表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
82/103

第82話 『過去の力を持つ者』

参上! 怪盗イタッチ




第82話

『過去の力を持つ者』



 ゲンゴロウはイタッチとマンデリンの間に入り、二人を交互に睨む。


「ここは俺の現場だ。ここで俺の許可なく暴れることは許さん」


 ゲンゴロウが二人を威嚇すると、近くにいたネコ刑事とコン刑事は焦って、ゲンゴロウを止めようとする。


「ゲンゴロウさん、危ないっすよ!!」


「落ち着いてください!!」


 二人はマンデリンに怯えていた。国会議事堂を崩壊させ、さらには多くの警察が全力で探しても見つけられなかった人物。それがマンデリンだ。

 どんな力を持っているのかはまだ分からない。だが、誰にも気づかれることなく潜入して、この場に侵入したのだからそれを可能にするだけの力なのだろう。


 そしてそんなマンデリンと対等に会話するイタッチ。彼がチート級の力を持っているのは二人とも知っている。

 冷静な判断力、俊敏な動きを得意とする身体能力、不思議な力を持つ折り紙。それらの力を使いこなす世界一の大怪盗、それが怪盗イタッチだ。今まで何度も挑み、敗れてきたからこそ、彼の強さを知っている。


 そんなマンデリンとイタッチの間に入り込み、二人を敵に回すゲンゴロウ。ゲンゴロウの強さも今回の任務で十分に知ったが、それでも二人に比べると小さく思えた。


 しかし、ゲンゴロウは自信満々に親指を立てて、ネコ刑事達にニコリと笑ってみせる。


「大丈夫。下がっていてくれ、君達はフクロウ君の大切な部下だ、傷つけるわけにはいかない」


 本当に自信があるのか、それとも虚勢か。ゲンゴロウは一人で立ち向かう。そんなゲンゴロウをネコ刑事とコン刑事は敬礼して送り出す。

 二人が三歩下がり、ゲンゴロウ達から離れると、ゲンゴロウは持っていたマシンガンをマンデリンへと向ける。


「俺の任務はイタッチを捕縛して、マンデリンに関する情報を吐かせること。だが、君が自ら現れてくれたことで、手順を早めることができた……。貴様をここで捕らえる!!!!」


 後ろにイタッチがいるというのに、ゲンゴロウは背後への警戒を薄めてマンデリンと向かい合った。

 マンデリンは深くため息を吐き、


「後ろの怪盗は捕まえないのかい?」


「世界にとっての危険度は君の方が高いと判断した。彼よりも君を野放しにする方が人類にとって害だ」


「やれやれ、私が与える未来こそが至幸であるというのに。そのことに気づけない愚か者は……」


「何をやろうとしているかは後で尋問するさ。だが、これだけ多くの国民に不安を与えた君が何をしようとも、それは国民の安心安全に繋がるとは思えん!!」


 ゲンゴロウはマシンガンを引き金に指をかけて、いつでも撃てるようにする。マンデリンはゲンゴロウとは対照的にズボンのポケットに両手を入れて、余裕の態度を見せる。

 光景だけを見れば、すぐに決着のつきそうな状況だ。だが、この場にいる全員はマンデリンがそう簡単に終わらないと分かっていた。


 この部屋にどうやって入ってきたのか、建物を一夜で破壊した方法。それらの謎がまだ解けていない。

 マンデリンは何か特別な力を持っている。それはマンデリンの態度からも明らかだった。


 銃口を向けたゲンゴロウが汗を垂らし、タイミングを見計らう中、後ろにいたイタッチが彼に話しかけた。


「まぁ待て、ゲンゴロウ」


 イタッチが話しかけると、ゲンゴロウは身体を動かすことなく、マンデリンを警戒したまま声を荒げる。


「黙ってもらおうか!!!! …………いや、黙っててくれ、彼を捕まえられれば、今回の事件は終わる。そうすれば、彼らの恐怖で夜も眠れない国民達を守ることができる」


「ああ、その通りだ。元凶のマンデリンを捕まえれば、この事件も終わりに近づくだろう。だが、ゲンゴロウ、君なら分かってるんだろう、彼との実力の差を……」


「…………」


 ゲンゴロウはマンデリンと対峙して即座に理解した。自身とマンデリンの実力には天と地のような差があることを。

 マンデリンも軍隊で鍛え上げてきた実力のある兵士だ。だが、それでも届かない。圧倒的な力の差。

 対峙しただけでその差を感じ取っていた。


 そしてそれはイタッチも同様に感じていた。


「ここは俺に変わってくれないか?」


 イタッチはゲンゴロウに変わるように伝える。


 イタッチもマンデリンと向かい合った時に、その実力を感じ取っていた。しかし、だからこそ自身が戦うべきと判断した。

 だが、ゲンゴロウはイタッチの提案を拒絶する。


「断らせてもらう」


「そうか……」


 断られたイタッチは大人しく後ろに下がる。ゲンゴロウはさらに一歩前に出て、マンデリンを睨みつける。



 どれだけの実力差があろうとも立ち向かう。人々を守るためどんな巨悪にも恐れず、正面から戦う。

 ゲンゴロウは銃口を向けたまま、深呼吸をして過去のことを思い出した。


 それは自分が捕まり、誰も助けに来られない状況で、一人で特攻してくれたフクロウの姿。

 自身よりも若く、力も知恵もない。だが、誰よりも勇敢に他者のために力を使った。


 彼ならば、この状況で逃げることはしない。仲間のため、ライバルのため、人々のため……。勝利を掴むために戦うのだ。



「さぁ、マンデリン。覚悟してもらおうか!!」







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ