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第76話 『セキュリティカードを探して』

参上! 怪盗イタッチ




第76話

『セキュリティカードを探して』




「敵のセキュリティカードを奪うだと!?」


 ダッチは無線を片手で押さえながら、耳をピクピクさせて驚く。そんなダッチの仕草を知らずにアンは解説をする。


「はい。この扉を開くためにはセキュリティカードが必要です。そうなるとセキュリティカードを入手する必要があるんです、そしてそのカードを持っているのが……」


「まぁ、敵しかいないよな」


 現在ダッチが侵入しているのはマンデリンの秘密基地だ。海底にある施設を改造して自身の基地として利用していた。そんな海底の施設にダッチは単独で忍び込み、奇襲をかけようとしていた。


 ダッチは扉の前で腕を組んで考え込む。


「だがよぉ、アン。カードを持った奴がこの辺にいるのか? 今まで誰とも会わなかったんだぞ」


 ダッチは泳いで施設に侵入した後、施設内を走ってここまで辿り着いた。隠れて慎重「移動していたとはいえ、5分以上は施設内にいる。しかし、今のところ誰とも遭遇していないのだ。


 すると、アンは嬉しそうに声を揺らしながら答える。


「それは当然ですよ。私がナビしてたんですから」


 基地内での道案内はアンが行っていた。アンは敵と遭遇しないようにルートを作り、ダッチを案内していたのだ。

 そのことを理解したダッチはため息を吐く。


「んだよ、そういうことかよ。んじゃ、どこ行けばカードを持ってそうな奴がいる?」


 ダッチな振り返り、来た道の方へと目線を向ける。通路はパイプ状のようになっているが、複雑に入り組んでいる。


「そうですね〜。…………あ、いました! この方なら持ってそうです!!」


「よっしゃ!! 案内頼んだぜ!!」


「任せてください!!」


 ダッチはアンのナビに従いながら、来た道を引き返し始めた。

 まるで蜘蛛の巣の糸のように複雑に絡み合い、繋がりあった通路。倉庫のような場所や発電所のような施設を超えて、ダッチはとある部屋に辿り着いた。


 そこは水族館のように巨大な水槽がいくつも置かれた部屋。昔はここに水生生物を入れて観察していたのだろう。水質などを管理する機械などもそのまま置きっぱになっている。しかし、機械の上には埃が積もり、水槽のガラスは緑色になっていた。

 そんな部屋の奥でペリッと紙を捲る音が聞こえてくる。静かな部屋のため、そんな小さな音ですら印象強く聞こえる。


 ダッチは刀に手を乗せて、音の聞こえた方へと歩いていく。無線の先にいるアンからこの先にいる人物については知らされている。

 出会えば戦闘になるのは確実だ。


「やれやれ、僕は忙しいんだけど……ね。何の用かな?」


 部屋の奥にいる人物が本を閉じて、ダッチに話しかける。


「テメェからセキュリティカードを奪いに来た」


「はぁ……。そうだろうと思ったよ」


 本を床に置いて、その人物は立ち上がる。想像していたよりもその人物は大きく、ダッチは見上げることになる。

 背びれが長く、鱗は丸い形で大きな口をしている。黒いスーツに赤いネクタイをして、ビシッと姿勢良く立つ。

 彼はボウフィンという魚でマンデリンの部下の一人だ。

 コードネームはミシガル。


「僕はミシガル。君の名前を教えてくれるかい?」


 ミシガルは深くお辞儀をしてダッチに尋ねる。ダッチはケッと嫌そうにしながらも、刀を抜いて構えた後、


「ダッチだ」


 ダッチ的にはこういう礼儀正しい挨拶をしてくる相手は苦手意識がある。自身のペースも崩されるし、頭を使ってくる印象もあるため、戦いたくないと感じやすい。

 しかし、名前を教えられて聞かれると、武人のような性格であるダッチは、嫌でも答えてしまう。それで相手のペースに呑まれようとも……。


 ミシガルはニコリと笑い、直立で姿勢良く立つ。ミシガルの動きはまるで機械で操作されているかのように、ピシピシと無駄のない動きである。


「へぇ〜、君がダッチか。マンデリンから聞いていたけど、想像以上に強そうだね」


 ミシガルの言葉を聞き、ダッチはサングラス越しに睨みつける。


「まるでテメェの方が強いみたいな言い方じゃねぇか。このヒョロガリ魚が……」


「おー、怖い怖い。これだから君みたいな野蛮な人間は嫌いなんだよ」


 ミシガルは腰に巻いたベルトから拳銃を取り出す。


「さて、君の目的は僕の持つセキュリティカードみたいだからね。……抵抗させてもらうよ」


 ミシガルは拳銃を部屋の天井に迎え撃つ。すると、銃口からワイヤーが伸びて、天井に刺さる。そしてミシガルの身体はワイヤーに引っ張られて宙にいた。


「この部屋で僕に戦いを挑んだことを恨むんだね。この広い部屋なら僕の方が有利だよ」


 ミシガルはワイヤーに捕まって宙にぶら下がっていたが、拳銃を操作してワイヤーを引っ込めると、別の場所にワイヤーを飛ばして天井を移動する。


「空で待っても僕にとっては水中のようなもの。この広い空間が僕のテリトリーだ。君に僕を捕らえることはできない!!」


 ミシガルはワイヤーを使い、天井を自在に移動する。


「コイツ……魚のくせに……。猿かよ!?」











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