第59話 『華の怪盗登場?』
参上! 怪盗イタッチ
第59話
『華の怪盗登場?』
CMが終わり、サワガニのニュースキャスターは新しく渡されたニュースについて読み上げる。
「速報です。旗山島美術館にて展示されていたゴールデンパイナップルが盗まれたとのことです。犯人は────」
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警視庁にあるとある部屋。
「警部!! 警部!!!!」
ネコ刑事が勢いよく扉を開けて、部屋に入ってくる。
「どうしたんだ? ネコ刑事」
「これを見てください!! イタッチから予告状が届きましたよ!!」
ネコ刑事は警視庁に届けられた予告状をフクロウ警部に見せる。フクロウ警部は予告状を受け取ると、内容を確認した。
「アラクネ美術館の『マネーツリーの苗』を盗む……か」
フクロウ警部は予告状を机に置き、腕を組んで背もたれに寄りかかる。
「どうしたんです? フクロウ警部……。いつもならすぐに動いて対策会議を始めるのに……」
フクロウ警部の様子に疑問を持ったネコ刑事が尋ねる。フクロウ警部は直角に首を傾げて考える。
「俺の勘が言っている……これはイタッチの予告状じゃない…………」
「何言ってるんですか、イタッチって書いてありますよ」
「どうにも引っかかる。ネコ刑事、コン刑事を連れて現場に向かってくれ」
「フクロウ警部はどうするんです?」
「俺はこの違和感について考える……。この謎が解けなければ、足元をすくわれる気がするからな」
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時間は経過して予告のあった時間。アラクネ美術館の屋上に黒いフードを着た人物が現れた。
「ハーナハナハナハナ。怪盗イタッチ、参上……」
暗闇の中に現れたフードの人物を、美術館を囲んでいたパトカーのライトが照らす。
ネコ刑事はフードの人物に叫ぶ。
「怪盗イタッチ!! 今回はこのネコ刑事が相手をしてやる!! 僕が君を逮捕してやるぞ!!」
さらにネコ刑事の後ろにいたコン刑事も両手を上げて叫ぶ。
「アタシもいるっすよ!! 捕まえてやるっす!!」
ネコ刑事とコン刑事がフードの人物に向けて叫ぶと、フードの人物はクスクスと笑い始める。
「ハナハナハナ……この怪盗イタッチを捕まえると!?」
フードの人物がフードを脱ぐと、赤いマントを羽織ったイタチが姿を現した。イタッチは美術館の前にいるネコ刑事達を指差す。
「君達ではこのワタシを捕まえることは不可能だ!! 見せてやろう、この怪盗イタッチのテクニックを!!」
イタッチは美術館の屋根から飛び降りる。落下しながら、空中で3回転して綺麗に着地する。その様子を見ていたテレビ局や野次馬達は思わず拍手をしてしまう。
「ハナハナハナ!! さぁ、来るが良い、警官殿……君達を返り討ちにしてあげよう!!」
イタッチは挑発する。イタッチの挑発にコン刑事は歯をキリキリとさせると、
「突撃っすよ!! イタッチを逮捕してやるっす!!」
コン刑事は部下を連れて、イタッチに突撃した。
コン刑事達がイタッチに向かう中、ネコ刑事はイタッチの言動に違和感を感じる。
「いつもと……何か違う…………。天月刑事、待つんだ!!」
ネコ刑事はコン刑事に止まるように呼びかける。しかし、すでに彼女達は止まることはできず、イタッチに飛びかかっていた。
「逮捕っす!!」
コン刑事を先頭にイタッチにのしかかろうとする。だが、イタッチはマントの裏から一枚の薔薇を取り出した。
「ハナハナ、オリガミ……マジック!!」
イタッチが薔薇を一振りすると、薔薇は変形してレイピアへと姿を変えた。
「ローズソード」
イタッチは薔薇のレイピアを襲いかかる警官達に振る。薔薇の顔をと共にレイピアは警官を一撃で切り倒した。
「つ、強いっす……」
コン刑事は警官達と共に地面に倒れた。
「天月刑事!!」
ネコ刑事はコン刑事の元へと駆け寄る。気を失っているが、ダメージは少ないようだ。
「よくも天月刑事!!」
ネコ刑事はコン刑事を他の警官に任せる。ネコ刑事がイタッチの方を見ると、イタッチは美術館に向かって走っていた。
「待て!! イタッチ!!」
ネコ刑事はイタッチを追いかける。イタッチが美術館に侵入して、ネコ刑事もイタッチを追いかける形で美術館に入った。
普段なら閉館時間の美術館だが、今回は予告状があったため、全フロア明かりをつけて、さらに多くの警備員を配備している。
ネコ刑事は美術館の警備員と合流しようとしたが、警備員はすでに倒されており、壁に寄りかかって眠っていた。
「イタッチにやられたのか……。お宝の元へ急がなくては!!」
ネコ刑事は急いでお宝の展示されているフロアへと向かう。
そしてお宝の展示されている展示室のへ辿り着いたのだが……。
「な、なんでここにテレビ局の人達が!?」
本来美術館に入ることが許されていない、カメラマンやリポーターが展示室に入り込んでいた。
そしてそのその人達からカメラを向けられているイタッチが笑う。
「ハナハナハナ……。彼らを呼んだのはこの怪盗イタッチさ……」
「警備を混乱させるためか!?」
「いいや違う……」
イタッチは薔薇を加えて、片足を台の上に乗せて格好をつける。
「この私の活躍を全世界へ見せつけるためさ」