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12.第二回魔法特訓

 シノのパンツを持っている所を見られてしまいあらぬ誤解をされてしまったハルトだったがなんとか訂正をしまくり一応は納得をしてもらった。その後は残りのシノのあれこれをハルト、シノ、アリアの三人で分担して行い太陽の陽が当たる所にそれらをかけた。


 服を洗い終わってから三時間ほどが過ぎると辺りはすっかり暗くなっていた。夜になったので早速第二回魔法特訓をやろうかと外に出ようとした時アリアが「もうすぐでご飯出来るからどこか行くならちょっと待ってね」と言いハルト達を引き止めた。


 ハルトとシノが大人しく席に座っているとアリアが完成した料理をテーブルに並べる。どれも美味しそうだがハルトからすると見たこともない食材ばかりで困惑していた。


「さぁ、食べて。もしかしたら口に合わないかもだけど」


「そんな事はないです」


 ハルトはいただきますと言い料理をフォークで刺して口に運ぶ。口に入れる度に癖になってしまうようでハルトはひたすらその料理を口に運んだ。ハルトを見ていたシノも同じ様に口にするとやはり癖になってしまい何度も料理を口へ運んだ。


「これ凄く美味しいです!」


「そう? それはよかった」


 その後も三人は楽しく談笑をしながら料理を食べたのだった。



@@



「行くか」


 料理を食べ終えたハルトとシノは家を出て森へと向かった。だが森の中はあまりにも暗すぎてまったく何も見えなかった。


「これじゃあ魔物を見つけられないぞ?」


「大丈夫」


 するとシノの周りに明かりを放つ謎の球体が現れる。その球体は辺りを照らしてくれて一気に魔物を探しやすくなった。


「魔法、便利だな」


「そう、魔法は創造。便利便利」


 シノは便利便利と言ったタイミングでコクリコクリと何度か頷く。

 

「それで今日の特訓なんだがこの剣を練習してもいいか?」


「いいけどハルトは剣の才能ない」


「なんだよいきなり」


「ハルトは魔法の方が才能がある。何人も愛の誓約を結んだ人を見てきたけどこんなにすぐ使いこなした人はみたことない」


「やめてくれ、そんな事言ったら俺の七日間に渡る練習が無駄になるだろ……」


「使ってみればわかる」


 挑発するかのように言うシノにハルトは対抗して絶対剣が使えるところを見せてやると気合を出した。そしてタイミングよく目の前にたまたまゴブリンがいることに気付いたシノはハルトの服を引っ張り知らせる。


「ハルト、ほら」


 ほらと言われたハルトは最初どこにいるんだと思いずっと暗闇を見ているうちにそれっぽい姿を目にする。そしてハルトは鞘から剣を抜くとそのままゴブリンに向かって走っていく。ゴブリンはざっと六体ほどでそれぞれが小さな棍棒を手に持っていた。

 

「くらえぇぇぇぇ!!!」


 ハルトは勢いよく剣を振り降ろしたがまさかのゴブリンが持っていた小さい棍棒で止められてしまった。まだ諦めきれないハルトは剣にさらに力をかけるがゴブリンはびくともしなかった。そんなことをしていると周りに他の五体のゴブリンが状況に気づきハルトに近づいてくる。


「俺の剣豪への道はここからだ!!!」


 一度対峙していたゴブリンから離れ他のゴブリンに剣を振るう。剣はゴブリンの腹部辺りに近づきこれはいける! と思ったハルトだったがその攻撃も棍棒で止められてしまった。


「え、今の止めれるって。ゴブリンの方が剣豪?」


 ついにゴブリンが全員でハルトに対して反撃を開始する。剣が通用しない相手が五体もやってきてはもうどうすることもできない。ひとまずハルトは持っていた剣を目の前のゴブリンに投げつける。その剣は見事一体のゴブリンの頭に突き刺さり倒れる。もしかして俺投てき技術のあるのか……なんて思っているハルトだがそんな事を思っている場合ではない。既にまだ生きている残り五体のゴブリンがハルトめがけて迫ってきていた。


 そしてハルトは剣豪になるという夢を諦めて魔法を使うためにゴブリンに向けて手を広げ大きな声で叫ぶ。


「吹っ飛べぇぇぇぇぇええええ!!!!」


 その瞬間五体のゴブリンは目に見えない何かに吹き飛ばされる。その威力は凄まじいもので地面はえぐれ近くの木は何本か倒れていた。


「あっつ」


 魔法を放ってから少しするとハルトは手に謎の熱さを感じた。今のはなんだと思っているとシノが近づいてきてはハルトに話しかけた。


「ハルト、これじゃああまりにもゴブリンがかわいそう」


「仕方ないだろ」


 ハルトは刺した剣をゴブリンの頭から抜き取りながら言う。


「てか今の魔法は何なんだ? 風系とかか」


「まだ他のは使えないからありえない」


「なら今のは?」


「熱さを感じたから炎による熱波で吹き飛ばしたんだよ」


「そんな事も出来るのか」


「言ったでしょ。魔法は創造。出来ないことは能力(スキル)を作るくらいって」


「いや後半は聞いたことないんだけど」


「気にしない。それよりもう眠たい」


「まだ始まったばっかだぞ」


「私は眠たい」


 シノは眠そうに目を擦りながら言う。


「ああーもうわかったよ。いつかちゃんと魔法を教えろよ」


「……わあかったあ」


「ほら行くぞ」


 ハルトは少し早く歩いて先を歩くシノに近づく。そして睡魔を我慢しながらふらふらしているシノの手を握り家に向かった。



@@



 家に戻るとアリアの姿はもうなかった。恐らくもう眠ってしまったのだろう。ハルトとシノは二階の部屋に向かう。部屋に入るなりハルトは手に持っていた剣を壁に立てかけた。


「早く寝よ。眠い」


「わかったから」


 ハルトが手の力を緩めるとシノも手を離しふらふらしながらベッドに向かう。眠すぎてほぼ目を開けていなかったシノはベッドにぶつかりそのままベッドの上に倒れ込んだ。ハルトは体を揺さぶり「ちゃんと横になって寝ろよ」と言うがシノは「んあうん」とよくわからない言葉を発し動こうとはしなかった。


「はぁー。お前は子供か」


 ため息をつきながらハルトはシノの体を持ち上げる。想像以上に軽かったおかげで簡単にシノを移動させる事ができた。シノをまっすぐ寝かせたハルトは布団を被せたあとに自分も布団の中に入り込む。


(あぁ、早く魔法をちゃんと使えるようになりたい)


 そんな事を思いながらハルトは眠りに落ちるのだった。

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