第116話 『ナイフ使いのヨウ』
参上! 怪盗イタッチ
第116話
『ナイフ使いのヨウ』
仲間達と分断させられたイタッチ達。イタッチはネコ刑事と共に植物の生い茂る部屋へとやってきた。
そこではマンデリン親衛隊を名乗るヨウという人物が待ち伏せていた。
「行くぜ、怪盗イタッチ!!」
ヨウはナイフを片手で構えたまま、イタッチに向かって走り出す。イタッチはマントの裏から折り紙を取り出すと、折り紙の剣を作り、迎え打つ姿勢になった。
剣を構えるイタッチを見て、ヨウは笑いながら走る。
「剣対ナイフか。本来なら俺のほうが不利だろうな……」
二人の距離が近づき、リーチの長いイタッチの方が先に射程距離になる。イタッチは剣を振って近づいてくるヨウを切り付けようとするが、ヨウは突如方向転換して後ろに下がることで剣を躱した。
「ビビったか?」
「いいや、俺はナイフ使いの軍人さ。正面から戦うはずがないだろ?」
避けたヨウは近くの草むらへと飛び込んで身を隠す。イタッチはヨウを追撃しようと追いかけたが、すぐにヨウの姿を見失ってしまった。
「隠れた……奇襲を狙うつもりか」
イタッチは植物に囲まれた部屋の真ん中で周囲を警戒する。そうしていると、どこからかヨウの声が聞こえてくる。
「ククク、当然さ。俺達はゲリラ部隊出身のエリートさ。マンデリン様にスカウトされたもの、その実力を認められたからさ」
声の位置からはヨウの居場所が特定できない。どこから攻撃してくるかわからない中、イタッチは動けずにいた。
「今の一撃で君の実力は測れた。確かに強い、だが、それは表の世界での話だ。俺達のような裏の人間からすれば、君の実力は中の下と言ったところさ……」
「俺を舐めてくれるじゃないか。なら、姿を見せろよ。俺を恐れているから隠れてるんだろ?」
「戦闘力だけなら隠したでも、君は自分よりも格上の相手を何度も倒している。だから確実性を重んじる俺は、こういう戦い方をする……ククク」
ヨウを軽快するイタッチ。しかし、何かを感じ取ったのか、突然走り出す。
向かった先は眠っているネコ刑事のところ。走って向かったイタッチは飛びつくようにネコ刑事に覆い被さった。
「ぐっ……」
ネコ刑事を守るように覆い被さったイタッチの背中にナイフが刺さる。
「ククク、危なかったな、ギリギリだったぞ」
イタッチの背後にはいつの間にかヨウが立っており、イタッチの背中にナイフを突き立てていた。
ヨウはナイフを抜くと、再びナイフを振り下ろそうとする。しかし、イタッチは歯を食いしばりながらも剣を振って反撃する。
イタッチの反撃に気づいたヨウはナイフを振るのをやめて、後ろに飛ぶことでイタッチの攻撃を避けた。
「よく守ったな……」
「はぁはぁ、やってくれるじゃないか……」
イタッチの背中の傷から出た血で、赤いマントが濁る。出血は派手だが、傷は深くはなさそうだ。しかし、長期戦になるのは危険な様子。
イタッチのダメージを見て、ヨウは不気味な笑みを浮かべる。
「ククク、卑怯とは言わないよな?」
「言うかよ。俺だって……」
イタッチは右手を突き出して前に出す。手を握っており、その手には何かが入っている様子だ。
「なんだ? ……まさか!?」
イタッチが手を開くと、そこには鍵があった。
「怪盗らしく盗ませてもらったからな」
「馬鹿な!? 俺と戦いながら鍵を盗むなど……」
ヨウは動揺して鍵をしまっていたはずの服の内側の胸ポケットに手を伸ばす。すると、ポケットに手を入れて気がついた。
「なぁ!? 鍵が……あるぅ!?」
ヨウが鍵を見つけて顔を見上げた時、イタッチはすでに目の前にいた。
「鍵を盗まれたと思ったか? あれは折り紙で作った偽物の鍵だ」
「き、貴様!?」
ヨウは焦って急いでポケットから手を出そうとする。しかし、焦っていることと服の内側のポケットということもあり、手が引っかかってしまって抜けない。
イタッチは動揺しているヨウに向けて、剣を振り下ろした。
「やめ……」
ヨウは残った手に持ったナイフを使って、イタッチの攻撃を受け止めようとする。しかし、ナイフと剣では耐久性が違う。
イタッチの剣はヨウのナイフを真っ二つに切断し、さらにはヨウの身体を切りつけた。
「ぐ……は!?」
剣で切られたヨウはナイフを落として、ふらふらと左右に身体を揺らす。
「マンデリン様……」
「手加減はしたが、あまり動くな、傷が広がるぞ」
イタッチは息を荒げるヨウに告げる。しかし、ヨウは落としたナイフを拾い上げて、白目を剥きながら構えた。
「マンデリン様のために……我々が負けるものかァァァァァ!!!!」
ヨウはふらついた体に鞭を打って、イタッチに攻撃を仕掛ける。しかし、ダメージからヨウの動きは単調なものになっており、イタッチは攻撃を躱した後、剣の持っている部分でヨウの首の後ろを叩く。
今まで受けていたダメージと、今回の攻撃でヨウは気を失い、崩れるように寝転がった。
「執念は凄いよ。でもな、俺達もそれだけの覚悟と執念を持ってきてるんだ。……ここは通らせてもらうぜ」




