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第71話 『ゲンゴロウ』

参上! 怪盗イタッチ




第71話

『ゲンゴロウ』



 ネコ刑事おコン刑事はゲンゴロウに案内されて、美術館の休憩室で座って向かい合っていた。


「さてと、ネコ刑事と天月刑事だね。初めまして、俺はゲンゴロウだ」


 二人と向かいに座ったゲンゴロウはニコリと笑い挨拶をする。

 この部屋にいるのはゲンゴロウと二人のみ。他の兵士達は扉の外を警備しているものがいるが、中の様子は見ていない。


「なぜ、僕達を中へ……?」


 ネコ刑事が聞くと、ゲンゴロウは天井を見上げて懐かしそうに語る。


「そうだなぁ、懐かしかったんだよ。君達はまるで昔のフクロウ君だ」


「昔の警部……? ゲンゴロウ隊長はフクロウ警部を知ってるんですか!?」


「ああ、俺は昔フクロウ君に救われたことがある……。何年も昔だが、とある任務で俺はテロリストに捕まったことがある。その時は俺はもう救えないものとして対テロ部隊は動いていたらしい。しかし、部外者のフクロウ君が俺を救うために部隊の反対を押し切って突入してくれたんだ」


「そんなことが……」


「あの時のフクロウ君はまだ若い無鉄砲さが目立っていたが、かっこよかったよ」


 ゲンゴロウの話を聞いたネコ刑事とコン刑事は、昔からフクロウ警部は変わってないんだなっと思う。


「君たちを見ていると、当時のフクロウ君を思い出す。ネコ刑事、天月刑事、君達はイタッチを捕らえに来たんだね」


「「はい!!」」


 ゲンゴロウの言葉に二人は返事をする。それを聞き、ゲンゴロウはニコリと笑う。しかし、一呼吸置き、ゲンゴロウは真面目な目線で二人を見つめる。


「フクロウ君が来ていないということは彼の指示ではないんだろう。君たちが警備に参加するということは、彼に対しての裏切りになると思うが、それでも参加するのか?」


 ゲンゴロウが聞くと、コン刑事は力強く答える。


「アタシは参加しない方がフクロウ警部を信じられていないそう感じるっす。いつも失敗だらけの警部っすけど、一番イタッチを追い詰めているのは警部なんす!!」


 コン刑事はテーブルに両手をついて、身体を乗り出した。


「警部から学んだこと。その知識がアタシ達にはあるっす。警部の知識があれば、イタッチを捕まえられる確率が上がるんす。フクロウ警部がいるからこそ、イタッチを追い詰められる。アタシはそれを証明したいんす!!!!」


 力強く言うコン刑事。その様子を隣で見ていたネコ刑事は帽子を深く被る。


「僕も最初は命令に背くことは裏切りになると思っていました。でも、天月刑事を見てて変わりました。警部は自分の意志を突き通す人です。僕達も自分の意志を突き通さないと、警部に合わせる顔がありません!!」


 二人の意見を聞き、ゲンゴロウは立ち上がると、


「分かった。ネコ刑事、天月刑事。君達を警備に加える!!」


「え、いいんすか!?」


「現場の指揮は俺が任されている。責任は俺が取るさ。それに俺もフクロウ君には恩がある」


 ゲンゴロウは二人の前に手を出す。


「よろしく頼むよ。二人とも」


 ネコ刑事とコン刑事は差し出された手を握り、熱い握手を交わした。


「「はい!!」」




 美術館の警備に参加することになったネコ刑事とコン刑事。

 今回イタッチが狙っているのは太陽の紋というお宝だ。そのお宝が保管されているのは轟美術館だ。


「ゲンゴロウさん、作戦はどうなってるんですか?」


 太陽の紋の展示室に向かいながら、コン刑事はゲンゴロウに尋ねる。


「ああ、イタッチの変装に備えて、兵士同士が見える距離に警備を配置している。お互いが監視になることで、イタッチにすり替わるのを防ぐつもりだ」


 美術館に配備された兵士達は均等に配置されて、各々が見える距離に立っている。兵士の数の美術館の広さを考えると、兵士を置ける範囲は狭い。しかし、イタッチは変装を得意としていることもあり、それを警戒してこのような作戦にしたのだろう。


 話を聞いたコン刑事は今までの経験から、ゲンゴロウに情報を伝える。


「では、コップに水を入れて兵士一人一人を確認するっす」


「ん? どういうことだ?」


「フクロウ警部が作戦開始前に毎回やっていることなんすけど、コップに入った水に手をつけてもらうんす」


 ゲンゴロウは首を傾ける。その疑問に答えるようにネコ刑事は解説をする。


「イタッチの変装は折り紙を使ってのものなんです。変装を確かめる方法としては、顔などの皮膚を引っ張ったり、色々あるんですけど、一番確実な方法は水を使うことなんです」


 イタッチは不思議な折り紙を持っており、それを利用して変装する。折ったものの効果を得られる折り紙だが、人の皮を作ってそれを被れば、その人間に変装できるのだ。


 しかし、その折り紙にも弱点がある。それが水である。


 イタッチの使う折り紙はあらゆるものになることができる。剣になれば剣になり、盾になれば盾になる。しかし、水に濡れてしまうと、その力が弱まってしまうのだ。


「イタッチの折り紙は水に弱いんです。手をつけてもらえば、折り紙で作った皮膚なのかを判断できます」


「そういうことか。分かった。水を用意して兵士を調べていこう」


 ゲンゴロウはネコ刑事とコン刑事のアドバイスを聞き入れることにして、コップに入れた水で兵士を調べることにした。


 美術館の休憩室にある紙コップをもらい、そこに水を入れて兵士の元へ向かう。

 ヤゴ、アメンボ、ウシガエル、メダカと次々と確認していき、ザリガニの元へ辿り着く。


 ザリガニはこの部隊の中では若手であり、狙撃の腕と判断力を評価されて入隊した人物だ。三人はコップを彼の前に突き出して、水に手をつけるように指示を出す。


 ザリガニは少し戸惑った後、深いため息を吐き、


「やれやれ、今回は簡単に侵入できると思ったんだけどな」


 ザリガニは三人から距離を取るように後ろに飛ぶ。

 この瞬間、ザリガニの違和感に気づいたネコ刑事は離れたザリガニにコップを投げる。水が溢れて、ザリガニの顔にかかると顔の半分が溶けて中身が露わになった。


「イタッチ!!」


 ザリガニの顔の中からイタッチの顔が現れる。これ以上の変装は意味がないと判断したイタッチは、ザリガニの変装を解いて姿を現した。


「まさか、ネコ刑事とコン刑事が来てたとはな。驚いたぜ!!」


 変装していたイタッチが姿を見せて、三人は構える。


「現れたぞ、イタッチだ!!」








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