眞子の過去の傷、湊の今の傷
湊視点
「はいこれ水分補給」
「あーありがとー」
コップを置くとテーブルの上に上半身を預けている眞子ちゃんが返事する。
・・・自分の胸をクッション替わりにするなんて二次元の中の事だと思っていたけど、目の前でされるとなかなかの迫力だ。
周平と友人君が現実にありうるのかで彼女の私の前で論争したことがある。
持たざる者の私の前でそんな暴挙は許すことは出来ないので、その時は二人まとめてボディーブローで仕留めた。
今なら許してあげれるような気もする。二人が絶対に見れない光景を私は独り占めしている。
・・・いやイラッとしたからビア〇カとフ〇ーラで論争してもらう。
ティ〇ァ、エ〇リスより業の深い問題かもしれない。
でも周平達は一緒にいるとすぐ馬鹿になるから、眞子ちゃんの前で争ってくれればいい資料になってくれるだろう。
私?もちろんビア〇カ派だ。幼馴染は大切にしないと嫉妬の炎で燃やすよ。
「眞子ちゃん・・・ストローがあるからといってその飲み方は男性の注目を浴びるし、女性の大半の嫉妬を買うと思うよ」
「これが楽なんですー」
眞子ちゃんはコップを持たず、テーブルに置いたまま飲んでいた。
胸部装甲のおかげで頭部の位置が高いのでストローさえあればそのまま飲めるのだ。
なんだろう周平は今の私を愛してくれているか満足しているはずなのに悔しさが募る。同性としての羨ましさなのかもしれない。だって私だとクッションでも挟まないと無理な行為だ。羨ましくなんてないもん・・・。
「あーオレンジジュースが体に染みますねー」
「私の好みで持ってきたけど他のがよかったかな?」
「いえいえこれで十分です。このオレンジジュースかなり美味しいんですけど」
「そちらは少しだけお高いのになっております」
「おいくらで?」
「普通のより200円ほどお高いです。私の今のお気に入りですね」
「うわぉう」
値段に驚いた眞子ちゃんは今度はちゃんと手で持って飲み始めた。頭部は胸の上に乗せたままだけど。
「今日は少し疲れました」
ぽつりと呟く眞子ちゃん。
今の脱力状態の眞子ちゃんを見ればわかる。慣れない場所で気を張っていたのかもしれない。
「・・・実は友達の家に泊まるのは初めてなんですよね私」
眞子ちゃんはストローでコップの中の氷をゆっくりかき回す。
その目はオレンジ色の中で動く氷を眺めているようで、何も見てはいなかった。
「小学生の頃からまあ、成長が早い方でして」
「うん、お風呂で堪能させてもらいました」
もうっ!と軽く怒る眞子ちゃん。
「ええと、まあ男子にそこそこ人気があったんですよ。好意の裏返しでいたずらしてくる子もいて」
はぁ、と息を吐きだす眞子ちゃん。
「当時人気があった男の子に告白されてそれを断ったんです。そしたらその男の子を好きな女の子達にいじめられるようになりました。男の子もフラれると思ってなかったのか、その後は私を中傷すようなことを言いふらされて。六年生の一年間でしたけど辛かったですねー」
軽く言っているけど子供にそれは地獄に近いのかもしれない。自分の意思とは関係なく成長する身体、勝手に好意を持ち断られたら傷つけてくる傲慢、知らないうちに嫉妬され悪意をぶつけられる。
どれだけ怖かっただろう。どれだけ理解できなかっただろう。どれだけの絶望だったろう。
本人でない私にはわからない。
「中学は小学校の同級生がいない結構いい所の進学校に通いました。地味な恰好をして眼鏡をかけて猫背になって、いじめられるのは嫌だから人当たりは良くして。いつの間にか委員長キャラになっていましたけど」
あ、委員長キャラは自覚してたんだ。
「恋愛関係は事前に全部潰しましたね。趣味の事もあったので友達関係は浅く広くにしてたから学校以外で友達と遊ぶことがなかったんですよ。だから友達の家に泊まりにいったことは一度もなかったの」
眞子ちゃんが顔を上げて私を見た。
「高校に入学してまた委員長になってまた中学生の頃みたいにしないといけないかな思ってたら予想外のことが起きたんだよ。隣は白目でよく寝てる男子で、副委員長は時々胸を見てくるけど親切な男子で」
よし明日の朝、周平はタイキックだ。私の鍛えた脚はなかなか痛いぞ。
「そしてある日私に嫉妬して提出物を奪った湊ちゃんに出会ったの」
「あー、あの時はご迷惑おかけしまして」
「いえいえ、こちらはいい資料になりましたので」
お互いに苦笑しながら頭を下げる。
「その後は昼食に誘われて、猫を被らないで同級生と楽しくお話しできたのは久しぶりだったなぁ」
「えっとね。そのお礼で昼食に誘ったことになっているけど・・・」
そこには眞子ちゃんに謝罪しないといけない思惑があった。
「わかってるよ。周平君に恋をしない、湊ちゃんの横にいる周平君を否定しないか私を測ってたんだよね」
私は眞子ちゃんに罪悪感を抱く。
そうどこまでいっても私は周平を中心に動いてしまう。
だから友達ができても周平を獲ろうとするか、マイナスイメージを持つ子は全て切り捨ててきた。
何度か周平と友人君には注意された。
それでは親友は作れないと。
友人君は周平の親友だ。そこは私でも壊すことは出来ない。
案外、あっさりと友人君は離れていって周平は許してくれるかもしれないけど、少しでも周平に嫌われるのは嫌だ。
何年も友人君に嫉妬して私も友達として受け入れた。
嫉妬、そう私は嫉妬の塊だ。
周平を誰にも見せたくない。話させたくない。触れさせたくない。ずっとずっと私の檻の中にいてほしい。
それが出来ないことは理解してるし、人と関わらなければ生きていけない。
昔に比べて私も丸くなったものである。
周平と交際を始めてから友人君のような同性の親友が欲しくなった。
そのチャンスを周平が連れてきてくれた。
その子は周平と一緒にいても恋愛感情が無いように見えた。私が強引にことを運んでも周平との仲を否定する感情も見れなかった。
だから昼食に誘い、じっくり観察することにしたのだ。
友達に値するか測った。
今はその行動を後悔している。
友達になりたいと思っている人にしていい行為ではない。でも私の感情がそれを許してくれない。
今でも眞子ちゃんが周平に恋心を抱かないか、悪感情を持たないか私は測っている。
眞子ちゃんが傍に寄って来て私の頭を抱きしめた。
「そんな後悔した顔をしないで、私は怒ってないよ。私も大切な物を奪われたり否定されるのが嫌なことを知っているから」
「うん」
「私だって湊ちゃん、周平君、友人君をどんな人か測っていたんだから、おあいこです。湊ちゃんは周平君の為に少しだけ測るのが厳しかっただけだよ」
「うん」
「私も昔の事で友達が作れなかったから、湊ちゃんと出会えて嬉しいんだよ。湊ちゃんは?」
「私も嬉しいです」
凄いな眞子ちゃんは、周平というきっかけがあったにせよ。過去を自分で乗り越えた。
あと包容力が凄い精神的にも物理的にも。
周平に感触を教えてあげよう。羨ましがったらタイキックを追加するけど。
「はい私のお話はこれで終わり!湊ちゃんはなにかあります?」
「じゃあ、寝ながらでいいから私の昔話を聞いてほしいかな」
二人で一緒にベッドに横になる。
中学時代のお馬鹿な私と愚直な周平のことを聞いてもらった。
知っているのは当事者の私と周平、そして家族と友人君と友人君のお姉さんくらいだ。
親友の眞子ちゃんには是非聞いてもらいたい。
「なんでそんな話を寝る前にするの~」
しまった話し終えたら大泣きされた。
今度は私が眞子ちゃんを抱き締めることになる。
そんなに泣くことかな。
・・・泣くかも、病院あたりの周平はあまりにも格好良かったからドラマ風に話したし。最後の告白なんて女子は大喜びするかも。
「・・・次の次の次ぐらいで描いてもいいですか?」
私も周平狂いには自信あるけど眞子ちゃんの腐も大概だね。
眞子「次回作は友人周平です」
湊「鑑賞用、保存用、布教用の三部下さい」
眞子「その次は友人触手まみれです」
周平「友人の姉に送るので十部ください」
眞子「その次は普通に周平湊のラブストーリー中学生編です」
湊「全部買います!」
友人「???ナニヲイッテイルノカワカラナイ?」
オチをつけないと次の話が書けない筆者です。(´・ω・`)
周平と湊は自分たちの悩みに翻弄され、眞子は他人の悪意に翻弄されてきました。
眞子の腐は小さい頃からです。元からです。業が深いのです(;・ω・)
周平達にはそれぞれテーマソングがあります。
書くのに悩むときにはその曲を流しっぱなしして書いてます。
周平はAimerのIbegyou
湊は交際する前はsupercellの星が瞬くこんな夜に、交際後は平井堅の哀歌エレジー
二人一緒ならみとせのりこ&ダーナのこころ語り、たまにDAOKO&米津玄師の打上花火
眞子はnanoのアンハッピーリフレイン
友人はまだないですね
湊と眞子の曲を見つけなければ
周平がヤバいですね。最初の頃は湊と逆だったのですが中学生編の後から変わりました。




