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行き倒れの馬鹿はどうしますか?


湊視点


 まさかあの距離で聞こえているとは、さすが秋夜姉さんだ。

 お風呂で揉まれるのかー、あの人絶対忘れないからな。眞子ちゃんも一蓮托生でいけば被害は抑えられるのかな。


「湊ちゃん私を絶対に巻き込まないでね」

「バレてましたか・・・」

「私も今の湊ちゃんの考えぐらい予想できます」


 私の胸がピンチだが仕方ない甘んじて受けよう。そこまで酷いことはしないはずだ。


「地味に私の気分は下降気味だけど、眞子さんを秋夜姉さんの部屋までご案内しましょう」


 二人で玄関を上がる。


「外見で思っていたけど友人君の家は木造平屋建てなんですね」

「昔の家だからね。玄関も時代劇に出そうなくらい立派だし。廊下や柱は米ぬかで何年何十年拭いてくとこんな風になるんだって」


 途中にある柱に触れる。

 飴色を通り越して殆ど黒だ。塗料にはない深みがある。

 眞子ちゃん柱に触れた。


「凄いですね、こう歴史が積み重ねられた感じがします」


 うんうん、同じ感性だと嬉しいね。

 周平はどちらかというと私に寄せて来てくれるからたまに無理しているときがある。それも私の為だと思えば嬉しいけど。


 廊下の奥に歩いていく。

 少し薄暗いのに眞子ちゃんはビクビクしていた。

 昔の大きな武家屋敷みたいなものだから個人の部屋は奥の方にあるんだよね。秋夜姉さんに気に入られたみたいだし何度か来れば慣れるでしょう。


「はい。ここが秋夜姉さんの部屋です」

「・・・秋夜さんはどこかの世紀末覇王なんですか?」


 うんわかるよ~。住みやすいようにリフォームはしてあるが閑名家の扉は基本引き戸だ。

 そして秋夜姉さんの部屋の扉も引き戸なのだがその扉にはでかでかと毛筆体で秋夜降臨と書いてあった。


「これは中学生になってちょっと反抗期に入った二人の馬鹿が直接では勝てない秋夜姉さんにせめてもの嫌がらせとして書いたんだね」

「あの二人は報復されるとか考えなかったの・・・?」


 あの頃は二人共輪をかけて馬鹿だったから、秋夜姉さんは結構良いじゃねえかと笑ってたけど。

 ちゃんと折檻はされたけどね。中学一年生が高い高いされて号泣するのは二度と見れないだろう。


 引き戸を開けると扉に書かれている文字とは違いフローリングのシックな内装だ。

 あまり物は置かずに綺麗にしている。


「・・・普通ですね」


 部屋の中を見る眞子ちゃん。


「秋夜姉さんは男口調で馬鹿力だけど常識はまともだから」


 だから閑名家で一番の苦労人である。眞子ちゃんも中身は同じタイプだから仲良くなれると思うよ。


「さてお茶でも淹れてから座敷に行こうか」

「ええと何もわからないからついていくね」


 荷物を扉近くに置いて、あ周平のも持ってきたよ。廊下に置いておこう。あとで勝手に持っていくだろうし。


「廊下が迷路みたいですね」

「元武家屋敷みたいなものだから敵の侵入対策とか昔に聞いたことがあるなぁ」


 眞子ちゃんは途中にある部屋を覗き込もうとしている。最近の家にはない謎の部屋があるから覗き見たいよね。たまに甲冑が置いてあるから怖いよ。ほらビクッてしたね。


 古い家なので台所は完全に独立している。

 台所のドアを開いた。


「・・・」

「・・・」

「これってどうしようか?」

「ドアを閉めるくらいの余裕があるなら放っておいていいと思うよ」


 厳しいね眞子ちゃん。


 台所に入ろうとした私達の前には友人君が倒れていた。

 右手が前の方に伸ばされて進みたいのかカリカリと床を引っ掻ている。

 何か小さい声で呟いているね。


 私が動く前に眞子ちゃんが先に移動して友人君の顔の近くに座る。


「・・・湊ちゃんコップありますか」

「ん、ここかな」


 久し振りだけど昔と変わらないので食器棚からコップを取り出した。

 眞子ちゃんに渡すと水を汲み始める。


「あの眞子ちゃん」

「ちょっと待っててね」


 黒い笑みでこたえてくれる眞子ちゃん。

 友人君を腐の世界に落とす計画を相談されたときの顔だ。


「ほ~ら欲しがってたお水ですよ。飲まないんですか?」


 眞子ちゃんは友人君の右手が届かないギリギリにコップを置いた。


「お、おお・・・」

「あと数センチですから頑張りましょう」


 凄く楽しそうだ。

 仲直りはしたけど鬱憤は溜まっていたのかな。

 よし覚えた、眞子ちゃんが黒い笑みを浮かべるくらいまでのイタズラはしない。私は賢い子なのだ。


「私はお茶の準備をするから適当なところで切り上げてね」

「はーい」

「た、たす・・・」


 友人君の脇を通り抜けてお茶を探す。う~んお茶類は違うとこ置くようになったのかな。薬缶はシンクの下に・・・あったあった。


「残念あと五センチ距離が伸びました」

「あ、あああ」


 うんうん、だんだんと染まってきているね。そのくらいの対応が友人君には丁度いいから。でも私にはしないでね。

 楽しそうな眞子ちゃんの声を聴きながら、私はお茶の用意を始めた。


行き倒れの馬鹿はどうしますか?


湊「周平でなかったら基本放置」

秋夜「邪魔にならないところに蹴って移動だな」

眞子「完全に動けないのを確認してから見て楽しみます」


まともな女性がいないー!Σ( ̄□ ̄;)


再投稿後書き

眞子は無自覚受けのほかに、Sの気もあったんですね(*´ω`*)

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