創世神話異伝
世の初め
世界が始まる前のこと。
天高い場所にアメノヌス・ヌ・ミルという三柱で一柱の神がお生まれになられた。
まず、神は、アメノ・ヌ・ミルとなられて白き世界を黒に染め、次にココト・ヌ・ミルとなられて秩序を作り、最後にホル・ヌ・ミルとなられて塵芥を固めて星々を作られた。
この神は、宇宙を司り、この世界のありとあらゆるものの元となった根源神で、姿形はなく、男と女の区別もなかった。
次に数多の星々の中の一つに五柱の神が順に降り立たれた。
まず初めに、ホケサ・ヌ・ミル。この神は炎を司り、星々に血を与えた神である。
次に、ルシケサ・ヌ・ミル。この神は水を司り、海を創った神である。
次に、タンタケサ・ヌ・ミル。この神は土を司り、陸地を作った神である。
次に、カンフロケサ・ヌ・.ミル。この神は風を司り、風と大気を創り出した神である。
最後に、カヒヤヤケサ・ヌ・ミル。この神は光と闇を創り出した神であり、その瞬間、世界に光と闇がもたらされた。
五柱の神は、自らの生み出したものが上手く動くようにと自らの力の一部を分け与えられようとした。しかし、そのための力がなかった。その瞬間、生まれたのがアルナケサ・ヌ・ミルであり、この神は五柱の神のために魔素を生み出した。
この六柱の神もまた、姿形はなく、男と女の区別もない神々であった。
以上が、この世界の成り立ちについてである。
これら七柱の神は創世の七神と呼ばれ、地上に現れた神とは別に区別されている。
神々の楽園
次に海に浮かぶ脂とも泡ともつかぬものが現れ、それらはやがて単純な姿に変わり、そこから植物や魚、鳥、トカゲなどへと姿を変えていった。
それから長い月日が経ち、地上が様々な種の生き物で満たされた頃、最初の地上の王である竜が生まれた。しかし、その後、天の怒りを買ってしまい滅ぼされた。その時に一つの大きな島であった地上は、六つの大陸と数多の島に分けられた。
それからさらに長い年月が経った頃、長細い島に二柱の神が生まれた。
まず、オ・クニノカレル・ヌ・ミロト。これは生命の根源を司る男神である。
次にメ・クニノムフ・ヌ・ミロト。これは生命の根源を司る女神で、オ・クニノカレル・ヌ・ミロトの妻であり、妹であった。
二柱の神は葦と泥で家を作り、そこで三日の長きに渡り、互いに交じり合った。そして、多くの神が生まれた。
この時に生まれたのは、天空を統べる神であるオ・ウクヒケヌス・ヌ・ミロト、地上を統べる神であるオ・クニノヒケヌス・ヌ・ミロト、冥界を統べる神であるオ・ヨモヒケヌス・ヌ・ミロトの三柱の男神であった。
メ・クニノカレル・ヌ・ミロトは、この三柱の神を産むとき、痛みに耐えきれず泣き叫んだ。その声から三柱の神が生まれた。
まず、初めにメ・ムク・ヌ・ミル。これは、金属と鉱山の神であり、オ・クニノヒケヌス・ヌ・ミロトの妻である。
次にオ・ウイトス・ヌ・ミル。これは、穀物の神である。
最後にオ・タカス・ヌ・ミル。これは、畑の神であり、農耕神である。
オ・ヨモヒケヌス・ヌ・ミロトは、身体が腐っていたので、メ・クニノカレル・ヌ・ミロトは、この神を産んだ直後に亡くなった。
オ・クニノカレル・ヌ・ミロトは、嘆き悲しみ、その悲しみから三柱の神が生まれた。
まず初めにオ・ラヤ・ヌ・ミル。これは、山の神である。
次にメ・ヤルウ・ヌ・ミル。これは、声を司る神であり、オ・ウクヒケヌス・ヌ・ミロトの妻である。
最後にオ・クインム・ヌ・ミル。これは、鍛治を司る神で、メ・ムク・ヌ・ミルの夫である。
妻を失ったオ・クニノカレル・ヌ・ミロトは怒り狂い、オ・クインム・ヌ・ミルに命じて剣を作らせ、オ・ヨモヒケヌス・ヌ・ミロトの首を刎ねた。
その時に噴き上がった血から三柱の神が生まれた。
まず初めにメ・ヨモ・ヌ・ミロト。これは死を司る女神であり、オ・ヨモヒケヌス・ヌ・ミロトの娘である。
次にオ・ヤマ・ヌ・ミロト。これは病と怪我を司る男神であり、オ・ヨモヒケヌス・ヌ・ミロトの息子である。
最後にメ・レイチ・ヌ・ミロト。これは厄災を司る女神であり、オ・ヨモヒケヌス・ヌ・ミロトの妻である。
その後、オ・クニノカレル・ヌ・ミロトはオ・ヨモヒケヌス・ヌ・ミロトに冥界を、残りの息子達に天と地上の支配を命じると、そのままお隠れになった。
オ・ウクヒケヌス・ヌ・ミロトはメ・ヤルウ・ヌ・ミルを妻として娶り、太陽を司る神であるメ・カルイ・ヌ・ミロトと月を司る神であるオ・ハクキ・ヌ・ミロトの二柱の姉弟神を産んだ。
父であるオ・ウクヒケヌス・ヌ・ミロトは、この二柱の神に太陽と月を動かすことを命じられた。
オ・クニノヒケヌス・ヌ・ミロトはメ・ムク・ヌ・ミルを妻として娶り、数多の神を産んだ。その時、子らが困らないようにと精霊の言葉であるマーナを教えられた。
それからさらに長い年月が経ち、地上がオ・クニノヒケヌス・ヌ・ミロトの子により満たされた頃、天より新たな神が降臨した。彼らも姿形があり、性別もあった。
彼らは地上の神よりも格が高かったので、神々の王は彼らに平伏し、付き従うことを宣言した。
彼らは自らの故郷に帰る方法を探るため、小さな島に鉄と石灰石と水晶で出来た神殿を建て、自らのために働くようにと数多の生き物の血を混ぜ合わせ、二組のつがいの男女を作り出した。
まず、最初に生まれたのが、ヒマルスの祖先であるアルセムとエハンであった。新たな神は彼らは自らのために働くように命じた。
次にロアルスの祖先であるクラムスとマハンを作り、力仕事と神殿の警備に従事するように命じられた。
そして、彼らは神々に自らの御技を授け、共に地上に最初の楽園を築いた。その楽園は彼らの故郷の名を取りてクルドゥリアと名付けられた。
それからしばらく経った頃、新たな神と地上の神との間で争いが起きた。そして彼らの中から現れた邪な心を持つ者達との間で争いが起きた。
楽園は崩壊し、生き残った神々と新たな神が生み出した者達は散り散りになり、新たな神はお隠れになり深い眠りについた。