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第63話 『動き出したゲーム』

参上! 怪盗イタッチ




第63話

『動き出したゲーム』



「やぁ、日本の諸君、ワタシはマンデリンだ」


 スマートフォンやパソコンの画面が勝手に動き出し、映し出されたのはコートを着たヤギの姿。

 ヤギは深く頭を下げて挨拶をした。そして顔を上げると、不気味な笑みをカメラに向ける。


「これより皆さんには強制参加のゲームに参加してもらいます。その名も怪盗イタッチ一味の討伐ゲームです」


 ヤギは笑みを浮かべながら拍手をする。狭い部屋での撮影なのか、拍手の音は反射して響く。


「イタッチと国民の皆さんが戦う。それだけのゲーム、簡単でしょ? もしもイタッチの仲間を一人でも討伐できれば、一億円を差し上げます。しかし、期間以内に討伐できなければ……」


 ヤギがパチリと指を鳴らす。すると、それと同時に日本全域で大きな地震が起きた。


 そして再び指を鳴らすと、地震が止まる。


「もしも、その時は日本が沈没する。そのことを覚えておいてください。そして期間ですが、今日、この時間から1ヶ月が期限とさせていただきます。それでは皆さんの活躍を期待しております」


 マンデリンが喋り終えると、画面が元の状態に戻る。ダッチがポカーンとホーム画面を眺めている中、アンはパソコンをネットに繋ぐ。

 そして今の映像について調べ始めた。


「イタチさん、ダッチさん……。今の映像、私達だけじゃないです」


 調べ終えたアンはパソコンの画面を二人に見せる。そこにはSNSでマンデリンの放送を見たという書き込みが大量に書かれている。


「大規模なハッキング行為……。マンデリンは今の映像を日本全国に流したみたいです」


 アンがパソコンを使い、調べたことを二人に伝える。そのことを聞き、ダッチは大きく口を開ける。


「おいおい、嘘だろ!? じゃあ、俺達は日本中の人から狙われるってことかよ!?」


 映像では、イタッチ一味の討伐ゲームを行うと言っていた。一ヶ月以内に成功できなければ、日本を沈没させるとも。

 イタチは腕を組んで考え込む。


「さっきの映像が日本全国で流されたっていうならそうだろうな。それに狙ってくるのは日本国民だけじゃない」


「どういうことだよ。相棒」


「一つの国が滅ぶ。それが世界に与える影響は絶大だ。日本が沈没して困る国もこの件に参入してくる。それにだ」


「それに?」


 イタチはテーブルにあった揺れて倒れた置物を立て直す。


「マンデリンがやってみせた地震。あれがどういう原理かは分からないが、もしもあれで日本を沈没させるつもりならば、周辺国……いや、それだけじゃない!! 世界中の港で被害が出る」


「世界中で被害が…………」


 イタチは拳を握りしめる。


「今回は大きな戦いになりそうだ」




 ⭐︎⭐︎⭐︎




 警視庁の三階にある一室。そこの扉にはイタッチ対策特別課と書かれた紙が貼られている。

 部屋には五つの事務用の机がギッチリと詰められて入っており、現在のその部屋は三人の警官が使っている。


「警部、どうですか?」


 ネコ刑事が電話を終えて受話器を置いたフクロウ警部に尋ねる。


「今回はいつも通り、我々で行うことになった」


 フクロウ警部の言葉を聞き、コン刑事は立ち上がる。


「上はどういう判断なんすか? マンデリンの放送」


 フクロウ警部は机に置いてあるコップを持ち上げて、中に入っているオレンジジュースを一口飲む。そしてそれから答えた。


「テロ……として考えているようだ。とはいえ、イタッチとの関係性も考慮しつつ、それでもテロに屈するのではなく、対抗する意味でイタッチではなく、政府はマンデリンを直接狙うつもりらしい」


「マンデリンを直接っすか!? そんなことできるんすか!?」


「さぁな。とはいえ、イタッチを討伐するよりもマンデリンを逮捕する方が簡単だと、政府は考えたんだろう」


 フクロウ警部はコップを置いて立ち上がる。


「とにかくだ。俺達はマンデリンのことは忘れて、イタッチ逮捕を全力で目指すぞ! 逮捕できれば、イタッチからマンデリンの情報を聞き出せるかもしれないからな!!」


「「はい!!」」




 ⭐︎⭐︎⭐︎



 マンデリンの放送の影響はまだ少なかった。地震という脅威を見せつけられたが、まだ国民の誰もが、他人事だと考えていたからだ。

 政府が、警察が……。誰かがマンデリンをどうにかしてくれる。そうして、皆の記憶には残ったが、皆普段通りに過ごすことになる。




 マンデリンの放送が行われる前にすでにイタッチは予告状を出していた。

 ヤワルナー美術館にあるカケココロという彫刻を盗むというものだ。


 ヤワルナー美術館にフクロウ警部達が到着すると、美術館の館長である鰤であるワラサという人物が出迎える。


「へいへぃ、よく来てくれました。フクロウ警部殿」


「これはこれはワラサ館長、出迎えありがとうございます」


 フクロウ警部は帽子を取って深くお辞儀をする。ワラサ館長はニコリと笑う。


「今回はカケココロが狙われましてな。あれはうちの中でも特別な品、必ずやイタッチから守ってください」


「はい。お任せください。イタッチからカケココロを守り、さらには逮捕してみせます!」







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