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第80話 『ダッチとマンデリン』

参上! 怪盗イタッチ




第80話

『ダッチとマンデリン』




 ダッチとマンデリンは向かい合う。マンデリンはダッチに座るように促すが、


「誰が座るかよ!! 俺はテメェを倒しに来たんだ」


 ダッチは座ることを拒否した。そんなダッチの様子を見て、マンデリンはニコリと笑う。


「それもそうだな。なら、そのままで良い。そこで話を聞いてくれ」


 マンデリンはそう言って懐かしむように目を細める。そんなマンデリンの姿を見て、攻撃のチャンスだと、ダッチは刀を抜こうとする。

 しかし、ダッチは刀を抜くことができなかった。


 隙だらけに見えるマンデリンの姿。だが、ダッチはそんなマンデリンと向かい合い、1ミリも動けなくなる。

 隙だらけに見えるはずの仕草だが、全く隙がない。それどころか恐怖すら感じる。蛇に睨まれた蛙のように攻撃も逃げることもできない。向かい合う相手が絶対的な強者である。そのように錯覚させられる。


 マンデリンはダッチが動けないことを分かっているようで、ゆっくりと語り始める。


「私は平凡な家庭で生まれた。特に才のない人間だった。夢もなく、ただひたすらに日々を過ごす。弟も同じだったんだろう……。私と弟は自身に何かを求めて軍隊に入隊した──


 訓練を積み、実績を積み、ほどほどな人生だった。結局は求めていた何かは軍隊ではつかめなかった。

 そんな私達だが、軍隊のある実験に参加することで力を手に入れた。鏡に映った自分と向き合うことで、私は過去、弟は未来に関する力を手に入れた。

 その力を使い、特殊部隊に配属された私達は任務を遂行していたが、私は任務中に世界の秘密について知ってしまった。


 動物達の暮らすこと世界。過去に何が起きたのか、それにより世界はなぜ、こうなったのか。過去との矛盾に誰も違和感を感じないのか。


 だが、それだけではない。私が知ってしまったのはそれを引き起こしたモノについてもだった。

 奇跡を起こす世界最強と呼ぶべきそれは、初めて私を興奮させた。

 だが、モノは軍の上層部でも一部のものしか知らない特殊な存在。それについて知ってしまった私は、軍規違反を犯したことにされて幽閉されることになった。


 私が軍規違反を犯していない事実を突き止めた弟は、軍を辞めて独自の組織を作り始めた。

 弟が外で君達と戦っている中、私は牢屋で何もできずに自身の無力を悔やむことしかできなかった。


 だが、チャンスが訪れた。ある人物が私を解放してくれたのだ。その人物から弟のことを聞いた。君達と戦い、目的を果たせずに力尽きたと……。



 私は弟の恨みを晴そう。そして私は弟と違う形で目的を果たす。世界に終焉を呼び起こす!! それこそが今の世界に必要なことだ」



 長い間、語り続けていたマンデリン。ダッチは話の途中で何度も攻撃を仕掛けようとしたが、動くことができなかった。

 ダッチはその場に立ち尽くした状態で、マンデリンに尋ねる。


「なんでそんなことが必要なんだよ……」


 話が長くてほとんど理解できていなかったダッチ。とりあえず最後の言葉だけが耳に残ったため、詳しく聞こうとする。


 すると、マンデリンは嬉しそうにニコリと笑う。


「先ほども話した。あるモノが原因さ……。この世界がなぜ生まれたのか、全ての理由はそこになる」


 笑っていたマンデリンだが、スッと表情を暗くする。


「だが、それほどの力だからこそ危険なんだ。あれは人の欲望を歪ませる、あんな素晴らしいモノをそんな汚れた心で使うべきではない。だから、私が人類を選別する。選べれた人間が生き残り、あれを使いこなすんだ」


「あぁ? んで、それはなんなんだよ」


「……ふふふ、気になるだろう。だが、ここまで話したのはここで倒される君に最後のプレゼントをあげるためだ。これ以上は要らないだろう」


 マンデリンは椅子を引いて立ち上がる。


 マンデリンが立ち上がると、ダッチはなぜか強い強風に押されているかのような感覚に襲われる。

 実際に風は吹いていない。そのような感覚になるのはマンデリンの強いプレッシャーが原因だ。


 立ち上がっただけなのにダッチは一歩退いてしまった。

 そして身長もほとんど変わらないというのに、ダッチは高い山でも見上げているかのように、マンデリンを見上げてしまう。


「なんなんだ……お前は」


 マンデリンの覇気にやられたダッチは、思わず聞いてしまう。

 他にも聞きたいことはいっぱいあった。しかし、そのこと全てが頭の中で真っ白になり、マンデリンへの疑問が膨れ上がった。


「私はマンデリンさ。それ以上でも以下でもない。ただ私は未来の救世主だ、そう確信している……」


 マンデリンはそれだけ答えると、近くにあった椅子を蹴り飛ばす。

 蹴られた椅子は倒れて地面に転がる……はずだった。



 瞬きもしていないのに、一瞬にして視界が変わった。

 目の前にいたはずのマンデリンは姿を消して、倒れたはずの椅子は元に戻っている。椅子やテーブルも数センチずれて、部屋の温度や湿度も変化したのも感じ取れた。


「動くな。ダッチ」


 だが、ダッチが最も驚いたのは、マンデリンが消えたことでも、部屋の様子が変わったことでもない。

 先ほどまでダッチの背後には誰もいなかった。しかし、ダッチの後ろには仮面をつけた四人組が現れて、全員が拳銃を持ってダッチに銃口を向けていた。


「いつの間に……」


 マンデリンと向き合いながらも、背後の気配には気を付けていた。絶対に背後は取られないという自信があった。だが、ダッチの背後には四人も立っていた。

 その中の一人、仮面の男性はダッチの言葉に答えた。


「最初から……ずっとさ」








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