第27話 『レボリューションスター』
参上! 怪盗イタッチ
第27話
『レボリューションスター』
麗音は手にしたショットガンでイタッチを撃つ。イタッチの身体に大きな穴が空き、イタッチはその場に崩れ落ちた。
フクロウ警部はやられたイタッチを見て、目を丸くする。
しかし、麗音はイタッチを撃ち倒しても冷静だ。
「ふ、偽物か……」
麗音は倒れたイタッチを見て、唾を吐く。そしてキョロキョロと周囲を見回した。
「ッチ。やられたな……」
マネキン兵の戦場を見て、麗音は舌打ちをする。戦闘で戦闘不能のマネキンが出れば、マネキンの数が減るはず。しかし、マネキンの数が増えていた。
「どうやったか知らんが、怪盗の小技か……くだらん」
麗音は近くにいた火炎放射器を持つマネキンを撃ち倒す。そして火炎放射器を奪い取った。
「偽物も本物も全て殲滅すれば、問題ないわ」
麗音は近くにいたマネキンから燃やしていく。マネキンを倒すことに集中し始めた麗音に、フクロウ警部は銃口を向ける。
「今なら当たるか……いや、防がれるだろうな」
フクロウ警部は拳銃を捨てて、コートを脱ぎ捨てた。そして自身のほっぺたを強く叩いて気合を入れてから、麗音に向かって走り出した。
「銃を捨てて突進か……。このまま燃やしてやる!!」
向かってくるフクロウ警部に向けて、麗音は火炎放射器で炎を噴射した。フクロウ警部の身体は燃えるが、それでも止まらずに突撃して、麗音に飛びかかった。
全身に火傷を負いながらも、フクロウ警部は麗音に覆い被さる。押し倒されるようになった麗音は、フクロウ警部に潰されて身動きが取れなくなった。
「なに……」
「はぁはぁ、麗音、貴様を逮捕……だぁぁぁっ!!!!」
フクロウ警部は麗音の手に手錠をはめる。これで麗音も観念するかと思われたが、麗音は火傷で弱ったフクロウ警部を投げ飛ばす。
そして素早く後ろに下がって、中央の柱のヒビの中に手錠ごと手を突っ込んだ。
「ここまで追い詰められるとは。お前達も成長したようだな」
麗音はヒビの中に隠されたレバーを下げる。すると、マネキン達の動きが止まり、部屋が揺れ始める。
「何をする気だ……」
投げ飛ばされたフクロウ警部だが、怪我はなく、すぐに立ち上がる。
マネキンに隠れていたイタッチも、姿を見せてフクロウ警部に並んだ。
「どうやらここからが本番らしいな」
イタッチの言葉を聞き、麗音はニヤリと笑い頷く。
「その通り……」
部屋の中央付近の床が動き出し、麗音、フクロウ警部、イタッチの入る足場が沈み始める。
床は緩やかに降っていき、次々と下の階へと降りていく。
「どこに向かっているんだ」
フクロウ警部が麗音に尋ねると、麗音はヒビから腕を出して答える。
「地下3階さ」
「地下3階……」
地下3階。警視庁のデータから存在は分かっていたが、ルートが不明だった階層だ。どうやら最上階からのみ行くことが可能らしい。そして──
「待ってたぜ。そこにレボリューションスターがある」
イタッチは嬉しそうに拳を握る。フクロウ警部は大きく口を開いた。
「なんだと!?」
レボリューションスター。それは今回イタッチの狙うお宝。そのお宝がこれから向かう地下3階に隠されていた。
麗音は動揺することはなく、舌打ちをする。
「知っていたか。まぁいい、お前の狙うお宝がこれから貴様らを倒すんだからな」
三人の足場が地下3階へと到着する。そこは広い柱すらない、コンクリートに囲まれた空間。
そんな空間の中央にガラスケースに入れられたお宝が置かれていた
麗音は手錠をつけられたまま、ガラスケースを開けてお宝を取り出す。そしてお宝を自身の胸に当てた。
「さぁ、俺の力となれ、レボリューションスター!!!!」
レボリューションスターは神々しい光を放ちながら、麗音の体内へと入り込み、一体化する。レボリューションスターを取り込んだことで、麗音の身体は変化する。
肉体は膨張し、牙は鋭くなる。目玉は剥き出しになり、爪は刀のように長くなった。
「さぁここからが本番だァ」
麗音が爪で手錠を擦ると、手錠はあっさりと壊れてしまう。
怪物へと姿を変えた麗音は、咆哮と共にイタッチ達に襲いかかってきた。鋭い爪を振り上げて、フクロウ警部を目掛けて振り下ろす。
「串刺しだァ!!」
だが、寸前のところでイタッチが折り紙の盾を作り、フクロウ警部を守った。
「あ、危なかった〜。助かったぞ、イタッチ」
「礼はいい。散るぞ」
盾をその場に置き、イタッチとフクロウ警部は左右に分かれて走る。麗音の左右を走る二人だが、目玉の飛び出した麗音からは真横にいる二人の姿がはっきりと見えていた。
「元の姿に戻して、罪をしっかり償え!」
フクロウ警部は走りながら、拳銃で麗音のことを撃つ。しかし、弾丸は麗音に当たる前に、半透明なバリアにぶつかり止まってしまう。
それでもフクロウ警部は弾丸を撃ち続ける。その影響で麗音は先にフクロウ警部に狙いを定めて、身体をフクロウ警部の方へと向ける。
だが、イタッチはそれを狙っていた。
「背中を見せたな!!」
イタッチに背中を見せると同時に、イタッチは折り紙の剣を作り、麗音に切り掛かる。だが、剣は当たることはなく、宙を斬る。
「なに!?」
麗音のいた場所には麗音の姿はなく、最初にイタッチ達がいた位置に麗音は移動していた。
「テレポートしたのか」
遠くから見ていたフクロウ警部が呟く。その言葉に麗音は頷いた。
「レボリューションスターと同化した今の俺は、空間を自在に操ることがでいる。空間を歪めて弾丸を防ぐことも、空間に穴を開けてテレポートすることも可能だァ」
麗音はテレポートを繰り返し、的を絞らせないように移動を続ける。
テレポートを続ける麗音を、フクロウ警部は狙うことができず、銃口を下げた。
「イタッチ!! 何か対処法はないのか!!」
そして隣にいるイタッチに聞く。イタッチは少し考えた後、折り紙の剣を構える。
「ないな……。だが、倒す手段はある!!」
イタッチはテレポートを続ける麗音に切り掛かる。イタッチが剣を振り下ろすと同時に、麗音はテレポートでイタッチから逃げた。
だが、それを予測していたイタッチは、剣を右斜め前方へと投げる。すると、そこにちょうど麗音がテレポートして現れて、麗音の肩に剣が刺さった。
「ば、バカなァ、俺が攻撃を受けただと……」
「テレポートするって分かってるんだ。移動位置を予測すれば、攻撃は当たる」
「そんなこと……!?」
麗音が汗を流す中、フクロウ警部は納得したようで銃口を上げる。そして麗音に向けて発砲。
麗音はテレポートするが、フクロウ警部はすかさずに銃口を別のところに向けて発砲する。
すると、麗音がテレポートした位置から1メートルほどズレた位置を弾丸が通過した。
フクロウ警部は帽子を深く被る。そして悔しそうに呟く。
「そう上手くいかないか……」
悔しそうにしているフクロウ警部に、イタッチはニヤリと微笑む。
「いいや、いい線言ってたぜ」
「次こそは当てるさ」
お宝を取り込み、人の力を超えたというのにそれを対応してくる二人。そんな二人を前に麗音は冷たい汗を流す。
滴る汗を見て、イタッチは新しい折り紙で剣を作ると、剣先を麗音に向けた。
「お前は戦場で鍛えたんだろうが、俺達はお互いに鍛えあってるのさ、追うものと、追われるものとしてな」
麗音は肩に刺さった剣を抜くと、地面に叩きつけた。そしてイタッチとフクロウ警部を睨みつける。
「戦場こそ神聖。戦地こそ聖地。俺は戦の神になる、お前達になど負けてたまるものかァァァァァ!!!!」