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参上! 怪盗イタッチ  作者: ピラフドリア


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第114話 『空中アスレチック』

参上! 怪盗イタッチ




第114話

『空中アスレチック』




 コン刑事が扉を開けると、そこは室外であった。


 扉の先は足場はなく、ただの外に通じている扉のように感じられる。しかし、ここにいるメンバーはこれが本当にAフロアとBフロアを繋ぐ通路であるとすぐに気づく。

 扉から先、20メートル先にも同じように扉があり、その扉がBフロアへの扉なのだろう。

 そして普通の足場はない。普通の足場はないのだ。しかし、扉と扉を繋ぐようにアスレチックが用意されている。


 公園などにある子供向けの簡単なアスレチックだ。1メートルの正方形の足場をジャンプして通過したり、縄を捕まって先へと行ったり、壁に引っ付いたりとそういう遊具が並んでいる。

 しかし、ただのアスレチックではないのは一目でわかる。公園ならば、ジャンプでミスして落ちてしまっても1メートルくらいの高さだろう。だが、ここははるか上空なのだ。


 雲よりも高い空の上。もしも落ちれば、人としての形を保つことはできないだろう。


「このアスレチックを使ってBフロアへ向かってことですか……」


 アンは目の前の光景にため息を吐く。


「アジトないにこんなおもちゃを作るなんて、マンデリンさんは何がしたいんですか……」


 最年少のアンから見てもマンデリンのやっていることはくだらなく見えるようだ。

 危険なアスレチックではあるが、内容自体は子供向けと変わらない。運動不足のアンでも余裕と言った感じだ。


 しかし、一人……


「はわわわわわ…………」


 震える少女がいた。


「こんなの……嘘っすよね…………はは……はははは…………」


「コン刑事が壊れた……」


 絶望の表情を浮かべて、コン刑事は膝をつく。


「あはははは〜、たかいたかーい、たかいっすぅ…………ははは〜」


 Bフロアに行くためにはここを通らなければならないという恐怖で、コン刑事は完全に心が折れる。

 その様子を見て、フクロウ警部はコン刑事の肩を摩る。


「大丈夫だ。俺もついている、頑張っていこう!」


 どうにかコン刑事を勇気付けようとフクロウ警部は声をかける。しかし、コン刑事は涙目になってフクロウ警部の足にまとわりつく。


「無理っすぅ、怖いっすぅ!!!!」


「天月刑事……」


 フクロウ警部は助けを求める目でイタッチのことを見る。イタッチは頭を掻きながらため息を吐いた。


「しょうがないなぁ、折り紙の節約もしないといけないから、軽くだぞ」


 イタッチはマントから折り紙を取り出すとロープを作る。そしてそれをAフロアに扉のドアノブにひっかけ、ロープの反対側をBフロアのドライブに投げて引っ掛けた。


「このロープにしっかり捕まりながら行けば大丈夫だ」


「無理っすよ!! 下見るだけで怖いんすよ!! なんでロープなんすか、もっと怖くない方法にしてくださいっす!!」


 コン刑事は文句を言うが、イタッチとダッチ、アンの三人はそのロープを捕まりながら、アスレチックを進み出した。


「う……うう…………無視っすか……」


「天月刑事……俺もすぐそばにいる。ゆっくりでも良いから頑張ってくれ……」


「…………っすぅ……」


 コン刑事は涙目になって、身体を震わせながらも先に進むことを決心する。


 上空であるための恐怖はあるが、アスレチックの難易度は低く、問題なく進めている。しかし、コン刑事は先に行かせられたら良いが、フクロウ警部はその後ろで少し足を止めていた。


 コン刑事が進んでいく姿にホッとしているが、フクロウ警部はそのコン刑事の後ろをついていく足が進まない。

 そしてフクロウ警部が進めずにいることに最初に気がついたのはイタッチだった。


「……やれやれ、フクロウのやつ……」


 イタッチはアスレチックを進みながら、フクロウ警部に叫ぶ。


「ネコ刑事を背負いながらだと大変だろ? 俺が代わってやろうか?」


 イタッチはフクロウ警部は少し揶揄うように言ってみる。


「バカを言うな! ネコ刑事は俺の部下だ。部下を守るのが上司の勤めだ!!」


 フクロウ警部はネコ刑事を背負いながら、アスレチックを進み始めた。


 これでイタッチ、ダッチ、アン、コン刑事、フクロウ警部、ネコ刑事の全員がアスレチックを開始した。

 最初にイタッチが到着し、ダッチとアンもアスレチックを難なくクリアする。残るはコン刑事とフクロウ警部、ネコ刑事の三人となった時、事件が起きた。


「ひぃぃ〜、風怖いっす!!!!」


 強風が吹いてアスレチックが揺れる。コン刑事は足場に乗った状態で身を縮めて風を耐える。しかし、フクロウ警部はタイミングが悪かった。


 ジャンプした瞬間に強風が吹いたことで、足場の位置がズレてしまう。


「しまったぁ!?」


 フクロウ警部はネコ刑事を背負ったまま、足場への着地を失敗して落下していく。


「え……フクロウ警部!!!!」


 縮こまりながらもコン刑事が手を伸ばして叫ぶ。しかし、コン刑事の手は届かない。


「このままだと落ちる……。せめてネコ刑事だけは!!」


 フクロウ警部は背負っていたネコ刑事を、空中で力一杯投げる。投げられたネコ刑事はコン刑事のいる足場の隣に倒れ込み、どうにか落下を逃れた。

 しかし、フクロウ警部はネコ刑事を救うことはできたが落下していく。


 鳥類であるフクロウ警部だが、体型の影響で飛ぶことができない。そのためこの高さから落下すれば助からない。


「コン刑事、ネコ刑事、後は任せた……」


 フクロウ警部は敬礼をしながら落ちていく。


「フクロウ警部!!!!」


 落下していくフクロウ警部を見ながら、コン刑事は自身の無力さを悔いる。







 ──ああ、イタッチ。結局お前を逮捕できなかったか──







 フクロウ警部が目を瞑り諦めた時、何かがフクロウ警部の腕に絡みつく。目を開けて確認すると、それは折り紙で作った鎖だった。


「これは……まさか、イタッチ…………」


「お前がいないと張り合いがなくなるからな。こんなところで終わってもらっちゃ困るんだよ」


 落下していたフクロウ警部に、イタッチは折り紙で鎖を作りそれを投げて絡ませることで落下を防いだ。


「引っ張り上げるの手伝ってくれ」


「はい!」


「おう!」


 ダッチとアンも鎖を握って、フクロウ警部を引っ張り上げる。落ちかけていたフクロウ警部の救出にどうにか成功した。


「た、助かった……。ありがとな…………イタッチ」


「礼はいいさ」


 フクロウ警部を引っ張り上げ終えた頃、コン刑事もネコ刑事を連れて、どうにかBフロアの入り口に辿り着いた。

 これで全員がアスレチックを突破した。


「さぁ、マンデリン。ついにここまできたぜ」


 イタッチ達はマンデリンの待つ、Bフロアへと突入した。








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