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第88話 『諦めない力』

参上! 怪盗イタッチ




第88話

『諦めない力』




 マンデリンの顔から胸にかけて三本の傷ができる。


 イタッチの爪の攻撃が奇跡的に当たり、マンデリンに大ダメージを与えることができた。


「ガァァッ……私に……くっ、ダメか、どの世界線に移動しても結果が収束する。これは私のミスで、この結果は確定したものになって……しまったというのか…………」


 マンデリンは傷口から血を吹き出し、ふらふらと身体を揺らす。爪は左目にも入っていたようでマンデリンは左目が一番痛むのか、左目を手で覆う。


 さらに過去改変で傷を癒せるはずのマンデリンだが、なぜかそれが上手くいかないようだ。


「はぁはぁ……どうだ、俺様の一撃は……よ」


 イタッチはニヤリと頬を上げてマンデリンを指差す。


 イタッチはこうなることを読んでいたわけではない。ただ諦めずに攻撃しただけだ。それが奇跡を読んでマンデリンの能力が発動して、マンデリンが攻撃を受けることになった。


 イタッチの挑発を聞き、マンデリンは血を噴火するように吹き出しながら激怒する。かなり興奮しているようでマンデリンの服は真っ赤に染まっていた。

 しかし、血を吹き出した後、マンデリンは冷静さを取り戻すために深呼吸をする。そしてゆっくりと気持ちを落ち着かせた。

 すると、吹き出すように出ていた血も大人しくなり、出血の量は少なくなる。とはいえ、傷口が塞がっているわけではない。


「どうやら君は本当に私の計画の邪魔になるようだね。まさかこんなことになるとは……」


 ここまでの深傷を負うとは思っていなかったようだ。マンデリンはポケットからハンカチを取り出して、顔についた血を軽く拭き取る。


「このままでは私の出血で危ないのでね。ここは退かせてもらうよ。だが、その前に!!」


 マンデリンは近くにあった瓦礫を一つ蹴る。すると、次の瞬間、イタッチの全身から血が爆発でも起こしたかのように吹き出した。


「ぐはっ!?」


「今行ける世界線で最善の世界に移動しておこう」


 イタッチがダメージで床に手をつく中、マンデリンはさらに瓦礫を蹴った。

 すると、イタッチは今度は大量の血を口が吐き出す。


「これはおまけだッ!」


 息を荒げているイタッチに最後のおまけと、マンデリンはイタッチの顔を蹴り飛ばした。イタッチは抵抗する力もなく、蹴り飛ばされて床を転がる。


 イタッチを心配したネコ刑事が駆け寄ると、イタッチは白目をむいて意識を失っていた。


「さて、これで十分か。では、私は戻らせてもらうよ。さらばだ」


 マンデリンが瓦礫を蹴ると、マンデリンの姿は消えた。しかし、マンデリンは消えたが、美術館で起こった惨劇は変わらず。

 残ったネコ刑事とコン刑事は悔しさで拳を床に叩きつけた。





 ⭐︎⭐︎⭐︎ ⭐︎⭐︎⭐︎




 鋼鉄で出来た壁、揺れる床、隙間から差し込む潮風。ここは海上に浮かぶ巨大監獄ウェイル。

 戦中に使われていた巨大な戦艦を改造して監獄へと改造した、海に浮かぶ監獄だ。収容人数は三千人。各国から集められた極悪人達を檻に閉じ込め、彼らを世界から完全に隔離している。

 船内には武装した看守が彼らを監視しており、皆軍人であった経歴を持っているため、全員が素手でも囚人を捕らえられる力を持つ。


 そんな監獄の第四エリア。最も危険な囚人達を集められた区間であり、世界に大きな影響を与える者達と共に新たに収監された人物がいた。

 身体を包帯で包み、トレードマークの赤いマントを奪われた怪盗。

 イタッチがそこに捕まっていた。


 夜月の光が差し込む中、イタッチはベッドで寝そべりながら窓の外を見る。


 イタッチはマンデリンに倒された後、遅れて駆けつけたゲンゴロウの部下達によって捕らえられた。

 ゲンゴロウの命令で手当てを受けたのちに、連行されて監獄へと送られたようだ。

 ネコ刑事達はイタッチを逮捕の協力をしたということで、警視庁から報酬が与えられたらしいが、彼らは断ったと聞いた。


 牢屋に入れられたイタッチは、マントや折り紙などの装備を取られ、無線も外されてしまった。アンのことだから無線から居場所を探知されるようなヘマはしないだろう。

 しかし、無線がなくなってしまったことでアンと連絡を取る手段がなくなってしまった。


 ダッチとも連絡を取れておらず、どうしているのはも分からない。

 心配ではあるが、今はダッチの心配よりも自分のことを優先しなければ……。


「どうやって脱獄するか……」


 ここは海上監獄ウェイル。世界でも有名な監獄である。この監獄を脱獄したものは歴史上おらず、誰も逃さない最強の監獄と噂されるほどだ。


 現在のイタッチは装備を全て取られてしまっている。さらにはマンデリンとの戦闘での怪我がまだ完治しておらず、身体も完全回復と言えるものではない。


「脱獄のためにやるべきことは二つか……」


 イタッチは空を見上げながら独り言を呟く。


「まず折り紙の回収……」


 捕まった時に奪われた折り紙を取り返す必要がある。折り紙があれば、船の上だとしても簡単に脱出ができる。

 折り紙はこの監獄内にあるのは確認している。ここまでは折り紙を持っていたし、神器について詳しい者が監獄にはいるようで、しばらくは彼が管理するらしい。


「それと手錠の鍵か」


 イタッチはこの監獄にやってきた時、両手を手錠をつけられた。それは普通の手錠ではなく、イタッチ専用に作った専用だと聞いた。

 中にはGPSと爆薬が仕込まれており、GPSはもしも逃げたとしても居場所が分かるようになっている。爆薬は船に取り付けたセンサーから3キロ離れたら爆発する特殊な爆弾と言っていた。


「脱獄のためにこの二つをどうにかしないとな」



 マンデリンの計画もある。長い時間はかけられない。だが、脱獄を失敗すれば、さらに時間をロスすることになる。

 早くそして正確に脱獄を行う必要がある。


「待ってな、マンデリン。すぐに抜け出してリベンジしてやるぜ」








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