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第67話 『カケココロを手に入れろ!』

参上! 怪盗イタッチ




第67話

『カケココロを手に入れろ!』




「いたぞ! イタッチとダッチだ!!」


 美術館内を警備している警官が声を上げる。その声に反応して、次々と警官が駆け寄る。警官達がBフロアに向かう中、その中の警官が一緒に走る警官に尋ねる。


「ワニ巡査長!! どうしますか?」


「近くにいる警官を集めて包囲せよ。囮作戦だとしても、お宝の前にはフクロウ警部殿がいる。我々はコイツらを絶対に逃さないようにしろ!!」


「はい!!」


 ワニ巡査長の指示に従い、警官達がBフロアへ向かう。二つの通路とBフロアの出口を封鎖して、イタッチとダッチをBフロアの一階にある展示室に追い詰めた。


「よし、イタッチ、ダッチ、観念するんだな!!」


 展示室に集まった警官が袋の鼠になったイタッチ達へとにじり寄る。


「ふ、俺達を捕まえるって?」


 ダッチは刀を抜いて戦う意志を示す。ダッチが刀を抜くと、警官達は警戒した様子で近づく足が止まる。


「ワニ巡査長……」


「くっ、展示室での発砲は禁止されている……。使えるのは警棒だけか」


 ワニ巡査長は警棒を手に取り、仲間達を押し退けて前に出る。


「俺が最初に行く。俺が気をひいてる間にお前達は囲んで捕まえろ」


 ワニ巡査長は覚悟を決めて、ダッチに立ち向かおうとする。ワニ巡査長が警棒を高く振り上げて、ダッチに向けて振り下ろす。

 しかし、ダッチは刀で警棒を切り、武器のなくなったワニ巡査長を蹴り飛ばした。


「ぐっ!?」


 ワニ巡査長は蹴られたことで後ろに三回ほど転がる。


「大丈夫ですか!? ワニ巡査長!!」


「ああ、大丈夫だ。しかし、やはり強いな……。偽物かもと疑っていたが、本物だな……」


 ワニ巡査長は仲間に支えられて立ち上がる。


「俺一人じゃ、惹きつけることもできないか……」


 ワニ巡査長が悔しそうにする中、他の応援が駆けつける。


「なら、俺も手伝おう」


「カラス巡査長か……。よし、二人ならば……」


 新しくカラス巡査長も駆けつけて、ワニ巡査長とカラス巡査長は正面からダッチに立ち向かおうとする。

 しかし、次の瞬間、突如として展示室の仕掛けが動き出した。


 現在彼らのいる展示室。そこはギアスターと呼ばれる美術品の展示されている部屋だ。部屋の奥の壁にはギアスターが展示されており、四角形の部屋のようだが、部屋自体は一本道になっているのだ。

 部屋の左右の床はギアで作られた仕掛けになっており、警官達の足場が回転し始めた。


「なっ!? なに!?」


 ギアが回転し始めたことで警官達は焦って、とにかく倒れたり挟まれないように注意する。

 そして数秒経ち、警官達が慣れてきた時。彼らは気づいた。


「ダッチが消えて、イタッチだけになってる……!?」


 そして警官達はあることを想像する。ダッチはギアに挟まれて、壁の奥でぺちゃんこになってしまったのではないだろうかと。


「ワニ巡査長、ダッチが!?」


「ああ、イタッチを逮捕したら、解放してやろう。今は目の前のイタッチを相手にする」



 ⭐︎⭐︎⭐︎



「フクロウ警部、それは?」


 カケココロのある展示室を警備している三人の警官。イタッチが現れたという情報を聞いたフクロウ警部は、バッグの中からあるものを取り出していた。

 それは瓶に入れられた黄色い液体。


「まさかそれって……お酢っすか?」


 コン刑事が言うと、フクロウ警部は首を縦に振る。


「ふふふ、そうさ。これはイタッチの弱点だからな」


 フクロウ警部はそう言ってニヤリと笑う。その様子を見て、ネコ刑事は思い出した。


「そうか、そうでしたね!」


 イタッチには弱点がある。その一つがこのお酢だ。イタッチはお酢の匂いが苦手で、近くにあるだけで力が入らなくなってしまう。


 しかし、コン刑事はお酢を見てうーんと傾げる。


「でも、ダッチがいたら、ダッチには効きませんよね」


「まぁ、そうなんだがな」


 フクロウ警部がお酢の蓋を開けようとした時。展示室の入り口から声が聞こえてきた。


「やれやれ、ソイツを撒くのはやめてほしいな」


 三人が入り口の方を見ると、そこにはイタッチがいた。


「来たか。イタッチ!!」


「ああ、カケココロを頂きに来たぜ」


 フクロウ警部はニヤリと笑う。


「っとなると、無線で連絡のあった方は偽物か。まぁ、ダッチは本物なんだろうな」


 偽物のみで行動させているとは考えにくい。となると、Bフロアに現れたのは、本物のダッチと偽物のイタッチだ。

 そしてそうなると、イタッチはここに一人で来たということになる。


「よぉし、ネコ刑事、天月刑事、イタッチを囲め。お酢を開けてイタッチを弱らせてから逮捕だ」


 ネコ刑事とコン刑事が左右からイタッチを囲う。そしてフクロウ警部がお酢の蓋を開けようとする。

 しかし、


「そうはさせないぜ!」


 展示室の奥にある通気口が開き、中からダッチが飛び出してくる。そして背後からフクロウ警部に飛びかかって、フクロウ警部からお酢を飛び上げた。


「なに!? ダッチが通気口からだと!? しかし、ダッチはBフロアにいるはず……」


 お酢を回収したダッチは、コートの中にお酢を隠す。

 フクロウ警部が驚く中、ダッチはなぜここに現れたのか、説明を始めた。


「それはギアスターの展示室から抜けてきたからさ」


「あそこから……。しかし、警備員達がいるはずだ。どうやって!?」


「ギアの隙間を通って下にある通気口を通ってきたのさ」


 ギアスターのある展示室にはギアの仕掛けがある。回転しているギアだが、展示室の下には隙間があり、通気口が隠れていたのだ。

 ダッチはギアの隙間を通り抜けて、展示室の下にある空間へ移動。そこから通気口を通ってここまで来たのだ。


「俺が囮になったフリをして、イタッチが一人で現れたと油断させる。それが相棒の作戦さ」


 ダッチは説明を終えると刀を抜く。イタッチもマントの裏から折り紙を取り出した。


「グヌヌヌ……。しかし、まだ我々の方が数では上だ!! ネコ刑事、天月刑事、協力して、イタッチを逮捕するぞ!!」


「「はい!!」」


 ネコ刑事とコン刑事、そしてフクロウ警部は二人を捕まえようとする。

 しかし、イタッチは折り紙を折り、鎖を作るとそれを投げつけて三人を縛りつけた。


「「「ぐげ!?」」」


 イタッチを捕まえようとしていた三人だが、逆に捕まってしまった。


「アタシ達が捕まっちゃったっすよ!?」


「イタッチ、貴様ぁ!!!!」


 三人が悔しそうに鎖を外そうとするが、三人をまとめて包んでいる鎖がなかなか外せない。

 そんな中、イタッチとダッチはカケココロの前に立つ。


「これがお宝か……。カケココロ、頂いたぜ」


 イタッチはお宝を手に入れると、マントの中へと隠す。

 このままでは逃げられてしまうと考えたフクロウ警部は、


「クソ、このままではお宝が盗まれる。ネコ刑事、天月刑事、すまん!! こうなったら、あれをやる」


 フクロウ警部は顔を赤くしながら、お尻に力を入れる。


「何をする気っすか!?」


「警部、まさか!?」


 ネコ刑事とコン刑事が怯える中、フクロウ警部は特大のオナラをした。


「「くっさぁぁぁっ!?」」


 フクロウ警部のガスは上昇していくと、火災報知器が反応。展示室内のスプリンクラーが反応して、部屋に雨が降った。


「水……相棒!?」


「ああ、やられたな……」


 イタッチとダッチがフクロウ警部達の方を見ると、フクロウ警部達を捕らえていた鎖が解けており、三人は扉の前に立ち、出口を塞いでいた。


「俺の折り紙は水に弱い……。濡れれば、折り紙の効果は弱まるからな」


 イタッチの使う折り紙。それは特殊な折り紙であり、様々なものへと変化することができる。

 しかし、そんな不思議な折り紙にも弱点がある。それが水だ。


「水が出てる間は俺の折り紙は使えない。そういうことだ」


 イタッチは全身を濡らしながら、やれやれとダッチの後ろに移動する。


「ダッチ、任せたぜ」


「ああ、相棒。ここは俺の出番だな」


 イタッチを後ろにダッチが前に出る。そして刀を構えると、


「っ!?」


 ダッチはフクロウ警部達の足場を刀で切った。すると、三人のいる床が抜けて、三人は一つ下の階へと落ちていく。


「「「穴っ!?」」」


「じゃあな!」


 フクロウ警部達はダッチの作った穴に落ちて、イタッチ達の前から消えた。


「よし、行こうぜ。相棒」



 ⭐︎⭐︎⭐︎



 カケココロを手に入れたイタッチとダッチは美術館の屋上に立つ。下を見下ろすと、野次馬やマスコミが美術館を囲っていた。


「相棒、いつもよりも観客が多くないか?」


 ダッチが尋ねると、イタッチは折り紙を折りながら答える。


「マンデリンのことがあるからな。みんな気になってるんだ」


 イタッチは折っていた折り紙を完成させると、空に広げる。

 イタッチが作ったのは巨大な紙飛行機だ。イタッチとダッチは紙飛行機に乗ると、空を飛んで美術館を脱出した。







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