第66話 『怪盗vs警察』
参上! 怪盗イタッチ
第66話
『怪盗vs警察』
ヤワルナー美術館に集まった警官達。彼らはフクロウ警部の指示の元、それぞれの持ち場で待機していた。
「警部! コーヒー買ってきました!」
フクロウ警部とコン刑事がカケココロのある展示室でお宝を見張る中、外からネコ刑事が戻ってくる。ネコ刑事の両手には缶コーヒーが握られており、それを二人に渡す。
「ありがとう、ネコ刑事」
「サンキューっす。ネコ先輩」
例を言った二人だが、缶コーヒーを受け取った後、すぐには飲まずにネコ刑事を囲む。
「なんですか……二人とも?」
ネコ刑事はジリジリと近づいてくる二人に怯えて後退る。
「イタッチが変装している可能性があるから」
「本物の先輩か、確認させてもらうっすよ」
二人は一斉に飛びかかり、ネコ刑事を捕獲する。そしてネコ刑事の頬を引っ張った。
「痛ててて〜、僕は本物ですよ〜」
頬を引っ張られて痛がるネコ刑事。折り紙で作られた顔じゃないことを確認して、二人はホッと肩を下ろした。
「本物の先輩みたいっすね」
「よく無事に戻ってきてくれた。ネコ刑事」
そんな二人を見てネコ刑事はむーっと頬を膨らませると、
「もしかしたら二人も偽物かもしれないですよね」
そう言って両手をワキワキさせる。
「お、おい。俺は本物だぞ……」
「そ、そうっすよ。アタシも本物っすよ……」
頬を引っ張られるのを警戒した二人は本物だと主張する。しかし、ネコ刑事は二人に襲いかかった。
「こうした方が確実です!!」
「「ふぎゃぁぁぁぁっ!!!!」」
二人が本物であることも確認して、三人は展示室の警備に戻る。
今回イタッチが狙っているお宝はカケココロ。このヤワルナー美術館にあるお宝の一つだ。
30センチ程度の彫刻であり、大昔にとある国の王族が彫り師に造らせたと言われている。昔はもう少し大きな形をしていたが、時代につれて小さくなっていき、王国が滅んだときにはヒビが入ったという伝承もある。
国が滅んだ後は他の国で保管されていたが、国が揺らぐたびに倒れるなど、予知のようなこともあったと言われる。
そんなカケココロをイタッチは手に入れると予告した。フクロウ警部は三人で囲むようにお宝の周りで立つ。
「警部、僕達はここで守りを固める感じでいいんですか? 他のところの指示をしに行くとかは?」
ネコ刑事が尋ねると、フクロウ警部は腕を組んで答える。
「それなら問題ない。警備員を置いている場所には指示が出来る優秀な警官を配備してる。トンボ巡査やワニ巡査長、カラス巡査長達ならうまく警備してくれるだろう」
「そんな方々が……。では、僕達はここの守りですか」
「そういうことだ。ここまでイタッチ達が侵入してきたら俺達で捕まえる。下手に人数を増やせば、利用される可能性もあるからな」
イタッチは特殊な折り紙を持っている。それは折ったものの効果を得ることができるという特殊な折り紙である。剣を作れば剣になり、盾を作れば盾になる。それがイタッチの持つ折り紙だ。
フクロウ警部が警戒しているのは、イタッチが仲間に変装して侵入してくることだ。折り紙で警官の顔を作り、それを被ることで警官に変装することができる。
その変装は完璧なものであり、見抜くことは困難だ。だからこそ、最後の砦である展示室は必要最低限であり、最大の戦力で守ることにしたのだ。
三人がイタッチが現れるのを待っていると、無線の連絡を聞いていたネコ刑事が二人に伝える。
「フクロウ警部、天月警部。イタッチが現れました!!」
「「っ!!」」
⭐︎⭐︎⭐︎
とある街にある三階建ての建物。一階には喫茶店があり、その上は住居スペースになっている。
そしてその建物の二階に三匹の動物が集まっていた。
「んで、今回の作戦はどうすんだ?」
テーブルを囲み座る三匹の動物の中の一匹であるウサギのダッチが、隣に座るイタッチに尋ねる。
「今回の作戦はシンプルな方法で行こうと思う」
イタッチが答えると、ダッチは首を傾げる。
「シンプルな方法?」
そんなダッチに説明するため、アンはパソコンの画面をダッチに見せる。
「これが美術館の地図です。大きく分けてAフロアとBフロアに分かれているのが特徴です」
「うむ、そうだな。まるで二つに割ったお菓子みたいな…………」
「ダッチさん、真面目にやってください」
「…………すまん」
アンが見せた地図では、二つのフロアに分かれていた。AフロアとBフロアという形で分かれており、そのフロア同士を繋ぐ通路は二つしかない。
イタッチは腕を組むと、
「ダッチにはカケココロの展示室のないBフロアで騒ぎを起こしてもらう。警備員がBフロアに集まったところで、手薄になったお宝を手に入れる」
「俺は餌かよ……。まぁ分かったよ。派手に暴れれば良いんだな」
「そういうことだ」
「しかしよ……」
説明を聞いたダッチだが、何か問題がある様子。
「なんだ?」
イタッチが尋ねると、ダッチはサングラスをクイっと上げてから答える。
「フクロウの野郎は引っかかるか? アイツはお前のやりそうな手は覚えてやがるぞ」
「ああ、分かってるさ。だから、もう一つ、作戦を用意する……」