第105話 『スペリオンの執念』
参上! 怪盗イタッチ
第105話
『スペリオンの執念』
俺の家系は代々警護を専門としてきた忍者の家系であった。幼い時から忍術を学び、友達が遊んでいる中、俺はずっと修行を続けてきた。
しかし、それも苦ではなかった。なぜなら、俺は先祖に憧れていたからだ。この力を使い、国を導く人を守っていく。それこそが俺の役目であり、先祖がやり遂げてきた誇り。
15を超えた頃には拙者はあらゆる忍術を使いこなしていた。これほどまでに多彩な忍術を使えるのは、歴代の中でも少なく、拙者はその実力を見込まれて、若くして要人警護の仕事を行うようになった。
守り、守り、ただひたすらに守り続けた。しかし、拙者は思ってしまった。拙者の守っているこの人物達は、本当に拙者が守るべき器なのだろうかと……。
そんな疑念を奥底にしまいこみ、拙者は任務を続けた。だが、ある時、事件が起きた。
拙者の護衛していた人物が、ある犯罪を犯してしまったのである。その人物は拙者に罪をなすりつけ、全てをもみ消そうとした。
──お前など道具に過ぎんのだ。ワシを守ることが仕事だろう。なら、これくらいやれ!! ──
そこで拙者は気づいてしまった。ここに拙者の守るべき、器の者はいないのだと。
⭐︎⭐︎⭐︎
スペリオンはボロボロの身体で、ゆっくりと立ち上がる。目は白目を剥いており、呼吸は荒い、もう意識も薄らと消えかけているのだろう。
それでも立ち上がるのはスペリオンの執念の成せる技だろうか。
「拙者のように……なるだけだ。どんなに尽くそうとも、お前達は道具だ…………捨てられる……運命なのだ!!!!」
スペリオンは身体を揺らしながら、ネコ刑事とコン刑事に叫ぶ。ネコ刑事はすでに眠っており、コン刑事はネコ刑事をゆっくりと地面に寝転がらせると、立ち上がってスペリオンと向かい合った。
「あなたはそうだったかもしれないっすね。でも、アタシは違うっす。何があったかは知らないっすよ……だけど、あなたは道具であることを認めた時点で、道具になったんすよ」
コン刑事は両手を上げて構える。スペリオンは短刀を手にすると、震える手で剣先をコン刑事に向けた。
「拙者は……」
──負けたくない。いつか現れるであろう、守るべき器の者が現れるまで──
「拙者は……!!!!」
スペリオンは短刀を振り上げながら、コン刑事に向かって走り出す。先ほどまでのスピードは出せなくなっている。
それほどネコ刑事から受けたダメージが大きいということ。
「先輩がくれたチャンス……無駄にはしないっす!!」
スペリオンはコン刑事に近づいて、刀の間合いに入る。刀を振り下ろして、コン刑事を真っ二つに切断しようとするが、コン刑事は身体を逸らして刃を避ける。
そして足をスッと前に擦らして、スペリオンの懐へと入り込んだ。
刀を振り下ろして伸び切った腕を掴み、足を引っ掛けて身体を持ち上げる。体を捻りながら、スペリオンの身体を背負うと全力で背負い投げをした。
「せりゃァァァァ!!」
スペリオンは背中を床に強打して、刀から手が離れる。
「ぐはっ!?」
スペリオンの視界に天井が映ると同時に、意識を失った。
「確保ォォォォォ!!!!」
気絶したスペリオンの腕にコン刑事は手錠をつけた。
⭐︎⭐︎⭐︎
「はぁはぁはぁ……」
肥満体型の身体を揺らし、一匹のフクロウが廊下を走る。
「ネコ刑事、天月刑事はどこに行ったんだ……。いや、俺がはぐれちゃったんだが…………」
ネコ刑事達とハグれたフクロウ警部は廊下を走りながら、仲間を探していた。
「しっかし、なんであんなところに落とし穴があるんだか……」
フクロウ警部は数分前の出来事を思い返す。
ネコ刑事達とハグれる前に、彼らは敵の集団に遭遇していた。飛行船を操縦するために、マンデリンの部下が何十人も乗っているのは想像していたが、かなりの数の戦闘員に出会してしまい、彼らは走って逃げていた。
しかし、フクロウ警部は走っている最中に、床に隠れていたボタンを押してしまい、落とし穴が発動して落ちてしまったのだ。
「まぁネコ刑事達なら大丈夫だろうけど。ここはどこなんだ?」
フクロウ警部は周りを見渡す。廊下を抜けてたどり着いたのは、ドーム状になった広い空間。
「来たか。我が対戦相手が……」
フクロウ警部が部屋に入ってきた入り口の向かい側にも入り口があり、そこから声が聞こえてくる。
「誰だ!?」
フクロウ警部が叫ぶと、声の聞こえた入口からカシャリカシャリと鎧が当たる音が聞こえてきた。
そしてフクロウ警部の正面の入り口から現れたのは、赤い鎧を着た騎士。彼はフクロウ警部を見て、身体を震わせる。
「……なんだ、この飛行機に侵入したほどだからどれほどの実力者なのかと期待したが…………。その膨らんだ腹、肉ダルマが相手とは…………我を侮辱しているのか」
「いえ、肉ダルマって言われた俺の方が侮辱されてると思います」
赤い騎士は背中に背負った剣を抜く。そしてその剣を力強く振った。すると、20メートル以上離れているというのに、剣を振った衝撃の風がフクロウ警部の毛を揺らす。
「我が名はガンドイン。またの名をヒュンドル」




