第74話 『戦闘は続く』
参上! 怪盗イタッチ
第74話
『戦闘は続く』
隠れていたイタッチを発見したゲンゴロウ。見つかったイタッチはケースの裏から出てきて、ゲンゴロウと向かい合った。
「よく見破ったな。さて、そろそろ決着をつけるか?」
イタッチはマントの裏から折り紙を取り出して、折り紙の剣を作るとそれを構える。
ゲンゴロウもマシンガンの銃口を上げて戦闘体制になる。
「ああ、行くぞ。怪盗イタッチ!!」
ゲンゴロウは横にステップするように移動しながら、引き金を引いて弾丸を発射する。イタッチは移動するゲンゴロウを追いかけるように走り、飛んでくる弾丸を剣で弾きながら距離を詰めようとした。
ゲンゴロウはイタッチに近づかれないように、移動をしながらマシンガンで牽制する。
イタッチが近づくか、ゲンゴロウがこの距離を保てるか。そういう戦いが始まった。
「なかなか近づかせてくれないか」
「近づかせるわけにはいかないからね」
ゲンゴロウはマシンガンで距離を取りながら、隙を見ながらワイヤーを部屋に張る。透明な釣り糸のようなワイヤー。触れても引っかかるだけでダメージはないが、簡単には切ることができず、イタッチの進路を妨害する。
イタッチも全力で距離を詰めようとするが、ゲンゴロウの的確な射撃とワイヤーにより、一定の距離以上は近づくことができない。
これ以上は折り紙の剣だけでは突破できないと判断したイタッチは、後ろに高く飛んで一旦離れる。
「やるな、ゲンゴロウ。コイツはどうかな?」
イタッチはマントの裏から折り紙を取り出す。そして片手で剣を持ちながら、折り紙を折り始める。
新しく作り上げたのは盾。イタッチは剣と盾を装備して、ゲンゴロウへ向かって走り出した。
「盾か!! 正面突破を狙うつもりか!?」
イタッチが向かってくる中、ゲンゴロウは今まで通りマシンガンで対応する。しかし、弾丸は盾に弾かれてイタッチの動きを制限することができない。
ワイヤーをジャンプやスライディングで避けたイタッチは、ゲンゴロウの目の前までたどり着く。
「お邪魔するぜ。ゲンゴロウ!!」
「いらっしゃい、怪盗イタッチ。歓迎するよ」
接近されたゲンゴロウはマシンガンを捨てると、腰につけたナイフを取り出して接近戦の準備をする。
イタッチが剣を振り下ろすが、ゲンゴロウは姿勢を低くして剣を躱して、イタッチの懐に潜り込む。
「武器のリーチが仇となったな!」
ゲンゴロウはイタッチをナイフで切り付けようとする。それを読んでいたのか、身体を逸らしてナイフを避ける。
そして盾を突き出して、接近したゲンゴロウを突き飛ばした。
「ぐっ!?」
盾で殴られたゲンゴロウはイタッチから少し離れる。殴られた衝撃で口の中が切れたのか、口から血が出る。その血をゲンゴロウは腕で拭った。
「読まれてたか……」
「接近戦対策をしてなければ、あの場面で武器を捨てないからな。来るのが分かってるなら避けられる」
イタッチはそう言うが、ゲンゴロウの攻撃は予想していただけでも避けられるものではない。鍛えられた兵士でもあれを避けるのは簡単ではないだろう。
それを可能にしたのはイタッチのスピードがあったからだ。
イタッチは素早さに自信がある。怪盗としての実力として折り紙が注目されているが、彼自身の能力であるスピードも怪盗の活動を大きく支えている。
このスピードはダッチと認めており、戦闘時にも発揮される。
ゲンゴロウとの距離ができ、イタッチは両手の武器を構え直す。ゲンゴロウもナイフを構え直す中、ゲンゴロウの元に二人の人物が並ぶ。
「手伝います。ゲンゴロウさん!」
「アタシ達はイタッチを逮捕するために来たんす。ゲンゴロウさんにだけ負担はかけられないっす!」
ゲンゴロウの横に並んだのはネコ刑事とコン刑事。二人はゲンゴロウに加勢してイタッチと戦うことにしたようだ。
ゲンゴロウはその二人の姿を見て、
「ああ、頼むよ。二人とも」
⭐︎⭐︎⭐︎
「アン、着いたぞ……」
ダッチは耳につけた無線機を使い、アンに呼びかける。しかし、アンからの返答がない。
「……おい、ガキ。……アン!!」
返事がないため最初は小声だったが、少しずつ声が大きくなっていく。
不安から声が大きくなり、今の現状で大声を出すのは危険だと分かっていても出してしまう。
だが、ふと冷静になり、耳につけた無線を触ってみると、無線機のスイッチが付いていないことに気がついた。
「…………切ったままだったか…………………。あー、アン、聞こえるか?」
ダッチが無線機に話しかけると、無線機から返事が返ってくる。
「あ! やっと繋がった。もーう、心配になるので無線切らないでくださいよ!」
無線の先からアンの声が聞こえてくる。アンはダッチが心配だったのか、少しだけ声が震えている。
「ッチ。俺を心配すんじゃねぇよ。余裕だよ」
ダッチは強がりとアンを心配させるために強めにアンに答える。それを聞きアンとホッとしたのか、声がいつもの調子に戻った。
「それでダッチさん、目的地には到着できたんですか?」
「ああ、ここまで来るだけで大変だったけどな」
ダッチが今いるのはまるで海底にある施設。元々は水生生物を研究するための施設だったようだが、かなり改造されている。
ダッチはここまで泳いできたのだ。
「ダイビング用のアイテムはそのまま放置で大丈夫です。そこは警備の巡回もないですから」