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第64話 『焦り』

参上! 怪盗イタッチ




第64話

『焦り』




 マンデリンの放送があったが、その前に予告状を出していたイタッチ達は予告状通りにお宝を盗みに行くことになった。


 向かったのはヤワルナー美術館。そこにあるカケココロという彫刻が今回狙うお宝だ。

 カケココロは30センチ程度の彫刻であり、歴史的な価値のあるものだ。


 ヤワルナー美術館の館長であるワラサ館長はフクロウ警部達とイタッチの対策を行なっていた。


「この部屋にはこの扉の他に出入り口はあるんですか?」


 フクロウ警部はカケココロの展示室に入り、ワラサ館長に質問をする。その質問にワラサ館長は首を横に振って、


「いえ、ここだけです。それにこの部屋は建物の中心。窓もないですし、壁も分厚いので他からの侵入は不可能です」


「そうですか。ありがとうございます」


 フクロウ警部は礼を言うと、展示室の中を探索し始める。


 この展示室はカケココロ用に作られた特別な展示室であり、他のものは展示されていない。イタッチに利用されそうなものがないと判断したフクロウ警部。


「では、ここでイタッチを迎え撃つことにしましょう」


「ここで……ですか!? まずは美術館に侵入されないようにするとか、そういうことは……」


「それもしっかり行います。しかし、イタッチとその仲間ならば、他の場所に戦力を注いでも簡単に突破するでしょう」


 フクロウ警部は近くにあったパンフレットを取って、地図を広げて皆に見せる。


「まず、外からの侵入ですが、ここはビルに囲まれており、どのように警備を配置しても穴ができてしまう。それに美術館は正面玄関の他にも従業員の使う入り口と美術館を入れる入り口が複数あり、そこの守りも手薄になりやすいです」


 フクロウ警部は次に展示室までの通路を指で指す。


「次にここまでの経路ですが、これも複数あるため侵入者の経路が多いです。それに通路が狭いところもあるため、追いかけているときにそこを使われると厄介です」


「そうなんですか」


 フクロウ警部の言葉にワラサ館長はふむふむと頷く。


「そのため戦力を注ぐのはこの展示室です。当日は私とネコ刑事と天月刑事の全勢力を配備して、残りの場所は必要最低限の戦力でカバーします」


「分かりました。フクロウ警部、よろしくお願いします」


「はい。お任せください」


 当日の警備について解説したフクロウ警部。それを聞いたワラサ館長だが、まだ不安があるようで、言い出しづらそうにソワソワしている。


「どうしたんですか? ワラサ館長」


「いえ、なんと言いますか……。マンデリンの放送…………あれが気になっていまして…………」


「マンデリンの放送ですか」



 マンデリン。彼はモカという人物の兄である。


 モカは昔、イタッチの仲間であるアンを利用していた人物であり、イタッチとも対峙したことがある。

 イタッチに負けたモカの敵討ちのために、マンデリンはモカの敗北に間接的に関わった人物に復讐をしていた。そしてついにイタッチ達を狙い出したのである。


 マンデリンはスマホやパソコン、テレビを使い、全世界に放送を行った。そしてその中でイタッチ討伐というゲームを提案したのである。

 もしも一ヶ月以内にイタッチを討伐できなければ、日本を沈没させる。そのような脅しを伝えて。



 不安そうなワラサ館長にフクロウ警部は肩をポンと叩く。


「今、我々の仲間が全力でマンデリンを追っています。それに今回、イタッチを逮捕できれば、イタッチからマンデリンのことも聞き出せるでしょう」


 フクロウ警部は帽子を深く被り、ワラサ館長に敬礼をする。


「市民を守るのが我々の勤めです。ご安心ください。何があってもお守りします!」





 ⭐︎⭐︎⭐︎



 とある高級ホテル。そこに数名の男女の動物が集まっていた。彼らは各々が自由に寛いでいる。一人は片手にワインを持ちながら優雅に窓を眺めていたり、また一人は床に大の字に寝転がり、また別の人物は天井にぶら下がって武器を磨いている。


「民衆の動きはどうだ?」


 ソファーに座り、片手に本を持ったヤギが近くにでパソコンを操作しているカエルに聞く。


「ケケケぇぇ、動揺はしているようだが、まだ焦りが足りねぇなぁ」


「焦りか……。まぁ、恐怖は煽ったが、まだ現実味がないんだろうな」


「そうだぜぇ。ケケケケェェ、どうすんだい、マンデリン」


 カエルが首を傾げると、マンデリンは本に栞を挟んで閉じる。そして机の上に置いて、


「そうだな。とはいえまずは……。イタッチ達の勇姿を見ようじゃないか」


 マンデリンは部屋に取り付けられたテレビを声をかける。


「テレビをつけてくれ」


 マンデリンの声を反応して、自動でテレビが映る。テレビではまだイタッチの予告の時間まで余裕があるというのに、イタッチのニュースが放映されていた。


 しかし、ニュースもいつもとは違う。マンデリンのことも報道し、いつも以上に世間は盛り上がっている。

 そして美術館の周囲の映像が映し出されると、野次馬の姿を見てマンデリンはニヤリと笑う。


「ククク……焦りは足りないか。そうだな、もうひと押し…………だな」







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