湊は周平優先なのです、ただし嫉妬はする
湊視点
「あ~お腹いっぱい」
私はベッドに飛び込む。
くんかくんか嗅いでみるといい匂い。このまま眠りそう・・・。
「人の布団の匂いを嗅ぐな」
「ひゃんっ」
嗅覚に集中しているところにお尻を叩かれた。
「周平のエッチ、変な声がでちゃったじゃないか」
「自分の匂いを嗅がれる俺の身にもなってみろ。湊の変態度に正直ドン引き」
何を言っているのかな?彼氏の匂いを嗅ぐのは彼女の特権だよ。もちろん彼女の私の匂いを周平が嗅ぐのも可だ。
「俺の言葉が理解できない顔をした後に、なぜ満面の笑みで両手を広げて俺を迎えようとする」
「ヘ~イマイスメルフォーユー」
「彼女が残念過ぎて泣きそうです」
そう言いながらも一緒にベッドに横になってくれる周平大好き。
周平の腕を枕にして私は周平の身体に抱きつく。
ふふふいつもならここまで密着させない周平が今は油断している。
「今日は悪かったな」
「ん~あれはしょうがなかったんじゃないかな?情報不足に情報伝達ミス、周平の油断に私と友人君の早とちりいろいろ重なったせいだよ」
昼の周平拉致事件は全部が噛み合わなかったせいで起きた。周平が説教されたけどあれは連絡手段を保持していなかったから説教されたのだ。
珍しく友人君が怒ったのはそのせい。危機管理には友人君は超厳しい。
「どのくらい犠牲者が出たかな」
「私は外見が女の子だから鳥肌が立つぐらいで済んだと思うけど、友人君はね~聞いたら悪そうな生徒が集まる所をしらみつぶしに回ったって言ってたから」
「見るだけなら失神ぐらいで済むか?」
「何人かは漏らしたんじゃないかなぁ」
私達の中でボケ担当の友人君だけど腐っても閑名家次期当主、あの室外機を掴んで投げる秋夜姉さん、槍以外は達人の槍ジジイと血が繋がっているのでそこら辺の弱い者いじめしか出来ない不良では本気になった友人君を見るだけで大半は失神すると思う。
友人君は中学生の時に入院している周平に逢いたい全力の私を毎日怪我しないように止めてくれる実力者なのだ。
「周平はどうするの?」
「ん~どうすっかな~」
迷った声を出す周平。
くんかくんか、直接の方がいい匂い。香水に・・・いや傍にいるから必要ないか。
放課後調理部に招待された私達はお菓子メインの料理をご馳走された。
そのとき上村先輩が話してきた内容は周平に調理部に入部してほしいということだった。
上村先輩は私達みたいに梅田先生を餌付けしていたようで、その時に男の周平が梅田先生のランキングで先輩の次にランクインしたことで興味を持ったみたい。
ちなみに今日の晩御飯は調理部の部員の方達が作られたものをタッパーにいれて持ち帰れと持たされたものだ。ママーズは作らなくてすむから大喜び。
「少し興味が湧いたんだよね?」
「俺、千切りと火の扱い方しかおフクロに教えてもらわなかったから我流なんだよ」
「知ってるよ~」
ずっと傍で見てきたからね。ボロボロ焦げ焦げの目玉焼きが周平の最初の料理。あれはガリガリ苦々だったけど美味しかったなぁ。
「趣味の家庭料理だから少し雑でいいと思ってたんだが」
そう言いつつ私達の為にいろいろ新しい料理の技術を覚えているのは知ってるよ。三人の好きな料理をそれぞれに合わせて味を変えたりカロリー減にしたりとしていること。
「最後に上村先輩が作ってくれた野菜炒めは衝撃的だった。あの歳であそこまで作れるんだなと」
あれは美味しかった。いいお店で食べるレベルだった。
でも私の好みと体調に合わせて作ってくれる周平の方が絶対に美味しい。
「ちょっと仮入部してみようかと思っている。参加は自由らしいしから融通は効きそうだし」
ああ、どうして私はこんなにも嫉妬深いんだろう。上村先輩は男で話した感じは良い人だった。調理部の女性陣も周平の事を男としてではなく仲間になるのかなと期待している雰囲気。自由参加で私達といる時間が減るわけでないのに何故か私の心の奥底で周平が入部することを嫌がっている。
心の奥底にいる巨大遊具の中で泣いている子供の私は周平を巨大遊具の中に閉じ込め二人の世界でいたいのだ。
ずっとずっと私を私だけの周平でいてと全てに嫉妬しながら泣いている。
でもね
「うん、いいんじゃないかな。さらに周平の料理が美味しくなるんだね」
私は周平の為に少女の私の嫉妬の鳴き声を無視する。
もう中学生の時のようなただ喚き散らして困らせる子供ではないのである。私は周平の彼女なのだどっしりと構えるぐらいの余裕を持たなければ。
・・・んん?周平からの返事がないね。
今の私の顔は周平のお胸の中、周平の顔は見れない。
仕方ないね少し顔を上げて見よう。ごそごそ、うんこれでよく見える。
どうしたのと聞こうとしたけど周平はジーと私の顔を見ていた。
嫉妬は顔に出てないよね?大丈夫学校では私の本性はバレないくらい完璧だ。
何かを言うタイミングを外してしまってお互いに沈黙状態と思っていたら
チュッ
おでこに軽くキスされた。
「湊みたいに心は読めないけどな不安げな顔ぐらいはわかるからな。ずっと一緒にいてやるんだから大丈夫だぞ」
ポンポンと背中を優しく叩かれる。
「やっぱり男の俺には微妙に足りなかったみたいだ。うどんでも作ってくる。湊も食べるか」
私がフリーズしていると周平は腕枕を外してベッドから降りる。
「周平の残りを食べるからいい・・・」
それだけ言うだけで精一杯。
そっかと言って周平は部屋から出ていく。
トントントンと階段の音を聞いてから私は周平の布団の中に潜り込んだ。
「なんでわかるかな~。もうっヘタレのくせにこういうときだけっ」
私は布団の中で愚痴る。
でも顔はにやけているだろう真っ赤にして。周平が戻ってくるまでに戻さないと。
次の日、
「なんで三人がここにいるの?」
周平は上村先輩に仮入部を伝えに行くと昼食の後に調理部に行ったのだけど、私達は先回りして先に来ていた。
「私は部活動は自由参加と聞いてから決めたの」
生徒会のほうがメインだからあまり参加できないだろうけど周平と同じ部ならある程度干渉は出来るから少しは嫉妬も収まるだろう。
んふふ、宣言通りずっと一緒は無理でも少しでも努力して傍にいないとね。
「俺は食べるだけでいいからと先輩にスカウトされた」
「材料費ぐらいは出してもらうけどな」
友人君は昨日、調理部の料理を一番食べて上村先輩ほか部員の人達に喜ばれていた。美味しいもの食べてるから評価させると駄目な部分を指摘してくれるし、誉めるとことはちゃんと褒めるんだよねこのボケ担当。
なるほど評価用マシンだね、友人君は結構辛辣なことも平気で言うから最適化もしれない。
「私は入ろうとしてた文芸部が真面目なところだったので一人だけ部が別も嫌でしたので・・・」
「それはご愁傷様です」
「いえいえこれで個人でやっていく決心がつきました。まあ同志はいるので寂しくはないかと」
周平と即興コントできるくらい馴染んだんだね眞子ちゃん。あとで私のクラスの同志候補を紹介してあげよう。
「一年が四人も来てくれたのは嬉しいが一人は都合が付いた時で後の三人は幽霊部員か~」
少し困り顔の上村先輩。今日は胸元にピンクの大きなハートなんですねいつかエプロンことは聞いてみよう。あとの三人が聞かないのは誰が我慢できずに聞くかチキンレースが繰り広げられているような気がする。私?私は聞いて教えないタイプです。そして自慢気に教えてくれるのを楽しみにしてます。
「飾り切りなら得意ですよ」
「ラーメンぐらい?食う専門だから腹減ったときに寄らせてもらって」
「一応基本は出来ますから、でも趣味がありますのでたまにで」
「・・・時東お前はなるべく来てくれな、な」
「まあ湊が遅くなると思うんでそのときはマメに出ます」
上村先輩が縋りつく目で周平を見る。
うん昨晩の周平のおかげで心の子供の私も落ち着いている。
私の心を乱すは周平だけど落ち着かせてくれるのも周平なんだよね。困ったものだ。
湊「飾り切りのレッド!」
周平「家庭の目分量ブルー!」
友人「味の評価はするぜグリーン!」
眞子「え?え?」
三人「「「そこはオチをつけないとピンク」」」
全員で入部する事に決定しました。( ´∀`)
周平はまじめに
湊は周平と嫉妬を抑えるため
友人は安くでメシが食える
眞子は友達がいるから
と一人しかちゃんとした動機がないのは上村先輩は泣いていい( ;∀;)
調理部の部活動は書くことはないと思いますが、上村先輩は時々出していこうかなと思っています。頼れる先輩は必須ですよね!エプロン変ですが。




