第99話 『共闘しよう!!』
参上! 怪盗イタッチ
第99話
『共闘しよう!!』
イタッチとアンは装備を整えると、東京都墨田区にある東京スカイツリーにやってきた。
マンデリンの飛行船が現れてから、都内では外出している人は少なく、観光地の店もほとんどが閉まっている。
イタッチはアンを背中に背負うと、ジャンプしてスカイツリーの外壁を登っていく。軽快に登っていく姿は重力を感じさせず、まるで羽が生えているようだ。
イタッチとアンは展望台の屋根にたどり着くと、そこには三人の人影があった。
「来てくれたか。助っ人が来てくれるとありがたいと思ってたところだ。お前達がいれば、心強いよ」
イタッチはアンを降ろしながら、三人に話しかける。
「勘違いするな。マンデリンを逮捕したら次はお前の番だ!!」
フクロウ警部はイタッチを指さして宣言する。
「そうっすよ。次はあなたっすよ!」
「コン刑事……離れてくれませんか? 警部の後ろにいる僕達がこんな格好だと、ちょっとダサいです……」
「ちょ!? 離そうとしないでくださいっす! 先輩!!」
フクロウ警部の後ろでは高さに怯えたコン刑事が、ネコ刑事の腕にしがみつき、ネコ刑事が嫌そうにため息を吐いていた。
三人の人影の正体はフクロウ警部、ネコ刑事、コン刑事の三人であった。
その三人の姿を見たイタッチは嬉しそうに頬を上げる。
「フクロウ、ありがとな」
「だから、勘違いするなって言ってるだろ!!」
顔を赤くしてそっぽを向くフクロウ警部に、イタッチは手を差し伸ばす。
「フクロウ、今から俺達は仲間だ。警察も怪盗も関係ない。マンデリンと戦う同時だ!!」
イタッチから差し出された手をフクロウ警部は握って握手をする。
「ああ、今だけだがな。これが終わったら、この腕に手錠をはめてやるさ」
「ああ、頼みにしておくぜ」
マンデリンと戦うために、五人の戦士が立ち上がった。イタッチ、アン、フクロウ、ネコ、コン、現在、この五人はスカイツリーの上でマンデリンのアジトに乗り込む準備をしていた。
「しかし、フクロウ警部さん達はよくここに私達が来るって分かりましたね」
アンの言葉にネコ刑事が反応する。
「フクロウ警部の勘です。マンデリンのアジトは浮いているので、乗り込むにしても空を飛ぶ必要があるんです。でも、ヘリや飛行機を使えば、発見されて撃ち落とされる可能性があります。なら、地上からなるべく近づいて、最短距離で飛ぶ必要がある」
「それでスカイツリーって分かったんですね」
「ここから飛んで飛行船に飛び乗る。まぁ、気づかれはするだろうが、空中で狙撃される可能性が減りますからね」
イタッチは折り紙を四人に渡す。
「これからでっかい紙飛行機を作る。お前達も手伝え」
イタッチが紙飛行機をフクロウ警部に渡すと、フクロウ警部は目を見開く。
「え!? 紙飛行機で飛ぶのか!? いや、まぁそれしかないが!?」
「折り紙も節約しないといけないからな。これくらいの方がいい」
「そうか……」
文句を言いながらも、フクロウ警部達はイタッチに指示通りに紙飛行機を作る。そして数分後、5メートルサイズの紙飛行機が完成した。
「さて、みんな乗り込め! 飛ぶぞ!!」
イタッチは紙飛行機に跨る形で乗る。それに続き、アン、フクロウ警部、ネコ刑事、コン刑事の順番に跨って座った。後ろの人が前の人の背中に抱きつくようにして、落ちないようにする。
「行くぞ!! せーっの!!」
一斉に足場を蹴って紙飛行機を飛ばす。
「と、飛んでます!?」
五人の乗せた紙飛行機は空へ飛び立った。
「ひ、ひぇ〜、飛んでるっす!?」
空を飛ぶとコン刑事はその高さに恐怖を感じて、前にいるネコ刑事を力強く抱きしめる。
「痛い痛い!? コン刑事、腹がちぎれるぅ、内臓飛び出るぅぅぅ!?」
ネコ刑事の悲鳴が空に響く中、紙飛行機はマンデリンの飛行船に近づいていく。
スカイツリーから飛んで飛行船までの距離があと半分となった時、イタッチが皆に伝える。
「バレたな……」
「「「「え!?」」」」
飛行船の周りを浮いているリング状の飛行船。その側面についている銃口がイタッチ達の方へと向く。
フクロウ警部は汗を流しながら、イタッチに聞く。
「どうすんだ、まだ距離があるぞ!?」
「俺の合図に合わせて、身体を左右に傾けろ!!」
「は!?」
飛行船の銃口から弾丸が発射される。
「来るぞ!! 右だ!!」
弾丸が飛んでくる中、紙飛行機に乗るメンバーは身体を右に傾ける。すると、紙飛行機が右方向へと動く。
「よ、避けた!?」
紙飛行機が移動したことで、弾丸を避けるのに成功した。しかし、まだまだ弾丸は飛んでくる。
イタッチは後ろにいる仲間達に叫ぶ。
「まだ喜ぶなよ。これからが本番だ!! 次は左!!」
今度は左に傾けて弾丸を避ける。それを何度か繰り返して、弾丸を躱していく。
「右、左、左、右、左!!」
五人は必死に身体を傾けて紙飛行機を操縦する。ギリギリとところで攻撃を避けながら、飛行船まであと少しというところまできた。
「後もう少しだ!! 踏ん張れよ!! 左だ!!」
残り十数メートルまで近づいた。しかし、ここで事件が起きた。
「ぐっ!? しまった!?」
紙飛行機の左後方の羽が弾丸を掠ってしまった。羽に穴が空いたことでバランスを崩す。
「イヤァァァ!! 落ちるっすぅぅぅぅぅぅ!!!!」
「コン刑事、落ち着いてぇぇ!? 俺が絞め落とされるぅぅぅ!?」
ふらふらと落ちていきそうになる中、イタッチはマントの裏から折り紙を取り出した。
「いや、ここまで接近できれば十分だ!!」
イタッチは折り紙で爆弾を作る。そしてその爆弾を自分達の下へと投げた。
「え……なんすか!? ぎゃぁぁぁぁっ!?」
爆弾が爆発してその爆風で紙飛行機は一時的に上昇と前進をする。それにより紙飛行機ごと、五人は飛行船へと吹っ飛ぶ。
「壁にぶつかるっすぅぅ!?」
「その前にバリアがある!! アン、バリアの解除を頼む。俺は壁に穴を開ける!!」
イタッチは新たに折り紙を取り出して剣を作る。アンは吹き飛びながらも、バリアに手を向けて、逆十字架の仕草を行った。
アンが逆十字架を行ったことでバリアが解除される。
「バリアがなくなっても壁があるっすよォォォォォ!?」
コン刑事が涙を流しながら叫ぶ。イタッチは折り紙の剣を構えると、壁に向かって剣を振って壁に円状の穴を開けた。
五人は紙飛行機からジャンプすると、穴の中へと飛び込む。
「よし、無事到着だな」
飛行船の中への侵入に成功した。