表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
84/103

第84話 『マンデリンの力』

参上! 怪盗イタッチ




第84話

『マンデリンの力』




 マンデリンは数歩歩き、近くにあった瓦礫を蹴り飛ばした。瓦礫は転がると、数センチ先で止まる。


 すると、再び視界が一瞬揺らぎ、そして次の瞬間にはゲンゴロウの全身から血を吹き出した。


「バハッ!?」


「ゲンゴロウ!?」


 ゲンゴロウはふらりと倒れそうになるが、気合いで持ち堪える。


「はぁはぁ……何も見えん…………」


 ゲンゴロウからはマンデリンが瓦礫を蹴っただけにしか見えなかった。しかし、マンデリンは大ダメージを受けて、今にも倒れそうな重症になる。


 倒れなかったゲンゴロウの姿に、マンデリンは呆れた顔でため息を吐いた。


「しぶといな……。この世界線でも倒れないか……。これ以上変化を与えるのは危険なんだがな」


「世界線……?」


「だが、そのダメージだ。もう武器を持つこともできないだろう」


 ゲンゴロウはどうにか立ってはいるが、もう武器を握る力すら残っていなかった。それでもまだ戦おうとふらふらの身体でマンデリンに近づこうとする。

 しかし、そんなゲンゴロウを後ろにいたイタッチが呼び止めた。


「そこまでだ。もう良い、ゲンゴロウ」


「……イタッチ……………そうか、もう十分か」


「ああ、ネコ刑事、コン刑事、ゲンゴロウを手当てしてくれ」


 イタッチに呼ばれてネコ刑事達はゲンゴロウの元に駆け寄る。そして肩を貸して、部屋の隅へと移動した。

 ゲンゴロウを横にさせると、怪我の状態を確認する。


「これはひどいな。コン刑事、手伝ってくれ」


「はい!」


 ネコ刑事は自身の作ったアイテムを使い、ゲンゴロウの治療を始める。

 治療される中、ゲンゴロウは細々とした声でイタッチに声をかける。


「任せたぞ」


 その声を聞き、イタッチは静かに頷くとマンデリンと向き合った。


「さて、次は俺が相手だ。マンデリン」


「ゲンゴロウを犠牲にして作戦はできたのかな?」


「犠牲じゃないさ。アイツはまだお前と戦ってる。俺と共にな」


 ゲンゴロウの戦闘はイタッチにマンデリンに関する情報を伝える目的があった。


 イタッチはマントから折り紙を取り出すと、折り紙の剣を作った。そしてその剣先をマンデリンに向ける。


「マンデリン、お前の持っている力が分かった。それは並行世界への移動だ」


「うむ、正解。だが、正確には少し違う、私の持つ力は過去改変だ」


「そういうことか」




 マンデリンの持つ力。それはモカとは正反対とも言える能力であった。


 マンデリンとモカはとある軍で実験を受けて、特殊能力を得ることに成功した。そこでモカは未来を見る力を手に入れた。未来に起こる事象を見て、その出来事を回避する。そうすることでモカはあらゆる事態に対処できた。

 それとは違いマンデリンは過去に関する力であった。過去を変えて未来に変化を起こす。それがマンデリンの力だ。



「石や瓦礫を転がしたのは能力の発動条件か?」


 イタッチが尋ねると、マンデリンはニコリと笑い答える。


「ええ、そうだよ……」


 マンデリンはニコニコしながら自身の力について説明を始めた。


「私の力は過去改変だ。とはいえ、大きな改変には危険が伴う。だから、小石などがあった場所を変えることで小さな変化を起こしている」


 小石のあった場所を変える。つまりそれはマンデリンが蹴った石や瓦礫のことだろう。マンデリンは石を蹴ったことで、その石があるべきが場所を変えたのだ。

 A地点にあった石が、B地点にあったことにする。マンデリンが蹴ったということではなく、マンデリンが石のある地点を変更した。


「小さな過去改変は連鎖的に大きな変化をもたらす。石の位置が変わると、そこに至るまでの経緯が変化する。それで君達の戦いの経緯を変えた」


「だから、建物が狭くなったってことか」


 石の位置が変わり、石がある場所がB地点にあるべき世界へと移動した。数センチ移動しただけであっても、小石が転がるための角度や力が変化する。

 建物に角度がついたり、小石が転がる衝撃となる戦闘が変化した。


 マンデリンが石や瓦礫を蹴って、ゲンゴロウがダメージを受けたのは、石の位置が変わるために部屋の大きさや戦闘の流れが変わったためだ。


 部屋が狭くなったことで、ゲンゴロウはイタッチとの戦闘で距離を保つのがうまく行かず、イタッチの攻撃を喰らったのだろう。

 しかし、過去を変えても人の記憶には影響が出ないようで、そのためイタッチ達はゲンゴロウのダメージについて気づくことができなかった。


「さてと私の能力については理解してくれたようだね。降参するかい? それなら苦しまないようにあの世に送ってあげよう」


「断るぜ、諦めるって文字は俺にはないんでな」


 マンデリンの能力を聞いたイタッチは、折り紙の剣を片手にマンデリンに向かって走り出した。


「ふむ、ならば、苦しみながらあの世に行くと良いよ」


 マンデリンは近くにある瓦礫を蹴り飛ばそうとする。


「マンデリン、君は一つミスをした!! 致命的なミスをだ!!」


 しかし、マンデリンが瓦礫を蹴るよりも早く、イタッチはマンデリンの懐に潜り込む。そして折り紙の剣でマンデリンの腹を切り裂いた。


「ぐはっ!?」


「どんな強力な力でも発動前に倒してしまえばおしまいだ!!」


 マンデリンのミス。それは部屋を狭くしたことであった。ゲンゴロウにダメージを与えるために過去を変えた。

 その影響で部屋が狭くなったのだが、その影響でイタッチとマンデリンの距離も縮まっていた。

 最初の距離では間に合わなかったが、二度の改変によりイタッチの射程距離にマンデリンが入ったのだ。


「ぐ……私の…………血……………血が…………」


 剣で切られたマンデリンは傷口を抑えながらしゃがみ込む。

 イタッチは剣を握り、そんなマンデリンを見下ろした。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ