第26話 『英雄の居場所』
参上! 怪盗イタッチ
第26話
『英雄の居場所』
戦争で戦果を上げた麗音であったが、平和な世の中では彼は犯罪者とされ、迫害されることとなる。
国外へ逃げた麗音は上官であった老兵と共に身を守るための組織を作った。『武装集団ジャスミン』、それが全ての始まりであった。
追ってくる兵士達と戦闘を繰り広げながら、組織を拡大化させていき、人が増えていく中でジャスミンには目標が生まれ始めた。それこそが『戦争で居場所の無くした動物達の居場所を作ること』。彼らはその目標を達成するため、自分達の存在を世界に知らしめ始めた。
演説を得意とするスーラー。仲間からの信頼の厚いノボル。計画のために手段を選ばない麗音。彼らの力が一つに集まったことで、犠牲を出しながらも、組織は大きく成長した。
だが、そんなある時、ジャスミンに一枚の予告状が届いた。それはイタッチと名乗る怪盗からの予告状であり、ジャスミンの所有するブルーコアを盗むというものであった。
ブルーコアはエネルギーを無限に生成できる宝石。それを使い、戦果を上げていたジャスミンにとって、イタッチの予告は警戒すべきものであった。
そして予告にあった日。イタッチが現れる。数々の戦場で鍛え上げられた兵士達を倒し、ついにブルーコアの元へと辿り着いた。
ブルーコアを最後に守るのは麗音。
だが、ブルーコアの前で待っていた麗音は、目の前の光景に動揺する。
現れたのはイタッチだけではない。フクロウの警官とジャスミンの一部兵士。そしてノボルの姿であった。
ここまで一緒に戦ってきたノボルがなぜ、イタッチと共にいるのか……。の疑問はノボルの言葉によって伝えられた。
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ジャスミンからレボリューションスターを盗むため、ジャスミンの拠点に侵入したイタッチ。道中でフクロウ警部と合流して、麗音と向かい合っていた。
「俺達は目的のために、憎むべき戦争を起こしている……か。あの時、あの言葉を聞いて、背筋がゾッとしたよ」
麗音は手に持つ銃を擦る。
「だが、同時に確信もした。これが俺の求めていた世界だと……。戦争の英雄は戦争の中でしか生きられない。だから、戦争を起こす」
麗音は銃口をイタッチに向ける。
「お前が煽ったんだろう。ノボルを……こんなやり方は間違ってるとか言って…………」
イタッチは銃口を向けられているというのに、腕を組み余裕の表情だ。
「彼は最初から分かっていたさ。君を説得しようとしていた、だが、話を聞かなかったのは君だ」
麗音は銃口を下す。そして胸ポケットからリモコンを取り出した。リモコンにはアンテナと赤いボタンが一つついている。
「お前達を倒し、俺は世界中に戦争の火種をばら撒く」
麗音がリモコンのスイッチを押すと、部屋のあらゆる天井から、マネキンが降りてくる。そのマネキンは天井から糸で吊られており、関節部分の形から動くようになっている。
全てのマネキンの手には銃が握られており、兵士らしい低い姿勢で銃を構えていた。
「この部屋には50体のマネキン兵を用意した……だが、安心しろ。マネキン兵は俺の部下じゃない、中立の関係だ……」
麗音がもう一度ボタンを押すと、マネキン兵が動き出す。50体のマネキンは二つのチームに分かれて、実弾を撃ちながら戦闘を始めた。
「仮想戦場。それが俺とお前達との戦闘の場だ。敵でも味方でもないマネキンが戦争を繰り広がる中で、俺達は戦うのさ!!」
麗音はそう言い残して、マネキン兵の中に紛れる。50体ものマネキンが銃を撃つ中だ、この中では流れ弾にも注意しなければならない。
フクロウ警部は拳銃を構えると、隣に立つイタッチに呼びかける。
「イタッチ、ここは協力をしよう。奴を逮捕してから、貴様を逮捕する」
イタッチは折り紙の剣を構えて、フクロウ警部に返事をする。
「ああ、そうしようか」
イタッチとフクロウ警部はお互いの武器を構えたまま、左右へ分かれる。イタッチは右のマネキン達に紛れ、フクロウ警部は左のマネキン達に紛れる。
マネキン兵はイタッチ達のいる方が赤い帽子を被った赤マネキンチームで、麗音のいる方が青い帽子の被った青マネキンチームになって戦っている。
中央にあるヒビの入った柱が境界線となっており、どちらのチームも攻めきれずにいるといった感じだ。
マネキンに紛れる中、フクロウ警部の真横を弾丸が通過する。流れ弾を避けるため、マネキンの奥に隠れていたフクロウ警部だったが、ここまで弾丸がやってきたということは、撃ってきたのは一人しかいない。
弾丸の飛んできた方向を見ると、そこには麗音がいた。麗音はニヤリと笑い、
「俺はどんな戦場であれ、敵を見失わない。だが、お前達はどうかなァ!!」
麗音はフクロウ警部に弾丸を放つ。フクロウ警部も弾丸を避けながら、牽制で銃を撃つ。
お互いに銃を撃ちながら、移動してマネキン兵の中に紛れた。
「また隠れたか……」
フクロウ警部はマネキン兵の中から麗音を見つけ出そうとする。しかし、麗音は姿は全く見つけられない。
「どこに……」
フクロウ警部が探す中、今度はフクロウ警部の羽を弾丸が掠れる。弾丸の飛んできた方向を見ると、麗音がいた。
「言ったろ。俺は見失わないって」
マネキン兵達は激しく動き、流れ弾にも注意しないといけない状況だ。こんな中で特定の敵を見つけ出すのは困難だ。
フクロウ警部が銃を構えて、麗音を狙おうとすると、麗音はまたしてもマネキン兵の中に隠れようとする。
しかし、今度は上手くいかなかった。
麗音が隠れようとしたマネキン兵の一体が、折り紙の剣を手にして襲いかかってきた。
麗音は銃を横にして剣を防いだが、銃は真っ二つに切られてしまった。
「くっ、マネキン兵に化けていたか」
マネキン兵の1体が顔についた折り紙を剥がして、正体を表す。マネキンの正体は怪盗イタッチだった。
「お前が得意な戦場なのは分かったが、こういう乱戦は俺も得意だ」
「この泥棒が……」
麗音は素早く後ろに下がって、イタッチから距離を取る。そして壊れた銃をしてて、戦闘でやられたマネキンの横に落ちているショットガンを拾う。
「だが、ここは戦場。武器はいくらでも手に入る」
麗音は手にしたショットガンでイタッチを撃つ。イタッチの身体に大きな穴が空き、イタッチはその場に崩れ落ちた。
フクロウ警部はやられたイタッチを見て、目を丸くする。
しかし、麗音はイタッチを撃ち倒しても冷静だ。