第108話 『クレイジーピエロ』
参上! 怪盗イタッチ
第108話
『クレイジーピエロ』
「ボクはアリキサ。よろしく。クハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!」
ヒュンドルの不気味な笑い声が部屋中にこだまする。
鎧が破壊されて中から現れた姿は、白いメイクに赤い鼻のピエロであった。
フクロウ警部は落ちている竹刀を拾うと、剣先をヒュンドルに向ける。
「やぁやぁやぁ? キミかい、マンデリンに逆らおうなんて愚か者は? キャハハハハ!!!!」
「ああ、俺は許せないからな。俺のライバルも部下も傷つけたあの男がな」
「許せない? 許せないかぁ!!! でもねでもね、そんな感情だけじゃマンデリンには勝てないよ?」
ヒュンドルはカクカクと所々で動きを止めた、独特のダンスをし始める。
「ボクは知っている。あの男の恐ろしさを……。逆らうべきじゃないんだよ」
「じゃあ、諦めろって? それは一番無理な話だな。俺は誰よりも諦めが悪いんだ」
「あーあー、悲しいね。とても悲しいよ……」
ヒュンドルは服の中から医療で使うようなメスを取り出す。そしてその刃をペロリと舐める。
「ボク……いや、ボク達は本当は争いが嫌いなんだ。でも、マンデリンに逆らうなら……倒すしかないね!! きゃっほぉ!!」
ヒュンドルはメスを投げてフクロウ警部に攻撃を仕掛ける。
「そうか……なら…………」
フクロウ警部は竹刀を捨てて、飛んでくるメスをガードせずに受け止めた。
メスから腹に刺さり、赤い液体が毛の間を縫いながら、床へと流れる。
「なぜ、防がない? ボクの攻撃くらい防御できるはず…………」
フクロウ警部ならば、竹刀でメスを弾いて防ぐことができた。さらには投げて無防備になったヒュンドルに追撃を加えることもできたはずだ。
しかし、フクロウ警部は竹刀を捨てて、ヒュンドルの攻撃を受けた。
「もう俺に戦う気はないからな」
「戦う気がない? 何を言っている!? マンデリンを止めに来たのだろ? ならばならばならばだ!!!! 俺を倒さなければ、先には進めないぞ!!」
「ああ、マンデリンは止めるさ。だけど、君とは戦わない」
「なぜだ!?」
「さっき君の言葉を聞いて確信したよ。君達は本当は優しい人達なんだなって……。ガンドイン、パナリサ、リーナ、マーク、そしてアリキサ。君達と戦っててもしかしたらって思ってた。本当は戦いたくないのかってな」
「ボク達、全員の名前を…………」
フクロウ警部はその場に胡座をかいて座り込む。
「ガンドイン、君はこういう戦いではなく試合という形式での戦いを望む、そういう性格の人のはずだ。パナリサは好奇心旺盛でチャレンジャー、作った物とか自分の技を自慢したがる。リーナは真面目で自分語りが好き、マークは冷静な判断力と決断力がある。そしてアリキサ、君は誰よりも他人に優しく、俺にマンデリンの恐ろしさを教えてくれた」
「く……な、な、な!? 何を言ってるんだい!? ボク達……は…………。ボク達は……」
ヒュンドルは全身の力が抜けたかのように、両手をぶらりと下げて、フクロウ警部を見つめる。
「アリキサ、君は良い、僕がやる!!」
ヒュンドルの口調が変わると、服の中からメスを取り出す。もう一度、フクロウ警部にメスを投げようとしたが、それはヒュンドルによって止められた。
投げようとした腕をもう片方の手で押さえる。
「アリキサ、何をするんだ…………………。マーク、もうやめよう……ボクはこれ以上、この人を傷つけちゃいけない気がする……」
ヒュンドルは独り言を会話を始める。
「何を言い出す、彼は警察だ。僕達を見捨てた奴らと同じなんだぞ!! ………………ああ、この人は警察だ。でも、ボク達のことを見てくれたじゃないか!!!!!!」
ヒュンドルは力が抜けたのか、その場に崩れるように座り込む。
「初めてだよ。ボク達に向き合ってくれた人は……。みんなも分かってるでしょ、この人とは戦えないって…………」
ヒュンドルは自分に問いかける。そして自分の中にいる他のみんなにも伝わったのだろう。
ヒュンドルは胸ポケットから鍵を取り出した。
⭐︎⭐︎⭐︎
フクロウ警部達と別れて行動していたイタッチとアン。二人はこの飛行船の中に囚われているであろう、ダッチを探して船内を移動していた。
「アン、ダッチが居そうなところは分かるか?」
「はい。先程船内の電源ケーブルからシステムに侵入できたので、船内の地図はゲット済みです。まぁ、内部の深いところに入り込むにはもう少しかかりそうですが……」
「いや、地図が入手できただけで上出来だ。案内頼むぜ!!」
「はい!!」
イタッチはアンに道案内してもらいながら、先へと進んでいく。船内にはマンデリンが雇った傭兵や部下達がおり、彼らを倒しながら進んでいく。
今のところ幹部のような敵とは遭遇していない。ダッチを助けた後、マンデリンの言っていた三人の幹部を探し出す必要もある。
「イタッチさん、この部屋の先です!!」
「おう!!」
イタッチ達は船内の倉庫のような部屋を通過していく。燃料や武器が積まれているのだろう。木箱が部屋に並べられている。
そんな部屋を通過していると、
「見つけたぞ。怪盗イタッチ!!」
部屋の奥から声が聞こえてくる。そして声の聞こえた方向が光ると、ビーム光線がイタッチ達に向けて発射された。
「アン、掴まれ!!」
イタッチはアンを抱き抱えて飛び上がり、ビーム光線を回避する。
攻撃を回避した後、着地して攻撃が飛んできた方向を見る。
「映像で見た顔だな……戦闘機を落としたやつか…………」
イタッチとアンの前にサイボーグが現れた。




