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第83話 『マンデリンvsゲンゴロウ』

参上! 怪盗イタッチ




第83話

『マンデリンvsゲンゴロウ』




 ゲンゴロウとマンデリンは向かい合い、今にも戦闘が始まると言った雰囲気だ。

 イタッチは目の前の状況に気を張らなければならないが、無線から聞こえてくる会話が彼の集中を乱した。


 海底にある施設に侵入していたダッチ。彼はマンデリンがここに現れるまで、施設内でマンデリンと対話していた。しかし、マンデリンが姿を消した後、何者かの襲撃を受けて連絡が取れなくなっていた。

 アンがダッチを心配して、様々な手段で連絡を試みるが返答はなく。さらにはアンがハッキングした監視カメラの映像からもダッチを確認できていないという状況だった。


 あのダッチがそう簡単にやられるはずがない。そう思いたいが、ダッチの安否が確認できないため、イタッチの心には小さな針が刺さったような辛さがあった。

 しかし、それでも目の前の敵から目を離すことはできない。


 イタッチはゲンゴロウとマンデリンを見守る。この戦闘でマンデリンの情報を手に入れることができるはず。

 ゲンゴロウが負けたとしても、得られるものがあれば、次の戦いで活かすことができる。



 ゲンゴロウは引き金に指をかける。


「撃つぞ。ポケットから手を出さなくていいのか?」


 ゲンゴロウはすぐに撃てるように準備するが、マンデリンにそのままでいいのか尋ねる。

 実力差を感じてはいるが、無抵抗の人間を撃つことには抵抗があるようだ。しかし、マンデリンは頬を上げて不気味に笑う。


「問題ない。君程度の過去を変えるなら、手を使わなくてもできる」


「…………そうか」


 ゲンゴロウは覚悟を決めて、マンデリンに弾丸を離す。無数の弾丸がマンデリンを目指して飛んでいく中、マンデリンは近くにあった小さな破片を蹴る。

 それは床のタイルの破片であり、戦闘中に割れて剥がれてしまったものだろう。ほんの

数センチの大きさの破片が転がり、タイル五つ分くらい先で止まる。


 すると、不思議なことが起こった。


 マンデリンを目指して飛んでいた弾丸が消え、この場にいた全員の視界が一瞬歪む。そして誰も動いていないというのに、ゲンゴロウが膝をついた。


「ぐばっ!?」


 座り込んだゲンゴロウは、床に手をついて血を吐き出す。いつの間にか全身傷だらけになっており、大ダメージを負っていた。


「な、何が起きた…………はぁはぁ、俺に何をしたッ!!!!」


 訳もわからず、ゲンゴロウが叫ぶ。すると、マンデリンはフフフと部屋を見渡しながら笑った。


「私も詳しくは知らない。だが、予測はできる、君はイタッチと戦って大きな傷を負った。そんなところだろう……」


「俺が……イタッチに?」


 なぜ、そんなことを言い出したのか。

 マンデリンはゲンゴロウの傷はイタッチにつけられたものだと言った。


 しかし。イタッチとゲンゴロウは先程までは戦ってはいたが、大きなダメージを負うようなことはなかった。部屋の広さやネコ刑事達とのコンビネーションもあり、ほぼ互角に張り合えていた。


 皆が理解できずにいる中、部屋のイタッチが違和感に気づく。

 部屋の大きさが小さくなり狭くなっている。横幅だけでなく天井も低くなっていた。


 さらにはさっきの戦闘では壁や天井などを大きく傷つけるようなことはなかったはずだが、部屋のあちこちが傷ついており、穴が空いている場所まであった。

 まるでさっきまでといた場所が変わったかのように……。


「さてと、雑魚兵士は片付けた。次はイタッチ……君だ」


 マンデリンはイタッチを睨みつけて、イタッチに来るように挑発する。イタッチはその挑発に乗って前に出ようとしたが、地面に手をついているゲンゴロウが、イタッチを止めた。


「待て……イタッチ…………」


「ゲンゴロウ。君は休め、どんな攻撃をしてきたのかわからないが、その傷じゃもう無理だ。ネコ刑事達に治療してもらいな」


 イタッチがゲンゴロウに休むように伝える。しかし、ゲンゴロウは血反吐を吐きながらも、立ち上がって前に出た。


「ここは俺の現場だって言ったろ……。やるべきことをやらにぁ、休めねぇよ…………」


 ふらつきながらもマシンガンを手に取り、今にも閉じそうな半開きの目でマンデリンに睨みつける。


「ゲンゴロウ…………」


 イタッチはゲンゴロウを止めようと手を伸ばしたが、その手は途中で止まる。それは前を向くゲンゴロウの顔を見てしまったからだ。

 覚悟を決めた人間の顔。その顔からは勝つことではなく、繋げるという意志を感じた。


 イタッチはもう何も言わず、一歩下がりゲンゴロウを見送る。

 ゲンゴロウが何をしようとしているのか分かった。なら、その意志を尊重する。何も見逃さないようにイタッチは全神経を尖らせる。


 ネコ刑事達も今すぐ駆け寄りたそうだが、二人の会話を聞いて察したようだ。流石はフクロウ警部の部下といったところだろう。


 マンデリンは戦意を失っていないゲンゴロウを見て、深くため息を吐く。


「まだやるというのか。私はこれでも忙しいんだけどね……」


「それは俺も同じだ。君から世界を守らねばならないからな」


「はぁ、ならば、次でトドメを刺すとしよう……」


 マンデリンは転がる瓦礫に目をつける。そして数は歩いたのち、小石を蹴り飛ばした。









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