第81話 『美術館に現れた強敵!?』
参上! 怪盗イタッチ
第81話
『美術館に現れた強敵!?』
轟美術館にある太陽の紋の展示室。そこでイタッチはゲンゴロウ、コン刑事、ネコ刑事の三人と戦っていた。
イタッチは折り紙を駆使して、戦闘を有利に進めているが、三人は上手く連携してイタッチを逃さないように閉じ込めていた。
「二人ともありがとう。君達のおかげで彼を捕まえるまでいかなくても、食い止めることができている」
戦闘を続けながら、ゲンゴロウはネコ刑事とコン刑事に感謝を伝える。それを聞いてコン刑事は嬉しそうに答える。
「フクロウ警部のおかげっすよ。いつもアタシ達を鍛えてくれてるっす。それにイタッチの行動パターンも全部警部から教わったモノっす!!」
三人がイタッチに逃げられずにいるのは、フクロウ警部の知識があるからだ。
フクロウ警部はいつもイタッチを捕まえるまで後一歩のところまで行く。他の人物ではそこまでいけないだろう。そんなフクロウ警部の近くにいるからこそ、ネコ刑事とコン刑事はここまで成長できた。
イタッチと三人が向き合う姿勢になった時。この場にいた全員の視界が一瞬歪む。ほんの0.0001秒の瞬きのような暗闇。その暗闇の後、彼らの視界にあり得ないものが映った。
「やぁ、想像通り、苦戦しているようだね。怪盗イタッチ…………」
「「「「っ!?」」」」
部屋の隅に腕を組んで立ち上がる人影が現れた。先ほどまでそこには誰もいなかった。誰も部屋に入る気配はなく、入ってきたのならすぐに気づける。
黒いコートを着たヤギは四人を見て、手を振った。
「私がマンデリンだ」
「マンデリン…………え、マンデリン!? なんでここにいるんすか!?」
突如現れたマンデリンに四人は警戒する。全員、現れたマンデリンに驚いているが、一番驚いていたのはイタッチだった。
イタッチはゲンゴロウ達と戦いながら、ダッチとアンの無線の内容を聞いていた。セキュリティカードが必要なこと、ミシガルに苦戦していたこと、そして不思議な施設が海の底にできていたこと、会話から施設の情報を集めていた。
だからこそ、マンデリンは海の底にいると確信していた。ダッチとマンデリンが遭遇して作戦が成功したため、ダッチがマンデリンを倒したら美術館を脱出する気でいた。
だが、マンデリンは美術館にテレポートした。
イタッチはマンデリンを警戒して、マントの中に手を伸ばす。いつでも折り紙を取り出せるようにしてマンデリンに尋ねた。
「なぜ、ここにいる?」
無線の内容ではダッチとマンデリンは対話をしていた。
施設にいたのが偽物でこちらが本物なのか。それとも逆のパターンで施設が本物でこちらが偽物ということもある。だが、引っかかるのは施設にいたマンデリンが消えて、こちらに現れたこと。瞬間移動のような力があるということもある。
イタッチの問いにマンデリンはニヤリと笑い、壁に寄りかかりながら答えた。
「君の作戦は君が目立つことで私の注意を引いて、その隙にダッチに襲撃させるという作戦だったんだろう。だが、その作戦は私には通用しない」
「通用しないだと……」
「どんな罠に私をはめようとも、私はそれを無かったことにできる。それが私が軍から貰った力だからね」
イタッチは過去に戦ったモカのことを思い出す。モカは未来を見る力を持っていた。予言のようなもので、それを利用して攻撃を避けたりできた。
マンデリンもモカのような特殊な力を持っている。それがここに現れたマジックということだろう。
イタッチはマントの裏から折り紙を取り出した。そして剣を作って戦える体制になる。
「俺達の作戦を回避したってならなんでここに現れた? ここには俺様がいるんだぜ」
作った剣をマンデリンに向ける。
ダッチの襲撃から逃げたのなら、この場所に何故現れたのか。
マンデリンは余裕の笑みを浮かべると、
「君を倒しに来た」
「俺を倒しに……か」
最初はマンデリンの目的はモカを倒したイタッチ達に対しての復讐だと考えていた。実際にイタッチ達に復讐するために、全世界を操っていた。
だが、ダッチとの会話の中で不思議な話題が出ていた。軍の機密。そして世界の救世主になると……。
マンデリンは壁から離れると、ポケットから拳銃を取り出した。リロードをして銃口をイタッチに向ける。
「君の存在は私の計画の邪魔になる。計画の中に君達を組み込んだのも、君達を倒す機会を待っていたからさ……。君とダッチは基本的にタッグで行動する。しかし、今は君一人だ」
マンデリンは引き金に指をかける。イタッチはいつでも動けるように腰を低くして、折り紙を構えた。
いつ撃ってきてもおかしくない。マンデリンが発砲した瞬間に戦闘が始まる。その合図を待っているイタッチだったが、最初に発砲したのはマンデリンではなかった。
「待ってもらおうか。二人とも……」
ゲンゴロウはマンデリンの足元の地面を撃ち、マンデリンを挑発する。そしてイタッチとマンデリンの間に割り込んだ。
「ここは俺の現場だ。好き勝手に暴れられては困る」
ゲンゴロウはマシンガンを片手にイタッチとマンデリンを交互に睨んだ。