閑名さんちの歴史
はい!バカップルがおかしくなり始めた元凶、閑名家のお話の始まりだよ~\(^o^)/
眞子視点
閑名家。
その歴史は戦国時代まで遡る。
ある武将が敗戦によって逃げ落ちた。深手を負った武将は山中を進み、川で喉を潤し三日三晩さ迷い歩いたという。
やがて体力が尽きた武将はそのまま山の中で意識を失った。
次に武将の意識が戻ると目の前で焚火がされ木の串に刺さった肉が焼かれていた。
あまりのいい匂いにわき目も振らず肉に齧りつく。
全てを平らげて落ち着いたところで焚火を挟んだ向こう側に男がいることにようやく気付いた。
男は近くの村の農民らしく、山中にキノコを採りに来たらしい。そこで倒れていた武将を見つけ介抱して起きるまで見守っていたようだ。肉は近くを通った猪を石で殴り殺したものらしい。
落ち武者狩りにあうと覚悟した武将だが男は襲うわけでもなく、怪我が治るまで村に居ればいいと言ってきた。
武将の怪我は酷く自分で立つこともままならず。男の申し出を受け入れる。
男は武将を軽々とかるって山を下りた。
男の村は十数名の子供と年寄りだけが住む村だった。
武将が年寄りに聞くと、体が弱って山に捨てられた年寄りや食料の不足で捨てられた子供を男が拾ってきて小さな村を作ったそうだ。
武将は村に温かく迎え入れられた。
男が獲ってくる猪や鹿を捌き、老人達と草鞋や冬に備えた保存食を作り、子供達と畑の世話をする毎日。
しばらく経つと武将も殺伐とした戦ばかりの生活より、村の穏やかな生活を好むようになっていた。
だがそんな穏やかな日々はそう続かなかった。
武将に追っ手がかかっていたのだ。
男が追っ手達を見つけたときにはもう村のすぐ近くだった。
「私を縄で縛って追っ手に差し出せ、村を守るためにはそれしかない」
武将は覚悟を決めていた。いつかは追っ手がやってくるの知っていたからだ。
「馬鹿を言うなお前を差し出しても、この村は匿ったとして皆殺しにされるだけだ。それよりも年寄りと子供たちを山に逃がしてくれ。俺は村で追っ手共を追わせないようにする」
怪我の後遺症で戦働きの出来なくなった武将はそれでも男と言い争ったが、村人を守りたい男の想いをくみ取り、山に村人を逃す役目を引き受けた。
「ならこの刀を受け取れ。私が持っていた最後の武士の心だ」
「おお、これなら追っ手を返り討ちに出来るな」
男は笑って武将から刀を受け取った。
いくら男が獣を容易く獲ってこようとも何十人もの武装した武士には勝てない。それでも万が一に賭けて武将は刀を渡したのだ。
武将は老人、子供を引き連れ山の中に逃げ込む。
数日が経って村に戻るとおびただしい量の血が村中にばら撒かれ、その中心に男が倒れていた。
「その後は武将がそこに村を再び作り、発展させこの地方を征服して治めた。これが私が調べた閑名家の歴史だね」
湊ちゃんが語ってくれたのは、友人君の家の歴史だった。
今、私と湊ちゃんと周平君は友人君の自宅に向かっている。
ゴールデンウィーク前に周平君の装具は外れていた。
周平君のおかげで友人君とギクシャクした関係にならなくてすんだあの日、ゴールデンウイークは友人君の自宅に二泊三日でお邪魔することになった。
ときどき三人の会話に出てくる謎の閑名家、道場があるのでも興味は惹かれたけど友人君を恐怖させるお姉さんの存在に、襲撃してくる槍持ちのお爺さん。私じゃなくても普通は興味を持つだろう。
そして友人君宅にいく道すがら湊ちゃんが教えてくれた閑名家の先祖のお話し。
「どれだけ友人君は面白い話を引き出しに隠しているんですか」
「私も全部は知らないね。周平は何か知ってる?」
「俺はその先祖の事も知らなかった。友人からは先祖がヒャッハーしてここら辺の土地を分捕ったとしか聞いていない」
「あそこの家族はみんなそんな感じなんだよね。だから私は町の歴史資料館を調べたんだけど」
「資料館に?」
「さっき言ったようにここら辺一帯は閑名家の領地だったんだよ。だから閑名家だけで資料館があるの」
頭の処理が出来なくなりそうだ。私の脳内フォルダにも限界はあるんですよ。
「だから友人の家は土地を貸したり、アパートやマンションを建ててその収入で暮らしている。かなりの金持ちですな」
「私もお金持ちと言われるけどパパが会社を辞めたりすれば規模はかなり小さくなるから、友人君のほうが本当のお金持ちだよね」
二人の会話についていけない。
「ええと少し整理させてください。友人君の祖先の武将がこの土地周辺を領地にしたんですよね」
「面白くなりそうだったから言わなかったけど男は生きてて疲れて寝てただけで、実は女性だった武将と一緒になって閑名家を起こしたんだね」
「なあー!?」
まさか親友に裏切られているとは。というか生きてたの?武将は女の子?情報が多すぎる!
「そんな面白いの俺は知らなかったの?」
「興味が無いといって資料館についてきてくれなかった周平には教えてあげませーん。いやぁ資料館は凄かったよ。武将の男への惚気話が延々と書かれてある日記とか、他にも子供たちが家臣になって今でも閑名家に忠誠を誓っているとか盛り沢山」
「ゴールデンウイークの後半に資料館に一緒に行きましょう湊ちゃん」
湊ちゃんはいいよーと返事してくれる。
友人君と友達同盟を結んだのを後悔しかけてましたが、実は凄い資料の宝庫だったなんて同盟を組んで正解でした!
湊「資料から見ると旦那が圧倒的武力で領地を攻めとったみたい」
眞子「それならもっと大きな領地にならなかったの?」
湊「奥さんと子供にたまにしか会えなくなるからいらないって書いてあったね」
眞子「是非とも!是非とも!その資料が見てみたい!」
槍ジジイまで書けなかったよ・・・(;´Д`)




