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第98話 『立ち向かう者たち』

参上! 怪盗イタッチ




第98話

『立ち向かう者たち』




 現在イタッチは喫茶店のあるビルの二階にあるアジトで作戦会議を行っていた。


「イタッチさん、これを見てください!!」


 アンはイタッチに戦闘機とマンデリンのアジトである飛行船の戦いの映像を見せる。


 その映像では戦闘機の攻撃が飛行船を包む不思議なバリアによって守られている。


「このバリアのせいで私達の侵入も防がれるんじゃないんでしょうか?」


「そうだな……このバリアが何かは分からないがその可能性がある。まずはこれが何かを探らないとな」


 イタッチは映像をスロー再生にして確認をする。すると、戦闘機から放たれた弾は、弾かれるというよりも消滅していることに気がつく。


「これもマンデリンの能力か……」


「過去改変……ってやつですか?」


「おそらくな。あのバリアに触れたら過去を捻じ曲げられて、どこかへワープするんだろう」


「じゃあ、入れないじゃないですか!? どうするんですか?」


 イタッチは顎に手を当てて考える。


「何者も入れないってことは、マンデリンやその仲間も簡単には入れないってことだ。なら、何かの手段で入れるようにしているはずだ」


 イタッチはパソコンの映像を再生して見直す。すると、飛行船の上にいる人物について疑問に持つ。


「コイツ、バリアの外にいるよな」


「そういえばそうですね。……あのサイボーグさん、戦闘機に攻撃してますからバリアの外にいるってことですね……」


「アン、戦闘終了後、コイツがどうしていたか調べられるか?」


「はい!! 任せてください」


 アンはパソコンを自分の元へ引き寄せると、サイボーグがその後どうしていたのかを調べ始める。

 アンが調べ終えるのを待っている間、イタッチは席を立つと台所に行き、ポットに入ったお湯を使って紅茶を入れる。


「はい、アンの分だ」


「ありがとうございます!」


 アンの分もテーブルに置いて、イタッチは立ちながら紅茶を啜る。


「マンデリンには他にも部下がいるってことだよな。ダッチを解放したとしても、俺達だけじゃ戦力が足りないな」


 イタッチはバリア以外の問題点として、戦力差について考え始める。


 マンデリンが一人相手でもイタッチ、ゲンゴロウの二人で負けてしまった。それなのにマンデリンにはまだ部下がいるはずだ。

 戦闘機を撃ち落とせるサイボーグに、あの巨大な飛行船を操縦するだけの人員がいる。

 そうなると、イタッチ、アン、ダッチの三人だけでは厳しいだろう。


「誰か助っ人を呼ぶか……。いや、マンデリンの実力を考えると、弱い助っ人じゃ足手纏いになりかねない。頼れる人が助けに来てくれることを祈るしかないか……」


 イタッチが考えていると、アンが調べ終わる。


「イタッチさん、調べ終わりました!!」


「サンキューな。見せてくれ!」


 イタッチはアンの横に腰を下ろし、パソコンの画面を覗き込む。


 画質は悪いが、戦闘機が破壊されて後の映像だ。戦闘機が爆発したのを確認すると、サンボーグは背を向けて、飛行船に取り付けられた入り口に向かう。

 しかし、ドアノブに手を触れようとした時、サイボーグは一瞬動きが止まった。


 おそらくバリアがあることを忘れていて、ここで思い出したのだろう。


 サイボーグは扉の前である仕草をする。


 それはキリスト教の十字架のポーズを逆さに行なったものであり、サイボーグがその仕草を終えると、バリアが一時的に解除された。


「これが合言葉みたいなものか。これで中に入れるぜ。ありがとう、アン!」


「はい! ……あのイタッチさん、今回お願いがあるんです!」


「ん? なんだ」


「私も連れて行ってくれませんか! 現地で直接サポートしたいんです!!」


 アンはイタッチの目を見て、そのことを伝える。


「危険だぞ。覚悟はあるのか?」


「はい!!」


「分かった!」


 イタッチはアンの手を取って、力強く握手をする。


「イタッチさん……?」


「今回もしっかり頼むぜ。アン!!」


「はい!! 任せてください!!」




 ⭐︎⭐︎⭐︎



 一人のジャーナリストが警視庁のある一室に向かった。ジャーナリストの名は仲村 ケイイチ(なかむら けいいち)。

 彼が今回取材に向かったのはイタッチ対策特別課である。そこはフクロウ警部、ネコ刑事、コン刑事の三人の刑事のいる組織であり、怪盗イタッチを捕まえるために組織された課だ。


 マンデリンの襲撃により、怪盗イタッチは逮捕されて、彼らの役目は終わった。これから先彼らはどうしていくのか、マンデリンとイタッチの関係はなんだったのか。それらを取材するつもりだ。


「失礼します!! 今朝取材の許可をいただきやってきました。仲村 ケイイチです!」


 ケイイチが扉を開けるが、そこにフクロウ警部達の姿はない。


「あれ? 警部達はどこに?」


 ケイイチが首を傾げると、部屋の奥でモゾモゾと動く人影があった。


「警部ですか? あのー、取材にー」


「ん? ああ、君か……」


 人影に近づくと、それがフクロウ警部ではないことにすぐに気がつく。全身を包帯で巻き、杖で机の下に落ちたプリントを拾おうとしているゲンゴロウであった。


「ゲンゴロウさん!? なぜ、こんなところに!?」


「なぜも何も……俺はこれだけ重症だってのにフクロウ警部にあんたのお守りを頼まれてな」


「警部に?」


「上が強制的に取材を受けるもんだから、誰かが対応しないといけないが、忙しくて対応できないみたいでな。そこで病院から俺が呼ばれたってわけよ」


「そ、そんな……大丈夫なんですか?」


「まぁ、どうにかな。それにフクロウの頼みなら、やってやるさ。……なぁ、落としちゃった紙、取ってくんない?」


「あ、はい……」


 ケイイチはゲンゴロウを座らせると、落ちたプリントを拾って机の上に置く。


「では、フクロウ警部達はどこへ?」


「まぁ焦んな焦んな。今回は取材に来たんだろ、そこに座んな、色々教えてやるよ」


「は、はい……」


 ケイイチはゲンゴロウに言われて、ゲンゴロウの向かいの席に座る。


「それじゃあ、ケイイチ君。ジャーナリストである君に彼らがどこへ向かったか。真実を述べよう……」


「はい……」


 ケイイチはメモ帳とペンを手に乗り出すような姿勢になり、真剣に話を聞く。


「彼らはマンデリンの元へ向かった」


「マンデリンの!? な、なんでですか!?」


「マンデリンを止めるためだ」


「止めるって……。フクロウ警部達はイタッチを専門としているんですよ!? マンデリンはすでに国家レベル……そんなマンデリンにたった三人で立ち向かう気ですか!?」


「そうだろうなぁ」


 ケイイチは机に乗り出す。


「なぜ、行かせたんですか!! あなたは軍人でしょう!? 止める立場のはずです!!」


「説得して止められるような相手なら止めてるさ。止められないから行かせたんだ。それに俺はアイツらに賭けてみたくなった」


「賭け?」


「世界を救う賭けさ」








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