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第14話 『アイスキング様』

参上! 怪盗イタッチ




第14話

『アイスキング様』





 アイスキングは氷を滑りながら、イタッチへと接近する。杖の先端に氷柱をつけて、イタッチを串刺しにするつもりだ。

 イタッチは折り紙で剣を作ると、向かってくるアイスキングの杖を剣で弾いた。




 しかし、スピードで威力を上げていたアイスキングの攻撃を防ぎ切ることはできず、イタッチの頬を氷柱が掠る。




「ッ……」




 さらに剣で弾いたが、イタッチの身体は後ろに数センチ飛ばされた。




「上手く避けたな」




 攻撃が避けられ、アイスキングはフフフと笑う。




「なら、これでどうかな!!」




 アイスキングは杖を振り回し、イタッチを襲う。左右上下、あらゆる方向からイタッチを氷柱で切り裂こうとする。

 イタッチは折り紙の剣でどうにか攻撃を防ぎ続けるが、剣に起こっている異変に気づく。




「……氷柱が、溶けてきている!?」




 アイスキングの扱う氷柱が溶けて、水分を帯びてきていた。氷柱を水が伝って、イタッチの剣と触れ合う。

 イタッチの折り紙は折ったものの特性を折り紙に付与することができる特殊な折り紙。しかし、弱点があった。




 どんな形に変化させようとも、水には弱いのだ。




 水分を帯びた氷柱に触れたことで、イタッチの剣はシナシナになってしまう。そしてついに折れてしまった。




「……くっ」




「よくここまで耐えた。だが、それが貴様の武器の限界だ!!」





 アイスキングは氷柱でイタッチを突き刺そうとする。イタッチは折れた剣で防ごうとするが、折れた剣では受け止めることができず、できたのは少しずらすことだけ。




「ぐっ!?」




 氷柱がイタッチに突き刺さる。





「イタッチさん!!」




 ネージュがイタッチの名前を叫ぶ。

 イタッチの腹には氷柱が刺さり、背中まで貫通している。




「フフフ、俺の勝ちだ」




 アイスキングは杖を振ってイタッチを氷柱から放つ。氷柱の抜けたイタッチは、床を滑って地面に伏した。




「イタッチさん! 大丈夫ですか!!」




 ネージュが倒れたイタッチに駆け寄ろうとするが、ネージュの前にアイスキングが立ち塞がる。




「ネージュ……」




「兄上……。退いてください!!」




「ふ、ネージュ。前もそうだったな、お前一人では何もできない、ラビオンを頼っていたな」




 アイスキングはネージュに近づくと、ネージュの首を掴む。首を絞めながら、片手でネージュを持ち上げる。




「俺はお前とは違う。どんな手を使おうとも、一人になろうとも、俺は目的を達成する!!」




「あ……兄……う、え…………」




 アイスキングはネージュを玉座の奥へと投げ飛ばす。投げ飛ばされたネージュは転がって、玉座の裏にある通路の前で倒れる。




「兄上、もう……」




「…………ネージュ。……そうだな、気が変わった。俺一人で世界を氷漬けにしようと考えていたが、お前を利用しよう、そうすれば、すぐにでも世界を凍らせられる」




 アイスキングは杖についた氷柱を溶かして、ネージュに向かって歩き出す。倒れたネージュの前に立つと、ネージュのことを抱えた。




「どんなものでも利用する。それがアイスキングだ……。フハハハハ、もうすぐだ、すぐに我が氷の国が復活する!!」










 アイスキングはネージュの頭を鷲掴みにして、引きずって城の屋上を目指した。氷の城の屋上は雲よりも高く、広い空間がある。

 この城を作った時に、世界を氷漬けにするための舞台としてこの屋上を制作した。




「懐かしいな……。国が滅んだ時も、こうして城の屋上から見下ろしていた……。そして再び始まるのだ、この天から……」




 引きずったネージュを放り投げて、アイスキングは手にした杖を眺める。




「神を討伐して得たこの杖……。この力と我々兄弟の力があれば…………」




 アイスキングが思い出に浸っていると、




「それか……。相棒の狙っていた、お宝はよ……」




 雪降る屋上。そこに二人の人影があった。いや、正確には三人だ。




「……ポーラ」




 三人目の人影。それは倒れている白熊の姿であった。その後ろには長い耳の動物と、小さな動物の影。




「お前達……泥棒の仲間か……」




 コートを羽織ったウサギと、フード付きのパーカーを来た子猫がそこにはいた。

 ウサギはニヤリと笑うと、腰につけた刀を抜く。




「ああ、俺はイタッチの相棒、ダッチだ」




「そしてお二人のサポーターのアンです!」




「おい、アイス野郎……。そこで倒れている俺達の仲間を返してもらうぜ」




 ダッチは刀を握りしめて、アイスキングに切り掛かった。

 アイスキングは杖を横にして、刀を防ぐ。二人の武器がぶつかり合い、擦れることで火花が散る。




「……泥棒の仲間か……。ならば、お前もアイツと同じようにやっつけてやろう」




 アイスキングは杖を冷気で包む。そして杖の先端に氷柱を生成した。鋭い氷柱が杖の先端に飾られて、槍のような武器となる。

 そんな杖をアイスキングは手元でクルクルと回転させる。




「ネージュの生贄にする前に、先に君達を倒すとしよう!!」




「相棒はやられねぇよ。だが、ここは俺がお前をぶった斬ってやる」




 ダッチは刀を握りしめて、アイスキングへと走り出す。真っ直ぐ直線で目標へと向かう。アイスキングは杖を構えて、ダッチを迎え撃つ姿勢になる。




「っ!!」




 ダッチとアイスキングはお互いの武器を振り、ぶつけ合う。ダッチの刀とアイスキングの杖、二人の武器が擦れ合うことで火花が散る。




「アイス野郎、やるなッ! だが、世界一の怪盗イタッチの相棒だ、こんなもんじゃねぇぜ!!」




 ダッチは気合いでアイスキングの杖を弾く。




「なっ!?」




 杖を弾かれたアイスキングは、身体の姿勢を崩した。そんなアイスキングにダッチは追撃を加える。

 まずは蹴りでアイスキングの足を払い、刀の持ち手の部分でアイスキングを殴り飛ばした。




「ぐっ……」




 アイスキングは後ろにヨロヨロと退がる。アイスキングが後退した隙に、ダッチは倒れていたネージュを抱えると、アンのいるところまで一回のジャンプで飛んで戻った。




「ネージュ、大丈夫か?」




「ラビオン……」




「じゃねぇよ。ダッチだ」




「ダッチ……さん…………」




 抱えられたネージュは目を開ける。しかし、まだ意識は朦朧としている様子だ。




「アン、任せていいか?」




「はい!!」




 ダッチはネージュをアンに託す。ネージュをアンに任せて、手の空いたダッチは、垂れる鼻水を腕で拭う。

 そんなダッチの様子を見て、アイスキングはニヤリと笑う。




「どうやら体調が悪いようだな」




「こんくらいどうってことねぇよ……」




 ダッチは強がってみせるが、屋上の温度はマイナスであり、そんなところで戦闘をすることになったダッチは、体力を激しく消耗していた。




 ──長期戦は厳しいか。早く、決着をつけねぇとな──




 ダッチは刀を両手で握りしめて、アイスキングに向かって走り出す。アイスキングに近づくと、刀を振り下ろすが、その攻撃はアイスキングに防がれた。




「ふ、どうやら本当に体調が悪いらしい。攻撃のキレがなくなっているぞ」




「……ッチ。そんなら、数を打つだけだァッ!」




 ダッチは一撃でダメならば、何度も刀を打ちつける。何度も刀を振り上げて、アイスキングの杖に向けて刀をぶつける。

 一撃での攻撃能力は下がっていたが、何度も同じところを攻撃されたことで、




「コイツ……」




 アイスキングはガードをやめて、一旦後ろに下がった。ダッチは無理に追いかけることはせず、刀を構え直す。




「おいおい、逃げてるじゃぁねーか」




「まさか、このアイスキングを退かせるとはな。だが、それが貴様の運命を決めることとなったぞ」




 アイスキングは杖の先についていた氷柱を溶かして水に戻す。そしてまた吹雪を起こして、今度は杖の先端に刃を作った。

 氷柱よりも鋭く、透明で美しい氷。光を反射して、光って見える。




「この刃で貴様の身体を真っ二つにしてやろう」




 アイスキングはダッチに切り掛かった。








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