第111話 『イタッチとアン』
参上! 怪盗イタッチ
第111話
『イタッチとアン』
エリーは右手の砲台をイタッチに向ける。
「この距離だ。折り紙で小細工はできないだろう……」
砲台から光線が放たれて、イタッチの身体を包み込む。
「イタッチさん!!」
アンの悲鳴が響く中、光線はイタッチの身体を突き抜けて、奥にある壁に激突。飛行船の壁に大きな穴を開けた。
「……これで終わったな…………」
光線を撃ち終えたエリーの砲台からは、モクモクと白い煙が流れ出る。
「イタッチ……さん…………」
光により眩んだ目が元に戻り、アンは目の前の光景を見る。
「ほぉ、耐えたか……」
光線の通った先には火傷を全身に負ったイタッチが、息を切らしながら立っていた。
「イタッチさん!!!!」
アンが心配して叫ぶ中、イタッチはふらりと身体を揺らしながらもアンに微笑む。
「だい、じょうぶだ…………」
イタッチのダメージと様子を見て、エリーは顎に手を当てながら、イタッチがどうやって耐えたのかを考える。
「ふむ、光線を受けながら折り紙で盾を作って途中から防いだのか……。とはいえ、途中で盾は破壊されて、最初と最後に光線を受けた……。耐えたとはいえ、かなりのダメージを受けたと見えるな」
「へへ……もっと褒めてくれても良いんじゃないか?」
「一発耐えただけだろ……。もう一撃を耐える余力はないはずだ!!」
エリーは左手の方台をイタッチに向ける。右手の砲台のリロードが終わるまではまだかかる。しかし、今のイタッチを倒すだけならば、左手だけでも十分かもしれない。
「サヨナラだ。怪盗イタッチ……」
エリーはイタッチに向けて光線を発射する。しかし、イタッチは後方へとジャンプして光線を避けた。
「こんなところで終わるかよ!!」
身体の痛みを歯を食いしばりながら耐え、イタッチは光線を躱した。しかし、エリーの放った光線は軌道を曲げて、避けたイタッチを追撃する。
「そう避けるのは分かっていたよ」
「この……」
イタッチは折り紙で剣を作り、向かってくる光線を弾き切る。しかし、切ったはずの光線であったが、完璧に切ることができなかったのか、少し残ってイタッチの肩を撃ち抜く。
「ぐぅっ……」
肩に穴が空き、イタッチはダメージから剣を落としかける。しかし、踏ん張って落としそうになった剣を握り直す。
「はぁはぁ、まずはなんとか近づいて……」
イタッチはここまでの戦闘でエリーの弱点に気づいていた。しかし、エリーはその弱点を隠して、攻撃されないようにしている。
エリーの装甲を突破するためには、その弱点を攻撃する隙を作るしかない。
「もう近づくことはできない。君の体力は限界のはずだ……」
エリーは右手の砲台のリロードが終わったのか、砲台の先をイタッチに向ける。
「今度こそ、消し炭になるといい……」
エリーは砲台から光線を放とうとする。しかし、
「やめてください!!」
エリーの砲台に小石が当たる。
「こ、ここからは私が相手です!!」
エリーは砲台に小石が当たったことで、光線を撃つのを止める。そして小石が飛んできた方向に顔を向けた。
そこにいたのは身体を震わせながらも、エリーを睨むアンの姿だった。
「小娘が……私の邪魔をするか…………」
エリーはアンに向けて右手の砲台を向ける。
「先に君を消し炭にしてあげようか…………」
「や、やれるものならやると良いです!! でも、私もイタッチさん達の仲間です。そんな弱々ビームなんかに負けません!!!!」
恐怖を押し殺して、アンは強気でエリーに叫ぶ。エリーのアンの強がりには気づいているだろうが、その言葉に反応した。
「弱々……私の…………科学の結晶を愚弄するか…………」
エリーは最初は脅しのつもりで、本当はアンに向けて撃つつもりはなかったのだろう。しかし、その単語に反応して、エリーの表情が変わった。
エリーは鋭く冷たい目でアンを睨み返すと、砲台を向ける手をもう片方の腕で固定して狙いを定める。
「私の身体は人類の希望……。科学の力こそが世界を救うのだ!!!!」
エリーは右手の砲台から光線を放出する。アンは避けることすらできずに、その光線が向かってくるのを震えながら待っていた。
──時間は稼ぎました。後はお願いします──
──イタッチさん──
光線が向かってくるなら、光線と並んで人影がアンの元へと駆け寄ってくる。
「アン!!!!」
光線に追いつき、追い越したイタッチはアンを抱き上げて横へと飛んだ。
「イタッチさん!!」
「くっ……ギリギリか…………」
光線はイタッチとアンの横スレスレを通過していく。
光線をどうにか避けたイタッチは、アンを降ろしてホッと肩を下ろす。
「イタッチさん……」
「アン、ありがとうな。こんな無茶までしてくれて…………。お前はここまで覚悟してついてきてくれてたんだな」
「でも、私にはこんなことくらいしかできません。イタッチさんやダッチさんみたいには戦えませんから……」
アンは下を向いて自身の力不足を後悔する。そんなアンの背中をイタッチは摩った。
「いや、お前は戦っているさ。心でな」
「私も……戦ってる…………」
イタッチの言葉を聞き、アンは顔を上げる。そんなアンにイタッチはさらに言葉をかけた。
「だけど、今のままじゃ俺達はアイツに勝てない。アン、力を貸してくれるか?」
「私の力……」
「ああ、アン、お前がいれば勝てる!!」
「私がいれば…………。はい!! やります!!」
「よし! 任せるぜ!!」




