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三話 反逆のアンドロイド

 皇帝崩御の知らせに動揺したのも束の間、今度は前方のルータイルに異変が起こった。港が開き、戦艦が次々に這い出てきた。


「……何事でしょうか?」


「ただごとではないようね」


 アンドロイド居住星ルータイルは帝国に従属してはいるものの、もともとは独立したコミュニティだった。だから軍隊もあるし、戦艦が隊列をなせるほどの数があることも不思議ではない。問題は、どうしてこの皇帝崩御のタイミングでこうして外に出てきたのかだ。


「……嫌な予感が」


「するわね」


 次の瞬間、真正面のルータイル艦の船首に対艦用巨槍、つまり船を貫くための巨大な槍が現れた。こちらを攻撃するつもりだ!」


「来るわよ! 何とか避けて!」


 オートからマニュアル操縦に戻した運転手の腕には血管が浮き上がり、操縦桿は久しぶりに動かされた。


 私は彼に操縦の一切をまかせて、緊急用に収容されている酸素ガムを一粒口に放り込んだ。噛んでるだけで一時間分の酸素が得られるとともに、身体内の圧力を調整することで宇宙空間での活動を可能にする便利な代物らしい。ま、使うのは初めてなんだけど。


 さて、船の外に身を乗り出してみたのだけど、なんでこう宇宙船ってのは丸っこいのかしら? これじゃあ上に乗りづらいじゃない。完全に外に出ると、敵艦の槍はもう目の前!


「やられるっ!」


 運転手の声が外にまで響いてきた。


「いくら何でもあきらめるのが早すぎるわよ!」


……スパン!!!!


「……あれ? まだ生きてる?」


 勝手に死んだつもりになられたらたまったもんじゃないわ。窓から操縦席を覗き込んだら、運転手はすっかり青ざめていた。


「あれ? 槍は?」


「落としたわよ、船ごと」


「うわっ閣下! って、え? 船を?」


「うわってなによ! まあいいわ。目の前が開いたんだから、このまままっすぐ突っ切って逃げるわよ」


 船内に戻るまでの間も他の敵艦たちは積極的に動いては来なかった。今ので怖気づいたのか、それともそもそも私たちを相手にしていない?


「閣下、他の艦が皆離れていきます」


「ちょうど私たちがきた航路ね……って、じゃあ帝都に向かってるじゃない!」


 そのとき、また一方、電報が届いた。これもバムールから。


「ルータイル星より独立宣言ならびに宣戦布告あり。貴殿はそのままルータイルを鎮圧されたし」


 とのこと。じゃあ今後ろに消えていったルータイルの艦隊はやっぱり帝都に向かっていて、攻撃しようとしている!


「まずいじゃないですか! さっきの艦隊、いや、それだけじゃないかも! もしかしたらルータイルすべての港から艦隊が出てますよ。早く止めないと!」


「無理よ。この船の性能じゃ追いつけない。そもそも一隻で戦艦の動きは止められないわ」


「では帝都をどうするのです、閣下!」


「あわてないでちょうだいよ」


「しかしっ……!」


「あいつらが帝都に到着するよりも前に、ルータイルを陥落させてしまえばいいのよ!」


「そんなこと可能でしょうか?」


「あら、この船には剣聖が乗っているのよ?」


 船だって落とせる。第一、剣聖の位にあるのなら、星の一つや二つ簡単に落とせなければならない!


「小さな民間港はどこかしら開いてるはずよ、向かってちょうだい!」





 民間港も閉じてはいたけど、軍港と違って中に入るのは難しくない。港には商用船がぎっしりと並んでいた。


「人の気配がありませんね」


「もう避難しきってるのね。そっちの方が都合がいいけど」


 人っ子一人居ない港から街に出た。片田舎だけど、モナズのようにのんびりとした雰囲気はない。むしろ都会崩れの町工場みたいな感じ。私個人としてはあまり好きじゃない空気だ。


 この星はもともと鉄とチタンの鉱床が大量に見つかったことから、労働アンドロイドが帝国から大量に送り込まれたことによってアンドロイド居住星になった。帝国に掘った鉱石を送るのがこの星の役目なのだけど、その待遇はかなり悪いらしい。話には聞いてたけど……


「なんだか、錆びれてるというか……」


「こんな事態だからか分からないけど、暗いわね」


 星の中では携帯騎馬を展開してそれに乗る。剣が銃火器に取って代わったのと大体時を同じくして車両や航空機はこの重希土特殊合金製の携帯騎馬に取って代わられた。こちらも時代を逆行したというわけだけど、この携帯騎馬というのは乗る人間の脳波に反応して動くから、操縦がとても簡単。認知症の人は乗れないのだけれど。


 剣聖は携帯騎馬も特別製になっていて(有難いことにこれも皇帝陛下から賜った特権)、一般の騎馬とは性能が違う。


「あなたは街の安全なところに待機していなさい」


「おひとりでいかれるのですか?」


「あなたがいてもしょうがないでしょ?」


「は、ではお気をつけて、閣下」


 





 ルータイル行政府を制すればこの内乱はとりあえず収まると考えて、民間港から北西13500キロのところにある、ルータイルの行政区画へと向かった。ルータイル艦隊とすれ違ってから1時間くらいたったあたりで到着した。


 行政区画の真ん中に行政府があるのだけど、明らかに様子がおかしい。


「なにあれ?」


 行政府が燃えていた。今まさに帝国に対して反乱を起こした星の行政府が、どうして燃えている?






 




 


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