幕間 ある少し昔の昼下がり
開星暦539年 西暦2762年
「時代が進んで、人類が宇宙に出てからはや五百年。科学技術の進化は止まらないけれど、出来ることは増える一方というわけではなかった。戦争兵器は凶悪を極め、人々は互いを恐れ、ついにそれらを使わせまいとした。当時はアンドロイド技術の黎明期でもあったしな。その結果として、人類は宇宙のどこでも兵器を使えないようにしてしまった」
昼下がり、外は快晴だけど暑いというわけもない。そんな気持ちのいい空間で、どうして私はこんなにつまらない宇宙史の授業を受けなきゃいけないんだろう?
「そんなわけだから人類の戦争は白兵戦に逆戻りしてしまった。我が帝星は兵器のない軍隊の創成にいち早く乗り出した。他国にない軍制度は多くあるが、その中の一つが『剣聖』だな。……おいハインリッヒ……レイラ・ハインリッヒ!! なに窓の外を見てるんだ! よしお前、『剣聖』について説明してみろ」
「えぇ……帝星で一番強い五人? じゃないんですか?」
「不十分だな。『剣聖』は強さだけでなく、その職責と権限も絶大だ。軍属でありながら、階級を持たず、それでいて独断で軍事行動を起こせる。経済的、政治的にも特権を数多く与えられている。屋敷だって宮殿の近くに持てる」
「へぇ、じゃあ私も剣聖になろっかな」
「六人目の剣聖か? ……腕っぷしだけなら十分かもな。お前に務まるかは別として」