表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/102

第25話 『革命の演説』

参上! 怪盗イタッチ




第25話

『革命の演説』




 全ては一人の男から始まった。


 男の名は麗音(レオン)。戦時中の国に生まれた彼にとっては、戦争こそが日常であった。

 武器を手にして、戦果を上げ、彼は戦争の中でのし上がっていった。だが、ある日戦争が終わった。

 祖国であった国は勝利はしたものの、平和な日々がやってくれば、かつての英雄は犯罪者へと変わった。


 数々の戦場で名を残した彼は、上官であった老兵に連れられて国外逃亡。その後、亡命を繰り返しながら、同じような仲間を集めていった。

 そうしてジャスミンは結成された。




 ⭐︎⭐︎⭐︎




「警部、エレベーターを動かします!」


 無線でネコ刑事の声を聞いたフクロウ警部は、エレベーターに乗り込む。

 エレベーターが動き出すと、フクロウ警部は帽子を深く被った。


「良くやった。ネコ刑事、コン刑事……後は俺に任せろ」


 エレベーターが21階に到着する。

 ここから上の階に行くためには、フロアの反対側まで行く必要がある。そのため、21階、22階、23階を順番に進み、やっと目的地の24階に辿り着く。

 フクロウ警部がエレベーターから降りると、そこは赤い絨毯に、壁には西洋風の模様が描かれた豪華な廊下だった。20階以下とは明らかに作り込みが違う。


 さらに壁には一定間隔に額縁が飾られており、麗音の写真が飾られていた。


「よっぽど自分が好きみたいだな」


 フクロウ警部は廊下を歩き出す。廊下は四角形のドーナツ型であり、二つの路に分かれている。フクロウ警部は左を選んで進んでいき、反対側にある何事もなく、エレベーターの見える位置に辿り着いた。このままエレベーターに乗れれば良いのだが、エレベーターの前にフードを被った動物が立ち塞がっている。

 どうやらジャスミンの一員のようだ。フードの動物はフクロウ警部に気づくと、フクロウ警部に身体を向ける。


「コソ泥を待っとんたんじゃが……刑事さんが来よったか」


 フードの動物はそう言いながら、フードを脱ぎ捨てる。フードの中から現れたのは雄馬。片足がなく、杖をついている。

 フクロウ警部は彼の顔を見て、資料のことを思い出した。


「ジャスミンの構成員の一人、クボサか……」


「ほぉ、よく調べておられるな。刑事さん」


 クボサ。ジャスミンの構成員の一人だ。海外での逃走で、足を怪我している。


「君も指名手配されている。捕まってもらうぞ」


 フクロウ警部は手錠を取り出して、クボサと向き合う。クボサはやれやれと首を振ると、ポケットの中からハンドガンを取り出した。


「ワシも歳をとった。このままここにいても、麗音に消される運命だろう。だが、ここまで来てしまったからにはやるしかない時もある」


 クボサはフクロウ警部に銃口を向ける。


「恨むならワシを恨め、刑事さん……」


 銃声と共に弾丸が発射される。火薬の匂いが廊下に広がり、弾丸がフクロウ警部に接触しそうになった時。

 弾丸はフクロウ警部の前で弾かれた。弾丸を防いだのは一本の刀。


「よぉ、フクロウ」


 弾丸からフクロウ警部を守ったのは、ダッチであった。


「ダッチか。俺を守ったつもりか?」


「まぁな、アンタがやられちゃ、イタッチも張り合いがなさそうなんでな」


「ふん……。あのくらい避けられたわい。っと、お前がいるということはイタッチも来てるんだな」


 フクロウ警部の言葉にダッチはニヤリと笑うと、


「ああ、もうすでに上の階にいるぜ」


「そうか。先にお前を捕まえても良いが、イタッチを優先するとしよう。それからテロリストもダッチ、君も逮捕だ」


「やれるものならやってみな」


 ダッチは刀をクボサの方へ向ける。


「相棒が捕まればの話だがな。俺は相棒にお前を通すように言われてここに残った。先に行きな、フクロウ」


「言われなくてもそうするさ」


 フクロウ警部はクボサの守るエレベーターへと走る。クボサはハンドガンでフクロウ警部を遠ざけようとするが、ダッチが妨害をしてきた。

 ダッチが刀を持って向かってきたため、クボサはダッチに銃口を向ける。クボサが発砲し、ダッチが刀で防いでいる間に、フクロウ警部はエレベーターに乗って、上の階へと登っていった。


「邪魔はさせない」


「やるな、若ウサギ」


 クボサとダッチは睨み合う。膠着した状態が続くかと思われたが、クボサは銃口を下げる。


「刑事さんにもコソ泥にも逃げられた……わしがもっと働ければ、何か変わっていただろうか」




 ⭐︎⭐︎⭐︎




 22階には犬の兵隊が倒れていた。どうやら先に到着したイタッチが倒したものらしい。

 フクロウ警部は犬の兵隊達の上を通り、エレベーターに乗り込んで23階へと上がった。


 23階はまたしても部屋の雰囲気が変わる。そこは辺り一面が水槽に囲まれたフロアであり、水槽の中では幾多もの魚が泳いでいた。

 そしてそんな青い部屋の奥には、倒れている青い豚とその横で剣を握るイタッチがいた。


「イタッチ!!」


「フクロウ警部か、遅かったな」


 フクロウ警部はイタッチの元へと駆け寄る。そして倒れている豚の顔を確認した。


「コイツはジャスミンの幹部の一人、スーラーか」


 スーラー。麗音に仕える部下の一人で、演説を得意としている。彼の演説により、ジャスミンに所属した者も多く、ジャスミンがここまで大きくなったのは彼の功績ともいえよう。

 フクロウ警部は倒れているスーラーに手錠をはめる。


「スーラーは全国指名手配犯だ。イタッチ、今捕まれば、スーラー逮捕の協力ってことで刑を軽くしてやっても良いぜ」


 目を細めてニヤリとイタッチを睨むフクロウ警部。イタッチは折り紙の剣を元の折り紙に戻すと、奥にあるエレベーターへも歩き出した。


「刑が軽くなろうがどうだろうが、俺が捕まるかよ」


「ま、だろうな」


 フクロウ警部はイタッチの後ろを歩く。本来ならこのまま後ろから飛びついて、捕まえたいところだが我慢をする。


「俺を捕まえなくて良いのか?」


「まずは麗音だ。お前達が潰しあってくれれば良かったんだがな。早く着きすぎちまった」


「ふ……予定通りだろう」


 イタッチとフクロウ警部はエレベーターに乗り込んで、24階へと登った。

 エレベーターが止まり、扉が開くとそこは荒れた廃墟のビルのような内装になっていた。

 実際に荒れているわけではない、デザインでそのような見た目にしているのだ。

 ヒビの入った剥き出しのコンクリートの柱、釘の抜けた壁、壊れた扉。そんな部屋の奥に赤い豚が立っていた。

 組織のトップとは思えない貧相な服装。タンクトップにバンダナを巻き、前線で戦う兵士のような格好をしていた。


「来てくれたようだな。怪盗イタッチ、フクロウ警部……」


 豚が二人の姿を見て、嬉しそうに微笑む。そんな豚の様子を見て、イタッチは呟く。


「変わってないな」


 彼こそが麗音。テロリスト集団のジャスミンのリーダーであり、各国から指名手配されている凶悪犯だ。

 イタッチとフクロウ警部は並んで、麗音と向かい合った。麗音は二人を見ながら、イタッチに言葉を返す。


「いや、変わったさ。もう4年も経った」


 麗音とイタッチ、フクロウ警部が出会うのは初めてではない。

 麗音は懐かしむように、バンダナを取り、目の前で広げる。バンダナをつけていた頭部には、酷い火傷の痕がある。


「君達二人が俺の仲間を奪った。あの時のことを俺は決して忘れはしない」


 麗音は二人を鋭い目つきで睨む。そんな麗音をイタッチは睨み返した。


「逆恨みはやめろ。お前は見限られたんだ」


「お前達二人が現れなければ、そうはならなかった……」


 麗音は背負っていたライフルを取り出す。


「お前達のせいで俺の計画は出遅れた……。だが、ついに計画は目前まで迫った。だからここでお前達に復讐をし、計画の終わりの祝いとしよう」






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ