湊さんの休日(映画デート編)
あの後、周平にママ達用のご飯を持たされて自宅に戻る。
リビングに入ると二人は呻き声を上げながらソファーの上で這いずっていた。
仕方ないので濃いめのコーヒーを淹れて、ご飯を用意する。軽めのサンドイッチとサラダなので合うだろう。
食べているうちに覚醒した二人に映画デートに出かけると伝える。
遅くなる前に帰ってくるように言われる。パパが今日は帰ってくるそうだ。
パパは結構大きな会社の社長だ。
家と会社までの距離があるので、週一、二回しか帰って来れない。引っ越しすればいいのだが、私の家族は一貫して今の家から引っ越す気はない。
私と周平もそうだが、両親もそれぞれに仲が良い。ママ達は徹夜でドラマを見るくらいだし、周平パパが朝から釣りに行っているのはパパと晩酌するための魚を用意するためだろう。パパも周平パパと飲むのを楽しみにしている。
両家円満、私と周平の未来は明るいのだ。
ママ達は食べた後、そのままドラマのセカンドシーズンを観るらしい。タフ過ぎる。
自分の部屋に戻り、デートの服を考える。
「う~ん、長時間座るからぴっちりしたのよりゆったりめの方がいいよね」
背が高い私はパンツスタイルが気に入っているが、今日はスカートの方がいいのかもしれない。
「よし。今日はいつもと違う恰好をしてみようか」
この前買った服を取った。
支度が終わり、服に合うパンプスを履いて玄関を出る。
すでに準備を終えていた周平がスマホを見ながら待っていてくれていた。
細身の柄の入った黒のパンツに、白のTシャツと黒のテイラードジャケットを着ていた。
以前に二人で選んだ服だ。
周平は身長差を気にしているのでスラリと見えるコーデにしていた。よく着ているので気に入っていると思う。
「待った?」
「いや丁度来たとこ・・・ろ」
いつもの挨拶しあっていたら、私を見た周平は停止した。
「ふふん。どう、驚いた?」
その場で一回転して周平に見せる。
今日の私は少し冒険した。
小花柄の黒の丈の長いワンピースに白のカーディガンだ。いつのも恰好とは全然違う。
「あ、ああ凄く驚いた。あまりにも湊に似合い過ぎて」
おっと素直な誉め言葉がいきなり来たよ。嬉しいじゃないか。
「周平も似合ってるよ」
「俺はいつもと変わらないぞ」
「男は似合う服を数着持っていればいいんです。ころころ変えられたら女性が困っちゃうしね」
「あー女性と合わない恰好をするのはダメだもんな」
「だから周平の服装は完璧です」
そういうものかと首を傾げる周平。まあ私が選ぶから大丈夫だ。
「よし、それじゃあ行きますか」
考えるのが面倒くさくなったのか、周平は左手を私に向けて差し出す。
その意図がわかり笑みを浮かべそうになってしまう。
やはり周平は私の最高の彼氏だ。
周平の手を取り恋人繋ぎをする。
少しだけ熱い周平の熱が私に伝わる。それだけで幸せを感じてしまった。
電車に乗り、地方でも大きな街に来た。
映画館は駅に隣接している大型商業施設の中にあるのでそう歩く必要はなかった。
先にチケットを買って、時間まで商業施設で暇をつぶす。
わたしが行きたいところを選び、周平はそれに付いて来てくれる。品物の意見を聞けば、自分なりの言葉を言ってくれる。
彼女や奥さんに付き合うのを嫌がる人は多いが、周平はそんなことは一切ない。一緒にみて楽しんでくれるし、私が一人で選びたいときは見える範囲にいてくれる。
ここまで出来る周平を何も見ないで批判してくる奴の気が知れないね。
昼食はドーナツを食べる。
少し足りないなと考えたら、周平が最後の一個を半分個してくれた。食べ過ぎになるから食べてくれだって。たぶん私の為に一つ多く買っていたのだろう。だって私が好きなドーナツだからだ。
まったりイチャついてると映画の上映時間が近づいた。
飲み物だけ買って入る。ポップコーンはドーナツを食べたのでお預けだ。
「実写化だけど続編はどこあたりなんだろう」
「1の後だと初めての戦からだろう」
上映まで映画の内容で盛り上がった。
「いやーあれ殆どCGなんだろう?最近の技術は凄いよな」
「人を大勢雇うよりも安上がりなのかもしれないね。あそこまでいくとじっくり見ても実写にしか見えないし」
帰りの電車内で映画の感想を話す。ストーリーではなく技術の話になるのは原作を読んでいるからだ。
「まあ、見に来てよかったな」
「そうだね」
電車の振動が心地良い。ウトウトしてくる。
「寝てていいぞ、駅が近くに来たら起こしてやるから」
「うん、お願い」
周平の肩に寄り掛かった。香水をつけていないのに周平からいい匂いがする。
そのいい匂いを嗅ぎながら気持ちよく私は眠った。
初めてデートのコーデなんて調べましたよ。横文字が筆者には謎言語でした。(;´д`)
短編時に社長令嬢と一般人が付き合うのはおかしいというのを、作品全否定の悪口雑言で感想欄に書かれました。
感想受け付けているのなら受け入れろよと思う方もいらっしゃるてしょうが筆者には無理でした。大人の筆者でもきつかったです。
短編も消そうとしました。しかし、その人以外の感想を書いていただいた方々のあたたかいお言葉を見て消さないと決め、連載版を書こうと奮起しました。
今回の話までで、湊の両親がどうして周平との交際を許しているのかを書けたかなと思います。
湊の両親は会社の創業者ですが、湊に無理して継いでもらおうなんて思っていません。そのうち部下に引き継いでもらって、悠々自適な生活でも送るでしょう。
あー!少しだけスッキリした!(о´∀`о)
当時の愚痴です(;・ω・)




