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第86話 『過去改変』

参上! 怪盗イタッチ




第86話

『過去改変』




 傷がなくなって完全復活したマンデリンが、イタッチと向かい合う。

 イタッチはスプリンクラーの水で折り紙が使えなくなり、余裕のマンデリンとは違い額から汗を流して静かに焦っていた。


「さて、怪盗イタッチ。君を再起不能にさせてもらうよ」


 マンデリンはそう言った後、後ろにある壁に手のひらを当てる。そして優しく三回叩いた。

 すると、壁にヒビが入って叩いたところの壁に線が入った。その線はまるで剣の型をとっているかのようであり、マンデリンは壁をトンっと蹴ると線の部分で割れて壁の一部を取り出せた。

 壁の一部は剣のような形になっており、不恰好ではあるが先の尖った鋭い刃となる。マンデリンはそれを取り出して握りしめると、武器として構えた。


「いまの君に対してはこれで十分だろう」


 マンデリンは剣を手にしてイタッチに向かって走り出す。イタッチは拳を握りしめてマンデリンを迎え撃つ姿勢になる。


 しかし、向かってくるマンデリンの様子にイタッチは目を見開いた。


 マンデリンの身体は所々で残像を起こし、さらに残像が発生するたびに加速している。その加速と残像が重なることで、マンデリンが瞬間移動を繰り返しながら近づいてきているように見えた。


「そんなこともできるのかよ!」


 接近してきたマンデリンは剣を振り下ろす。残像と加速によりマンデリンの位置を正確に把握できていなかったが、イタッチは勘と経験を頼りに振り下ろされる剣の位置を予想した。

 予想通りの場所とタイミングで剣が振り下ろされ、イタッチはマンデリンが剣を持つ手に肘を当てて軌道を逸らして剣を避ける。

 さらに剣を避けながらマンデリンの懐に入り、剣を握っていない腕を両手で掴んでマンデリンを投げ飛ばした。


 イタッチの腕力だけではマンデリンを投げ飛ばすことはできない。そのためマンデリンの剣を振る力を利用してマンデリンを投げた。投げられたマンデリンは地面に激突仕様になる。

 しかし、能力を使ったのだろう。

 マンデリンはまたしても残像を発生させ、さらには先程のように所々姿が消えた。


 先程はマンデリンが走ってきていたため、瞬間移動のように感じた。しかし、投げた時もイタッチには同様にマンデリンの姿が見えた。

 アニメーションにフレームがあり、紙を何枚も更新していくことで動きを見せる。そのアニメーションの中で数フレームだが、マンデリンの姿が消えているような感覚。

 存在しているはずのマンデリンが、一瞬だけ消えてすぐに現れる。それを繰り返しているようだった。


 マンデリンはそうすることで地面に激突した瞬間に姿を消した。そうすることでダメージを軽減してすぐさま立ち上がる。


「うむ、武器がなくてもこの程度はできるのか」


 そして立ち上がったマンデリンは、反撃してきたイタッチを見て、顎に手を当てた。


「では次はこれで行こう」


 マンデリンは再びイタッチに向かって走り出す。今度は姿が消えたりするのではなく普通に走る。しかし、マンデリンの走る速度は上昇していき、高速で移動しながらイタッチに剣を振る。


 イタッチは自慢の素早さを活かして攻撃を避けようとする。だが、マンデリンの速度はイタッチのスピードを超えて、イタッチが避けるよりも早くイタッチを切りつけて通り抜けた。


「ぐっ!?」


 イタッチの胴体に斜め一直線の傷ができる。


「早い……だが!!」


 イタッチは通り抜けて背後にいたマンデリンを追いかけるため振り向く。そして足を止めて血のついた剣を眺めていたマンデリンに飛びかかった。

 だが、マンデリンは素早く加速してイタッチの飛びつきを躱す。


「なに!?」


 マンデリンの加速は不思議な加速の仕方であり、通常であれば、徐々にスピードが上がりマックススピードになる。

 しかし、マンデリンは初速がマックススピードであり、そこから速度が落ちていくという加速の仕方をしていた。


「それも能力による力か……」


 避けられたイタッチはマンデリンの攻撃の標的にならないように、素早く姿勢を直して走り出した。

 部屋の中を飛び回り、床、壁、天井を利用して自由自在に走る。


 マンデリンの加速の仕方が能力のものであり、初速がマックススピードであるのならば、動いていないと狙われやすくなる。

 かなりのスピードが出ているが、マンデリンはコントロールできていないはずだ。その理由としてはあの速度を出す時は必ず直線やカーブなど簡単な軌道しか動いていない。


 つまり動いていれば、あのスピードによる攻撃を回避できる。


 イタッチの攻撃を避け、走るイタッチを眺めるマンデリン。彼はほぉっとイタッチの姿を見て嬉しそうに微笑む。


「君に不利な状況をここまで作り出したというのに、まだこんなことができるとは……。だが、そういうことなら私もこうするだけだ」


 部屋を駆け回るイタッチを見て、マンデリンはある作戦に出た。

 それはマンデリンも部屋を走り回るという作戦だ。トップスピードを維持しつつ、部屋を縦横無尽で駆け回る。


 走り回るマンデリンだが、イタッチの予測通りコントロールはできていないようだ。直線的に走った後、壁にぶつかるとその壁に反射するようにして方向を変えて走る。それを繰り返して部屋を走り回った。


 だが、超高速で移動するマンデリンの動きは、イタッチの動きを狭めるとこになる。

 狭い部屋の中で動き回る二人だが、マンデリンの方が速さが上だ。マンデリンはその速さにより、ゲンゴロウ達からは線のような残像でしか見ることができず、部屋中に白い線が張り巡らさらているようであった。


 やがて走る二人はぶつかり合い、お互いに弾かれる。ぶつかった衝撃で部屋に突風が吹き、壁が揺れる。爆発音のような音が部屋中に響き渡った後、イタッチは背を地面につけて倒れた。


「くはっ!?」


 イタッチは口から血を吐き、息を荒くする。


「ふむ、どんな策を講じようとも私からは逃げられない」


 イタッチが倒れる中、同じように弾かれたマンデリンだが、無傷で立ってイタッチを見下ろした。


「イタッチがやられるなんて……」


 倒れたイタッチを見て、ネコ刑事は驚きで目を大きく開けた。

 ここまで苦戦したイタッチを初めて見た。それだけの相手ということだろう。


「さぁ、私の計画の生贄となってもらうよ。イタッチ……」







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