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第87話 『マンデリンの計画』

参上! 怪盗イタッチ




第87話

『マンデリンの計画』




 イタッチが倒れる中、マンデリンは服についた埃を叩いて落とす。


「君は私の計画の邪魔になる。だからここで君を再起不能にする必要があった」


「……俺が……邪魔ね…………俺よりもっと厄介な奴がいると思うけどな」


 倒されたイタッチだが、床に手をついて身体を上げる。真紅のマントは床に溜まった水に浸かり、いつもは凛とした毛並みも荒々しく乱れている。


 マンデリンは腕を組んでそんなイタッチを眺める。


「確かに君の言うとおりだ。世界は広い、私の知らない強者はいくらでもいるはずだ。だが、どの世界線でも君が私の計画の邪魔になる」


「ふ、俺に阻まれる程度の計画なら、それは誰にでも止められちまうな。そんな計画さっさとやめるんだな」


 イタッチは立ちあがろうとするが、足に上手く力が入らない。先程のマンデリンとの激突時、マンデリンは身体を加速させて高速で攻撃を仕掛けてきた。斬撃が雨のように振るわれる中、イタッチは素手で出来る限り防いだのだが、それでも大きなダメージを受けた。

 立ちあがろうと必死に這いつくばるイタッチ。そんなイタッチの前に立つと、マンデリンは片足を上げた。


「……黙れ、コソ泥がッ」


 勢いよく足を振り下ろして、イタッチの頭を踏みつける。イタッチの顔は床に叩きつけられて鈍い音が鳴った。


「貴様のような人間が世界を汚すんだ。あの兵器はそういう人間がいる世界にあるべきのもじゃない。私はあの兵器があるべき世界にするため、人類を選別するんだ」


 マンデリンはイタッチの頭を振り付けたまま、グリグリと踏みつける。イタッチは抵抗する力がないのか、無抵抗に踏みつけられ続ける。


 そんな様子を見てコン刑事が拳を握りしめる。


「もうアタシ、我慢できないっす!!」


 イタッチは逮捕すべき犯罪者だ。しかし、憎むような悪人ではなかった。お宝を盗み続けているが、そこには何か理由がある。

 だからこそ、フクロウ警部もイタッチを追い続けているのだろう。


 コン刑事はイタッチを助けようと飛び出しそうになったが、ネコ刑事はコン刑事の腕を掴み、彼女を止めた。


「先輩……」


「行くな。僕達じゃ何もできない」


「そうかもっすけど、あのままじゃ……イタッチが…………」


 顔をなん度も踏みつけられて地面に擦り付けられる。イタッチの顔の下の水玉は少しずつ赤く濁り始めていた。


 それでもネコ刑事はコン刑事の手を離さず、力強く掴んで引き止める。


「君は行くべきじゃない」


 ネコ刑事はコン刑事を引き止め、そして自身が前に出る。


「先輩……?」


「ゲンゴロウさんの治療は終わったけど、まだ動ける状態じゃない。守ってあげてくれ」


「先輩、何をするつもりっすか!?」


 ネコ刑事はポケットからライターのような小型のアイテムを取り出す。銀色の四角いケースで四方にボタンがついている。真ん中にはネコ刑事がデザインしたのであろう、不恰好な猫のイラストか描かれていた。


「僕がマンデリンを止める」


「無茶っすよ!! さっき先輩が自分で言ってたじゃないっすか、僕達じゃ何もできないって!!」


「その通りだね。僕がどこまで出来るか分からない。時間稼ぎって言っても10秒、いや、3秒持てば良い方かもね」


「なら、アタシも一緒に戦うっす。二人なら倍は時間が稼げるかも……」


 コン刑事がそこまで言ったところで、ネコ刑事は帽子を深く被り、コン刑事に背を向ける。


「ここに一緒に来た時点で君の覚悟は知ってる。だが、犯罪者を助けに行けば、警察官に居場所が残るかも分からない。なら、僕一人で十分だ」


「先輩!!」


 コン刑事はネコ刑事を止めようと手を伸ばしたが、その手は届かず宙を掴む。ネコ刑事はイタッチを踏みつけるマンデリンを目指して走り出していた。


「マンデリン、君を逮捕します!!」


 ネコ刑事は銀色の箱のボタンを押す。すると、細いワイヤーが伸びて鞭のようになる。ネコ刑事はそれを振り回して、マンデリンに攻撃を仕掛けようとした。

 しかし、


「やめ……な、ネコ……刑事…………」


 マンデリンに踏まれていたイタッチが血反吐を吐きながら立ち上がり、ネコ刑事の前に立ち塞がった。

 先程まで立つことすらできなかったイタッチ。しかし、ネコ刑事の姿に力を貰い、どうにか立ち上がることができた。


 ふらふらなイタッチが目の前に立ち、汚れたマントを見せる姿にネコ刑事は足を止める。


「イタッチ!?」


「ネコ刑事、君の助力は嬉しい。俺にとって君は……いや、君達は大事なライバルだ。今回もフクロウの代わりに来てくれたんだろう、なら、君達を傷つけさせるわけにはいかない」


「だが、イタッチ。その傷じゃもう……」


「ふ、そうだな。一撃でこの通りだ、だが、俺は怪盗イタッチだ。お宝を手に入れ守るためには、どんなことがあろうとも諦めない!!!!」


 イタッチは右手を高く上げる。突き上げた拳に力を込めて、鋭い爪を剥き出しにする。そしてその爪を武器としてマンデリンに振り下ろす。


 折り紙もない。ダメージで自慢の足の速さも活かせない。そんな中イタッチの放った足掻きとも言える一撃。

 マンデリンは身体を横にして簡単に避ける。だが、マンデリンは避ける時に片足を後ろに一歩動かしていた。

 その一歩。たった一歩がマンデリンの誤算となった。


 マンデリンが足を動かした先に小さな瓦礫があり、マンデリンはそれを踵で蹴ってしまった。


「しま……」


 マンデリンが気づいた時には瓦礫は転がり、少し先で動きが止まる。

 マンデリンの能力が発動して世界線が変わる。そしてマンデリンとイタッチの位置が変わり、マンデリンは拳を振り下ろすイタッチの目の前へと移動していた。


「ぐぁぁぁぅっ!?」


 イタッチの爪がマンデリンの顔から胸を切り裂き、三本線の深い傷を残した。









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