秋夜の恋愛事情
湊視点
「あれはない。ないよ秋夜姉さん」
私は苦情を訴える。
幸せな気分に浸っていた私は、お風呂場で秋夜姉さんに強制的に意識を現実に引き戻された。その方法は恥ずかしいので控えさせてもらう。
「さすがに風呂に入れても戻ってこなかったからな緊急処置というやつだ。それに昨日揉みしだくと宣言してたしなぁ」
「言わないでぇ~っ!」
せっかくぼかそうとしてたのに、からから笑って暴露する秋夜姉さん。ええ揉まれて絶叫したよ。学校で王子様とか言われてても私は女の子なので、後ろからいきなり鷲掴みされたら周平でも悲鳴をあげるさ。いや周平なら大丈夫かも・・・ちょっと自信はないかな。
「落ち着いて湊ちゃん」
「眞子ちゃ~ん」
横から眞子ちゃんが慰めようとしてくれる。
さすが私の親友だ。
「あの時は仕方が無かったよ。私も少し面倒くさいなと思ってたから」
「親友に刺されたっ!」
そう言っても寄りかかる私を慰めてくれる眞子ちゃん。ふっふっふっ男共は知らない柔らかいものに包まれる感触に優越感を得る。実際はブラが当たって微妙だけど。
私達は秋夜姉さんの運転する車で都市部のショッピングセンターに向かっている。私の意識が遠いところを散歩している間に決まっていたようだ。眞子ちゃんから聞くとウィンドウショッピングらしいけど、秋夜姉さんのことをまだわかっていないね。
「車が変わっているけどどうしたの?」
後部座席で眞子ちゃんに寄りかかりながら秋夜姉さんに尋ねる。久しぶりに秋夜姉さんの車に乗るけど以前は最近の車だったのに、今乗っているのは昔の旧車と言われる車だ。
その車を運転している秋夜姉さんは白いTシャツにジーパンとシンプル過ぎる恰好で古い車と似合っている。
「ん~、前のは調子が悪くなってきてな。そろそろ買い替えようと思ってたら彼のとこにこの車があったんで貰ってきた」
うわ~彼氏さん可哀そう。
「は~秋夜姉さんの彼氏さんは物持ちがいいんですね」
「コブラがいいと言ったんだが、全力で拒否されたんで一番状態のいいこいつにしたんだよな」
絶対泣いてるよ彼氏さん。
あと眞子ちゃんの認識が間違ってるから正そう。
「眞子ちゃん眞子ちゃん、このが車ただ古そうな車だと思ってるでしょ」
「?そうなんじゃないんですか」
「うん古い車だけどね。最新の高級車が数台買えるお値段がつく超プレミアなお車です」
「は?」
うん理解出来なよね。
「コブラはさらに上をいくなぁ」
「秋夜姉さんはかき回さないで」
普通の女の子は興味ないよね。
私は秋夜姉さんの彼氏に会った時に少し教えてもらったんだけど途中で考えるのを止めたよ。あれは完全な趣味の領域だ。まともな人は関わってはいけない。
眞子ちゃんが座席に触れないように腰を上げようとしている。綺麗なレザーの座席だもんね。最初に知らないで乗せられたときの私と同じことしているよ。
「故意に傷つけない限り多少のキズくらいはあいつは怒らんぞ」
「それでもちゃんと知って慎重に動かないと、庶民の心は秋夜姉さんみたいに大雑把には出来ていないの」
なんだとーと秋夜姉さんはふてくされるけど、眞子ちゃんは頭が取れそうなくらい頷いているからね。
「湊ちゃん・・・秋夜姉さんの彼氏は危ない人だったりとか」
「大丈夫、ただの超お金を持ってる普通の人だから」
「それは普通の人ではないです・・・」
秋夜姉さんの彼氏の話はちょっと面倒くさいんだよね。
「よし今日の就寝前のお話しは秋夜姉さんの恋物語しよう」
「俺はいいが、眞子は怖くて眠れなくなるんじゃないのか?」
「恋物語ですよねっ!?なんで怖くなるんですかっ」
「え、だって秋夜姉さんの一番荒れていたころの話だよ。むかしのヤクザ映画よりハードで昔の時代劇の映画並みにスプラッタだよ」
「そこらへんはかなりぼかして話してくれないかなお願い」
そんなだらだらと話しているうちにショッピングセンターに着く。
「私は昨日からの心労で一キロくらい体重が落ちたと思います」
よろよろと車から降りる眞子ちゃん。ツードアだからバッグの金具で車がキズ付けないように慎重に降りていた。
その間、秋夜姉さんはどこかに電話している。
「うっし話はついた。いくぞ野郎共」
「野郎じゃないよ」
「女の子です」
暴君が先導して私達は建物内に入っていく。
私も眞子ちゃんも年頃の女の子なので買わなくてもお店を見て回るだけで楽しくなる。
「切り替えます。良いのがあったらお年玉を切り崩してでも買います」
ショッピングセンター入り口から入ってすぐの広場で眞子ちゃんが宣言した。嫌な気分にはならなかったとは思うけど、閑名家の情報量はストレスになったのかもしれない。しょうがない私も眞子ちゃんに乗ってあげよう。
「よし私も何か買うよ」
「湊ちゃん・・・」
潤んだ目で見てくる眞子ちゃん。がっしり手を掴む。そう私達は親友だ。一緒に楽しんで一緒に減った貯金額に悲しもう。
「あ~友情ごっこしているとこ悪いがお前ら何でも買っていいぞ」
「「えっ?」」
私達が友情を確かめ合っているのに冷や水を掛ける秋夜姉さん。
「さっき服屋の社員割り引きしてくんねと彼に連絡したら、俺の妹分ならいくらでも使っていいとカード使用の許可が下りたんだよ」
そう言って秋夜姉さんは男性が持つような黒いレザーのウォレットを出し、その中からブラックなカードを取り出した。
「あいつ女の子にだけは優しいんだよな。男は死ねと思っているし、俺と同じ考えだよ」
カラカラ笑う秋夜姉さん。
はいアウート。
眞子ちゃんを目を合わせ二人頷く。
「あ、なんだよ?なんで俺と腕を組むんだ?おーい説明しろー」
秋夜姉さんを人目の付かない場所に連れていって説教することになった。高校生をそんなに甘やかしてはいけません。
ついでに秋夜姉さんの彼氏もスマホで一緒に説教だ。こっちは反省の色もなかった。
(じゃあ百万!ダメ?なら五十万、ええー秋夜がお願いしてきたからたまには格好つけさせてよ~、十は・・・ダメね。なら一万!一万からは下げるつもりは無いよ!)
「秋夜姉さん・・・本当にあんなのが好きなんですか?」
彼氏さんとの通話を切った後、眞子ちゃんが真剣な表情で秋夜姉さんに聞いた。
「?良い彼氏だろうが。俺みたいな奴を他の連中と同じようにちゃんと大切にしてくれているんだぞ」
胸を張って自慢する秋夜姉さん。
「他の連中?」
「言ってなかったか?あいつ正妻二人に彼女は・・・今何人だ?」
「湊ちゃん説明お願いっ!」
眞子ちゃんも知ってしまったか、秋夜姉さんは閑名家の最大戦力で暴君で実は一番常識がある人なんだけど、ちょっと恋愛関係でこじらせてハーレム入りした人なのである。
眞子ちゃん情報量多すぎて倒れないかなぁ。
捕捉、秋夜は閑名家から出ることはその強さから許されてませんでした。
未来が絶望的なのを理解した秋夜はその才能をフルにいかして間違った正義の味方みたいなことをしているときに彼氏に遭遇しました。暴力、財力、閑名家の影響力を全て使ってぼろ負けしてます。
彼氏のところにだけ秋夜はひとりの女性として閑名家を出ていくこと許されてます。
他にもいろいろ設定はあるけど今回はここまで。
めちゃくちゃなのは閑名家の回だからですよ。普段のストーリーには閑名家は出てきません。たぶん・・・(;・ω・)




