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暴君閻魔秋夜(あきや)


眞子視点


 私はもの凄い緊張感に包まれている。

 周平君が玄関の戸を開けたら赤い髪の女性が立っていた。腕を組んで仁王立ち。

 湊ちゃんより低いが女性としては背は高い。



「おう、ようやく来たな周平」


 その女性が男っぽい口調で周平君に声を掛ける。その目は不機嫌そうに見えた。

 すると周平君はそのまま広めの玄関の土間で土下座する。しっかりと荷物は湊ちゃんに預けていたが。


「この度は長い間連絡も取らず申し訳ございませんでした」

「おう」

「決してあきや姉さんをないがしろにしていたわけではなく」

「ほう」

「いつもの病院にも行きましてそこまで酷くはないと診察してもらい装具も付けていただいて日常生活を送っていいと言われました」

「そうか」

「だからあきや姉さんに怒られるかもと考えてしばらくバックレよ・・・あヤベ」

「アウトだ」


 グワシ


 赤い髪の女性、周平君の話からすると友人君のお姉さんなのかな?そのあきやさんが周平君の頭部を掴む。


「アイタタタッ!ちょ、あきや姉さん!潰れる中身が出る!」

「大丈夫だ馬鹿弟もさっきまでしていたが脳みそは出ていない。他の液体は出て気を失ったがな」

「それ涙や鼻水、涎が出るくらい痛くて失神するんだろう!しかもあの馬鹿が失神ってどのくらいやってたんだよ!」

「大体三十分ぐらいか?気を失ったあとも強弱付けてやったらビクンビクン動くんだぞあいつ」

「それ絶対しちぃけないやつぅー!あんた本当にメディカルトレーナーかよ!」

「馬鹿野郎、お前の身体の管理をしているのは俺だぞ。あとメディカルトレーナーという国家資格はないからな」

「え、マジで?アタタタタ!」

「お前は心配させたから座敷で少し説教だ」


 ええと周平君がいきなり土下座して謝罪し始めたと思ったら自分から本音を言ってアイアンクロ―?


「眞子ちゃん気にしちゃ駄目だよ。閑名宅では常に状況が高速で流れていくから、基本は見るだけで頭に入れちゃ駄目。事前に教えなかったのは異常すぎる情報が多すぎて信じてもらえない可能性が多かったから。周平もここでは子供に戻っちゃうからあまり頼れないと思って」


 湊ちゃんが小声で教えてくれる。けど、それって事前に教えて欲しかったなぁ。あと内容が都市伝説の対応策みたいだよ。


「おう湊、直で会うのは久しぶりだな。いつ以来だ?」


 あきやさんの視線が私達の方に向く。

 それだけで私の身体は石の様に固まった。なんだろう蛇に睨まれた蛙?この人には絶対に勝てないと心が脳に訴えてくる。


「お久しぶりあきや姉さん。周平の病院でのリハビリが終わった時が最後ですから半年以上ぶりかな」


 湊ちゃんは平然と受け答えをしていた。凄いよ湊ちゃん、それは慣れなの?


「たまにはウチに来い。お袋が湊が来ないって寂しがってたぞ」

「槍ジジイが邪魔してこなければ周平についていくんですけど」

「チッ!とどめは刺しただろうな」

「さすがに私も法に触れることはしたくないので」

「家訓に身内は殺すながなかったら俺が殺るんだが。で、そっちが馬鹿弟が迷惑かけた嬢ちゃんか?」

「は、ひょはいっ!」


 いきなり私に話しを向けかられたから変な返事が出ちゃった。

 あきやさんが土間に降りて私に近づく。ライオンがのっそりと近づいてくるようにしか見えない。


「馬鹿弟がすまなかったな。あいつは人との距離感が上手いようで、ここぞという人にはへまする駄目な奴なんだよ。どうか見捨てないで付き合ってくれないか」


 私より圧倒的に強そうな人が頭を下げてきた。


「あきや姉さんは少し怖いけど閑名家で唯一まともな人だよ」


 湊ちゃんは耳元で教えてくれる。


「あ、頭を上げて下さい。少し迷惑な行動と思いましたけど、周平君が仲立ちしてくれたので問題になりませんでしたし。仲立ちがなくてもちょっとギクシャクして仲直りしたと思います。だって友達ですから」


 まあ友達ではなく友達同盟だけど。

 頭を上げたあきやさんは不思議なものを見る目で一度私を見た後、大笑いした。


「いい嬢ちゃんだ!俺と初めて会ってそれだけちゃんと話せる女なんて湊以来だぞ。あの馬鹿弟は良い子を選んだな!」

「私の親友ですから」


 湊ちゃんが胸を張って言った。


「おう良い親友だ大切にしろよ湊」

「あの湊ちゃん、恥ずかしいよ」


 やめて何か彼女自慢している人みたいだよ湊ちゃん。


「自己紹介するのを忘れていたな。俺は友人の姉の閑名秋夜だ。秋の夜であきやだ、これからよろしくな」


 秋夜さんが握手を求めてきた。行動が男っぽいが私も手を出し握る。


「私は坪川眞子です。眞子の眞はええと」


 こういう時に伝えにくいんだよね私の名前。


「それなら知ってるから大丈夫だ。SNSで湊から教えてもらったからな」


 ニヤリと笑う秋夜さん。

 グルンと首を動かして湊ちゃんを見る。こちらもニヤリ笑いだ。


「実際に会うのは久しぶりだけど普通に連絡は取りあってたんだ。友人君が眞子ちゃんに迷惑かけたのは教えとかないとね」


 それは私に教えておくべきことじゃないかな湊ちゃん。本当に親友?


「あの馬鹿今日の朝にお前らが泊まることを言ってきたぞ。それと眞子に迷惑かけたこともその時に言ってきたから気絶するまで頭を潰してやったんだ」

「それは自分が悪いことをした自覚があったのかな?でも恥ずかしいからギリギリまで黙ってたとか」

「なんだよそりゃあ、ガキかあいつは!」


 また大笑いする秋夜さん。さっきまでの恐怖するような威圧感は無くなっていた。


「あの秋夜姉さん・・・そろそろ外してほしいのですが」


 忘れていたけどさっきまでのやり取りのあいだずっと周平君はアイアンクローされたままだった。

 私も余裕は無かったので無視してたけど。


「お前はこれから座敷で説教だよ」

「馬鹿と眞子さんの仲立ちで免除というのは」

「それと俺に会いたくなくて来なかったのは別だろうが。二人が泊まる部屋は俺の部屋だからな。湊は眞子を連れて行ってやれ」

「アイサー」


 秋夜さんは周平君をアイアンクロ―したまま引き摺って廊下の奥に歩き始めた。片手で男の人を引き摺ることが出来るんだ。


「湊ぉ~助けてくれぇ~」

「頑張って反省してね。ちゃんと周平が秋夜姉さんに会いたくなさそうにしていたのは毎日連絡して教えていたから。物理的には秋夜姉さんじゃないと周平は効果がないんだよね」


 ひでぇよ~の言葉とともに秋夜さんと周平君は奥に消えていった。


「あの人が閑名家の頂点に立つ暴君閻魔の秋夜姉さんです」

「いまさら言う湊ちゃんは酷い子だと思います」


 槍ジジイはいいとしても、秋夜さんのことは教えてもらってほしかった。せめて髪が赤くて男口調の女の人ぐらいは。


「秋夜姉さんは暴君だけど閻魔様のように悪い事をした人にしか力は振るわないからね。眞子ちゃんは絶対に安全だからちゃんと自分の目で見て判断してほしかったんだよ」


 う~ん、確かに先入観がない方が良いのかも。いや騙されないよ!


「秋夜姉さんと友人君の両親だけど、秋夜姉さん情報では豪華客船で東南アジアを巡っているのでゴールデンウイーク中は会えません」

「また後付け情報!?」


 私も昨晩知ったんだよぅと言ってるけど信用できない。

 本当に三人と友達になって良かったのだろうか。少し考えちゃうよ。


「湊ぉー、人を暴君閻魔とか言ったなぁ!風呂に入ったら乳揉みしだいてやるから覚悟しとけぇ!」

「ピェッ!」


 奥から秋夜さんの声が響いてきた。

 あ、湊ちゃんの怯える姿可愛い。

 秋夜さんかなり離れているけど聞こえるんですね。




周平「閑名家身体能力最強が秋夜姉さんです」

湊「性格は男ですが中身はちゃんと乙女で、ちょっと体格いいアイドルが好きです」

秋夜「人の個人情報を流す奴はどいつだぁ~」

ポキポキ(指を鳴らす音)

周平&湊「ヒェ!?」

眞子「雉も鳴かずば撃たれないのに・・・」


再投稿後書き


暴君な姉、皆の秋夜姉さんです。

この人お陰で過去編はまとまったような気がします(^^)

覇王様はこの人が原型ですね。超強くて姉御肌、でも狙った獲物(おとこ)は逃さない(*´ω`*)


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