閑話 眞子と友人の間は友達同盟
眞子視点
「まあ気にすんなよ。謝罪されて受け入れたんだろう?だったらさっさと忘れるのが一番だって」
「うるさいです・・・。理性は納得しても心はへこんでいるんです」
私はいま下校中だ。
友人君が同じ方向に用事があるからと付いて来ている。
「梅ちゃんなんかプリン一つで完堕ちだぞ。貰ったプリンを掲げてクルクル回るって本当に大人の女なのか?」
「梅田先生は大人で教師だから切り替えが早いんですよ」
そうでないと困ります。クルクル回る姿が小学生に見えたとしても先生は大人です。
「一人で考えたいんです話しかけないください」
「無駄無駄それ。大抵が堂々巡りで落ち込んでいくだけだから、吐き出した方がマシだって」
悔しいことに友人君の言うことは正しいです。
いつもは適当に生きてそうな人の発言とは思えません。
「ほーら、ここに何でも聞いてあげる人物がいるぞ。秘密に出来るのは周平のことでわかっているだろう?」
手を広げてさあと笑う友人君は・・・胡散臭さ過ぎた。
ハンコを買えば幸せになりますよと言っている怪しい人並みに。
確かに秘密は守ってくれるだろう。本人がばらそうとしない限りはどんなに周囲に迷惑がかかろうとも秘密にしてくれる。ニヤニヤ笑いながら。
はあとため息が出る。
自分に相談できる友達がいないことに少し悲しくなる。
そして話せる相手が友人君だけということに情けなくなる。
「私、人間観察が趣味の一つなんですよ」
「そりゃ悪趣味だな」
うるさい。自分でもわかってます。
「昨日の朝、周平君がそんな状態だなんて少しも気づけませんでした」
「周平の奴は顔に出ないから気づくの無理じゃね。昼飯までクラスの全員も気づかなかっただろ?」
「友人君と湊ちゃんはすぐに気づいたじゃないですか」
「俺は幼稚園からの親友で、湊ちゃんはストーゲフンゲフン!まあ周平の事に関しては愛だろ愛」
ストーカーと言いかけましたね。弱みの一つで覚えておきます。
「私に教えてくれてもいいじゃないですか」
気づかなかったのも落ち込む原因ですが、周平君と友人君が私に教えなかったことも落ち込む原因の一つだ。
「んー、一人だけハブられたことが悔しいのかな眞子ちゃんは」
「言わなくていいです」
人に言われるとムカつきます。
「あの時は言えなかったんだよ。だって眞子ちゃんは怪我を知ったら湊ちゃんに教えるだろう?」
「当たり前じゃないですか」
首を傾げてしまう。
湊ちゃんは周平君の彼女なのだ。一刻も早く知らせるのが当たり前だ。
「そうだよな。普通はそれが当たり前なんだよ。だから眞子ちゃんには教えられなかった」
ニヤニヤ笑う友人君。この人は私で遊んでいる。
「どうしてですか」
「周平が湊ちゃんに隠したがっていたから。な、眞子ちゃんに教えられないだろう」
「・・・そうですね。それなら私には教えられませんね」
友人君と私では優先順位が違う。
友人君は周平君のを優先し、私は湊ちゃんを優先する。同じ友達だが親友と言う分の差があるのだ。
そして厳密には私と友人君は友達ではない。
友達同盟を組んでいることになっている。
「悪いが眞子ちゃんのことを友達として見れない」
湊ちゃんの家にお泊りして四人で遊んで帰宅するとき友人君が送ってくれることになった。
しばらく二人でお泊りからさっきまで遊んでいた事を会話していると、唐突に友人君が言ってくる。
え、それはその友達と見れないということは・・・えぇ!
「まて待ってその表情でわかる。好きな女性として見ているって意味じゃない」
慌てて訂正する友人君。
私はホッとする。でも友達として見れないというのは?
友人君は説明してくれた。
自分と同列以上と認識しないと人が物にしか見えないと。
殆どの人がそこら辺にある石と同じようにしか見えないらしい。
だから笑われても平気。笑い袋のようだと。
「でも友人君は友達たくさんいますよね」
「あれは知り合い。いくら物でも付き合いをしないと不便だからな」
肩をすくめる友人君。
「子供の頃に精神科の病院にも家族に連れられて行ったよ。サイコパスに近いと診断された。自分で調べたらサイコパスそのものだったけど」
違う、とは言えない。
軽くだけサイコパスを調べたことがあるけど、いくつか友人君の行動は当てはまっていた。
「犯罪や大問題を起こすようなことはしないぞ。社会的に適合したマイルドサイコパスてやつかな」
サイコパスでも全員が犯罪を犯すわけではない。大半が自分でも気づかないまま社会で生活している。友人君の症状は隠していれば生活で困ることは無いだろう。
「どうして私に教えたの?」
教えなければそのまま友達としていれたかもしれない。でも友人君は私に教えてくれた。
「あーそれは眞子ちゃんが湊ちゃんの友達になったからな。さすがにずっと一緒にいて騙し続けるのがめんどい」
いつかバレて破綻するのなら最初にということだろう。興味が無い筈なのになんて誠実なのだろうか。
「今の私はモノと変わらないんですか」
「湊ちゃんの友達で少し上かな。面白い漫画本ぐらいか」
「それはほんの少しですね。では友人君に同列と認められるにどうすればいいですか」
湊ちゃんの友達でいるには周平君もそうだが友人君にも認められないといけない。
友人君が執着する何かをあの二人は持っているのだろう。そして周平君は私より友人君を選ぶ。長年の親友を彼女の友達の為に切り捨てることはしない。
だから私がその中に入っていくしかないのだ。
「同列ね・・・湊ちゃんみたいに愛の為に全てを捨ててもいいとか、周平のいかれっぷりぐらいあればいいんだけど流石に無理だしな」
周平君がいかれている?ああ、中学の頃みたいなことをすることかな。それは無理だ。
湊ちゃんの周平君への執着は凄そうだし。
同列、同列・・・あ、ひとつあった。
私にはどうでもいいのだけれども、人に話すとまだ知らないだけと言われることだ。
「友人君これはどうかな?」
私は話してみる。
友人君は目を剥いて驚く。
「そりゃあ凄い。俺みたいな奴じゃなく普通に見える眞子ちゃんがそんなんだなんて驚くわ」
う~ん不思議な気分。私の中ではそれが当たり前なんだけどな。
「でもそれだと眞子ちゃんがそれを意識したら、俺は周平達から眞子ちゃんを即座に切り離しちゃうよ?」
悪魔が試すようにニヤニヤ笑う友人君。
「いいよそれで」
どうされようとも私にないものだ。いくらでも試して調べてほしい。
「でも私も友人君が湊ちゃん達の為にならないと感じたら切り離すからね」
でも私ばかり損をしたので少しはやり返そう。
さっきよりも友人君は驚いて爆笑した。
「そりゃそうだ!俺も気を付けないといけないな」
一応釘を刺していおかないと、自分からサイコパスとかいう人だ。周平君達も何かの拍子で飽きられるのかもしれない。その時に友人君は全部壊してしまう可能性があるのだ。
「あ~さすがに今から友達というのもな」
「友人君の方から見れないって言ったからね」
友達として見れないとか、異性として見れないよりある意味酷くないだろうか。
「湊ちゃんと周平君を間に挟んだ友達ということでどうですか?」
「普通の友達とあまり変わらないように思えるんだが」
首を傾げる友人君。
「友人君のせいで複雑になり過ぎたんです。じゃあお互いが親友の為に監視する友達同盟でどうですか!」
さすがに私も疲れたよ。
「友達同盟・・・いいなそれ!」
いいんだ・・・。まあ相手を見張っているのは本当だけど。
そして今、その友達同盟を二日目にして破棄したくなっている。
友人君がこんなウザ絡みしてくるとは思ってみなかった。
アフロでタンクトップの時の方が可愛いと思えるぐらいだ。長年の付き合いの分、私が不利なのをつついてくる。
よくこんな人の親友を周平君は続けられたんだろう。尊敬する。
私達は湊ちゃん達カップルを挟んで奇妙な同盟関係になった。
「なあなあ眞子ちゃん。やっぱり同盟っておかしくねえ?」
「いえ同盟でいいんですよ」
最初は友人君に友達じゃないと言われましたが、今は私が友達じゃないと言います。
友達になったら今以上にたちが悪くなりそうですから!
眞子「友人君のお姉さんに本を送るの実行してください」
周平「何があった!?」
眞子「少しは大人しくさせないと私の身が持ちません」
周平「マジで何があったの?」
友達同盟ていったいなに?
友人の設定が二転三転してよくわからない状態に(;´д`)
眞子が教えた秘密は友人の興味をかなり向かせることになりました。内容は秘密です(о´∀`о)ちゃんとありますよ。
再投稿後書き
ここで友人は眞子のことを気に入ったんでしょうね(*´∀`)




