00話 噂 (改)
とある酒場で男が一人で飲んでいた。すると、ガタイのいい中年の男が酒場に入るや否や飲んでいる最中の男に歩み寄る。
「もうこんなに飲んでるのか。明日も早朝から見張りがあるんだろう? そんなんで兵士が勤まるのか?」
歩み寄った男は、既に何本も空になっているジョッキを見つめながら言った。
「明日は非番だから平気だ。それにしても久々に顔を見たな」
「隣町まで依頼で出かけてたからな。帰ったのもつい先ほどのことだ」
中年の男はそう言いながら、向かいの席に腰を下ろした。
「冒険者ってのは相変わらず大変なんだな。どうだ? うちの所に来ないか?」
「いや、遠慮しておく。俺は旅をするのも好きだからな」
そう言い終えると、中年の男性はジョッキを注文した。
「そうか。まぁ、気が変わったら言ってくれ」
しばらくすると、二人にジョッキが届く。
「お待たせしました。注文の品でーす」
店員の女性が二人の前へとジョッキを置く。
「ん? 俺はまだ次を頼んでいないはずだが?」
兵士の男が疑問を口にすると、その答えがすぐに返ってくる。
「あたしからのサービスです」
店員は言い終えた後に微笑む。そして、次の客のもとへと注文を尋ねる為に去って行った。
「ふっ、相変わらずのアプローチだな」
中年の男性は含みのある笑みを浮かべた後、一気に酒を飲み干した。向かいに座る兵士の男も同様にして飲み干す。
「くぅー、久々の酒は美味いな。そういや隣町で聞いた話なんだが、こんな話知ってるか?」
中年の男は辺りを見回したあとに声を潜めて言った。
「双月の晩にはな……」