。入力と同時に左手マッスル君は、半径50㎝以内にある材料を手探りで確認する。
すると画面が切り替わり
"Preparation is complete."
"How many will you make?"
準備が完了しました。いくつ作りますか?と出てきた。数を1個と入力し、OKを入力する。何度も同じ作業をして、僕は疲れ果てていた。疲れを知らない左手マッスルは指令を受けると即座に動き出し、先ほど作成した失敗品を一つ一つ分解し始めた。それを各素材ごとに仕分ける。そしてウイーンという音と共にマッスル君は発熱し、目の前の金属をほどよく溶かし、一つの塊にまとめる。そして、まるで粘土のように扱うと、あっという間に形を作った。
最初にそれを見たときは本当に面白かった。僕に心があったら心臓が跳ね上がっていたかもしれない。マッスル君は、その作業をいろいろな素材で繰り返し、必要であれば冷却機能も発揮して、最終的に製品を完成させた。僕はすかさず出来上がりを見る。
「おお~」
今度こそ、いいかもしれない。
「よくやった!」
とマッスル君を見ると、余裕のポーズで静止していた。
僕の発案した
「クックポン」(試作品)の完成だった。