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31話 退屈な守り人 後編

 ◆ ◇ ◆


 精霊のゆりかご内には、人間の男たちと横たわった一人の守り人がいた。


「くそ……なんだって……こんなところに人間が……」


 行き成り人間たちの攻撃を受けて重傷を負った守り人が疑問を口にする。


「文句ならお仲間に言うんだな」


 上から見下すように男の一人が言った。


「……どう……いうことだ……?」


「どうもこうもそのままの意味だ。俺たちを案内したのはお前の同僚なんだからな」


「……あいつが……裏切ったって……いうのか?」


 守り人が信じられないという顔で尋ねる。


「裏切り……ね。あいつは何も分かってないだろうな。食べ物に釣られた上に、適当についた嘘を信じ込んだだけだからな」


「……そう……か……本人は……?」


「アァ? 蝶に餌をやるとか言って帰っちまったさ」


「……無事……当たり前か……」


 そう言った守り人は笑って見せた。だが、息が荒くなっていることから話すのさえ辛くなってきていることが窺えた。


「おい、そんな死にぞこないと話してないでさっさと詰めろよな。お前の分の卵なくなってもしらないぞ」


「まてまて、今詰める」


 男たちは、それぞれ持っていたカバンやリュックに卵を詰め込んでいく。だが、入口の方から声が聞こえてきたことにより、皆一斉に手を止めてそちらを見た。


「卵を盗もうとしたらだめって言ったのに」


 そこに居たのは、男たちをここまで案内した守り人だった。


 男たちは入口に立たせていた見張りがどうなったのかと疑問に思ったのだが、その答えはすぐに分かってしまった。何故なら、自分たちの身にも異変が起きているからだ。


「うご……か……」


 男たちは瞬く間に凍り付き、そして次々に砕け散っていった。そんなことを息をするようにやってのけた守り人は奥へと進んでいく。そして――。


「うわ、酷い傷。大丈夫?」


 血まみれになり横たわっている同僚を見つけた守り人は、慌てて駆け寄り声をかけた。


「……あめ……くれ」


「あめ? こんな時に飴なの? どんだけ甘いの好きなの!?」


「いい……から……はや……く……」


「分かったよ」


 袋から取り出された飴が、瀕死の守り人の口へと突っ込まれる。すると、飴を入れられた守り人は今まで横たわっていたのが嘘のように元気に立ち上がった。


「助かったー。飴サイコー!!」


「う、うん。君が飴を好きなのはよーく分かったからさ。まずは落ち着こう。そんなにはしゃぐと傷に響くからさ」


「いやいや、飴のお陰で傷はもう治ったから! ほら、腹に空いてた傷だってこの通りにさ……」


「まった言ってる。ほら、長老の所へ行って傷の手当てをしてもらうよ」


 飴をなめたことで元気を取り戻した守り人は、同僚に引きずられるようにしてその場を後にした。



 ◇ ◇ ◇



 木の中に作られた家の内部には一人の小さな老人が椅子に腰かけていた。


「まさかこんなことになるとは……」


 老人はため息交じりに愚痴を漏らした。そこへ、丁度呼び出した二人の守り人が訪れる。


「長老、旅の準備が出来ました」


「おいらも準備が出来ました」


「何故準備をしてもらったのかは分かっておるな?」


 長老は立ち上がった後、二人に目的を尋ねた。


「えーと、なんでだっけ?」


「お前が原因だろ! 精霊の卵が一つだけなくなっていたからです」


「そのとおりじゃ。あれだけ捜索して見つからなかったからのぅ。すでに人間の町まで運ばれてしまっているとみてまず間違いないじゃろう」


「人間の町……楽しみ……むごっ!」


 楽しみにする守り人の口をもう一人が塞いだ。そして、長老に相槌を打つ。


「……そうですね」


「うほおん。卵に何かあっては守り人の面目が丸つぶれじゃ! よいな、見つかるまでは戻ってきてはならんぞ!」


「はい!」

「はーい」


 返事をした片割れは楽しそうな顔をしており、もう一人はその顔を眺めながら不安そうにしていた。


「はぁ、才能はあるのにのぅ。本来は一人で行かせるべきなんじゃが……こやつのことしかと頼んだぞ」


 長老も呆れ顔で楽しそうな顔をしている守り人を見た後に、もう一人に向き直し手綱を任せた。


「……分かりました。やれるだけのことはやってみます」


「町についたら何食べようかな」


 その言葉を聞いた長老と守り人は二人で顔を見合わせた後に深いため息をついた。



 しばらくして、長老は二人の守り人が旅立つのを見送った後に、風の精霊を呼び出して何やら言伝を頼む。そして、精霊が姿を消したあとに一人呟く。


「――会うのはいつぶりになるかのぅ」



 ◆ ◆ ◆



 どう見ても研究者に見えない男は意気揚々と町の路地裏を歩いていた。時折、鞄を見つめてはほくそ笑んでいる。


 そんな男の前に、ゴロツキの男たちが立ちふさがった。


「なんだか景気が良さそうな顔をしているな」


 男は素知らぬ顔で引き返そうとすると、何と後ろにもゴロツキの仲間であろう者たちが立ちふさがっていた。


「おいおい、何処へ行こうっていうんだよ。俺たちにもその幸せを分けてくれよ」


 そう告げたゴロツキは、明らかに男のカバンを見つめていた。その目線に気づいた男は無言で剣を抜くが、飛んできた矢に背中を射貫かれた挙句に目の前の男に剣を奪われて逆に突き刺されてしまう。


障害を排除したゴロツキは、倒れた男からカバンを奪い取り中身を確認する。


「なんだこれは?」


「クソ……返せ……せっかく……」


「まあいい。売れば多少の金にはなるだろう」


 そう言うとゴロツキたちは、その場を後にした。残った男は無念そうな顔をしたままこと切れてしまった。

無月の朝はのんびりと『09話 満喫する森人』は、10/13(金)の午後17時頃に投稿する予定です。

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