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第一ラウンド理不尽な生徒指導

ざまぁ回だけど、こんな奴もう書きたくないー!

??視点


 周平の奴、質の悪いのに掴まったな。

 昔から二人は絡まれることが多い。

 見てる分だけなら面白いだけで全くの無害なのに、どうしてちょっかいを出すのかね。

 ようやく付き合いだして、これからどんどん幸せになっていく二人に、身勝手な口出しをする何も知らんバカはいらんのよ。


 さ~て、助け船になりそうな人は・・・ああ、いたいたこの人なら大丈夫だろう。


「ちわーす」



周平視点


 俺は動揺していた。

 だって入学式のときに一度だけ見た、絡んだら面倒くさいなと思っていた教師が自分をフルネームで呼び止めるんだぞ。ホラー映画より恐怖だよ。


 ズカズカとこちらに来る湊の担任。

 

 眼鏡を掛けて高そうなスーツを着ている。その目は明らかに俺を見下していて生徒を見る目ではなかった。


「鳩山先生だよ」


 湊が小声で教えてくれる。


「なんだ教師の名前も覚えていないのか。昨日の式の時に教師は全員紹介されただろうが」


 湊の声が聞こえたのか鳩山はあからさまに機嫌が悪くなった。


 いやいや、自分の担任ならまだしも他の教師まで覚えるなんて無理だろ。一か月ぐらいかけて担当の教科の先生の名前を覚えるぐらいで、あとの関わり合いの無い人物の名前なんて覚えないぞ。


 やばいな会話してもいないのに質の悪い教師だとわかった。

 湊が敵視するのもわかる。


「それは何だ」


 鳩山が指差したのは俺と湊が繋いでいる手だ。

 校門は梅ちゃん先生側を通ったので、間にいる生徒達で見えなかったようだが生徒用の玄関は鳩山側の方向にあった。通り過ぎようとしたときに気付いたのだろう。


「校内で手を繋ぐなどあってはならないことだ。生徒指導室に来てもらおうか時東周平」


 ・・・は?

 こいつは何を言っているんだ。手を繋ぐぐらい普通に注意すればいいだろう。それが生徒指導室に呼び出しだと。

 話が飛び過ぎて意味が分からん。


 周囲の生徒も引いてるぞ。

 上級生はああ、またかというような表情をしている。鳩山の理不尽さを知っているのか。


「待ってください。周平は動けなくなっていた私の手を引いて歩いてくれただけです。それだけでどうして周平だけが生徒指導室に呼び出さなければいけないんですか」


 湊が反論する。焦っているように見えるのは鳩山の行動に驚いているのかもしれない。


「それならますます来てもらわなければならない。無理矢理、穂高君の手を引いたことになる」


 湊が呆気にとられている。

 俺もビックリの謎理論だ。

 こんなのが通ると思っているのだろうか。思っているんだろうな。だって上級生達の目が諦めろと言っている。


 鳩山は小さな傷を大げさに膨らまして、自分の正当性を謡うタイプなのだろう。生徒、たぶん先生もその被害にあっているのかもしれない。


 あ~、やばい湊がキレかかっている。対処を考える時間はなかった。


「わかりました。このまま行けばいいんでしょうか」


 声を上げようした湊を手で制して鳩山に聞く。

 湊の視線が俺に向いているのがわかる。だが今は鳩山から視線を逸らすことが出来ない。

 逸らして湊を見たらそれも鳩山が俺達を攻撃する切っ掛けになるかもしれないのだ。


 湊ならこの状況でも切り抜けることも出来るだろう。


 でもこれは俺のミス。

 湊が敵視する相手は殆どが俺関連である。そういう人物の前で発言を許すような行為をしてしまったのは俺だ。


 それに湊にはあまり危険なことはしてほしくない彼氏としての想いもあるのだ。

 すでに昨日の入学式で、湊は鳩山から良い感情を向けられていない。そのうえで、朝の登校時の生徒たちの前で鳩山の顔を潰したらどうなるか。


 おそらく鳩山の負の感情は湊に向けられる。

 残念ながら今の時点で完全に鳩山を潰せない時点で、湊ではなく俺の負けだ。

 だって彼女の高校生活をバカの相手に費やせたい彼氏いないだろ?


 今日の所は大人しくしておこう。しかし生徒指導室か、高校生活二日目でいろんなイベントが起こるな俺の人生。


「何をやっているんですか鳩山先生!」


 大人しく連行されようとしたら第三者が乱入してきた。

 梅ちゃん先生だ。

 なにか起こっているのに気づいて来てくれたようだ。


「何もしていないのに時東くんを指導室に連行するなんて間違ってます!」


 梅ちゃん先生、かなりの気勢を張っている。

 でも梅ちゃん先生は平均女性よりかなり小さいので可愛く見えてしまう。周囲の生徒の顔がほっこりしている。俺もなのかな。


「何を言っているんです梅田先生、校内で手を繋ぐなど十分な不純異性交遊ではないですか。生徒指導主任の私が判断しているんですよ」


 え、これが生徒指導主任なの?任命したやつ頭おかしくないか。


「う、ううでもぉ・・・」


 言い負けるのが早いぞ、頑張れ梅ちゃん先生!


「なら主任権限で時東を呼び出します」


 うわー権力まで使ってきたよ。

 先生の中では嫌われ役の人もいる。そういう先生は生徒が間違った方向に行かないように厳しく接するためだ。指導が間違っていなければ、案外と生徒に人気がある。


 しかし鳩山はダメだ。

 自分の考えが一番正しいと思っているヤバい奴だ。本当に誰だよこんなのに権力持たせた奴。


「それなら私の権限でその呼び出しを止めようか」


 駄目かという雰囲気が辺りに漂った時、新たな乱入者が入ってきた。


 乱入者は校長だった。

 玄関の方からやって来たようだ。

 思ってもみなかった校長の登場にどよめきが起きる。


 あ、校長の後ろに友人がいた。

 そういえばいつの間にかいなくなっているな。もしかして校長を呼んできてくれたのか。


「校長・・・!」


 鳩山がうろたえている。


「何をやっているのかな鳩山先生。登校初日に指導室に生徒を呼び出すなんて、よほどのことがなければできませんよ」

「そ、それは・・・」

「鳩山先生は生徒が手を繋いでいるというだけで、不純異性交遊だと決めつけて指導しようとしました!」


 言い淀む鳩山のかわりに梅ちゃん先生が答える。

 凄いぞ梅ちゃん先生!簡単に言い負けたとは思えない速さだ!


「ほう、手を繋ぐのがな」

「そ、そうです!十分な不純の行為に繋がります!」


 鳩山が息を吹き返した。


「どこがかな?」

「え」


 簡単に校長に止められたが。


「どうすれば手を繋ぐことぐらいで、不純の行為に繋がるのか私にはさっぱりわからない」


 校長が頭を振る。


「私達が相対するのは高校生だよ。勉強やスポーツだけでなく人間関係も学ぶ者達だ。その中に友人、先輩後輩、それに恋愛もある。まさか君は生徒に恋愛してはいけないと生徒に教えるのではないだろうね」

「それは・・・学生は勉強が本分ですから」

「それは違うね。学校の授業だけではない、勉強以外の事も学ぶことが学生の本分だ。それを指導して導くのが教師なのだよ。君の身勝手な価値観を生徒達に押し付けないでもらえるかな」


 鳩山は下を向いたまま動かなくなった。


「おおう、もうこんな時間だ。一年生は今から長い長いHRだ。眠らないでしっかり受けるように。上級生も一年生に負けないように授業を受けなさい。はい、解散!」


 校長劇場に生徒達からの称賛の拍手が沸き上がった。


「マジで助かった」

「おう、ジュース一本な」


 あの後、興奮している生徒に紛れて友人と合流した。

 やはり校長は友人が連れ出してくれたらしい。

 鳩山は校長に連れていかれた。梅ちゃん先生はそのまま校門で見張りを続行だ。


「私も奢るよ」

「おおぅ」


 珍しい。湊が友人に奢るなんて本当に感謝しているのだ。

 そして湊に奢られることに慣れてない友人は変な声が出る。


「校長先生が来てくれなかったら、正直どうしていいかわからなかった」


 湊は大きく息を吐いた。


「マジで?湊ちゃんなら強引に場を収められるんじゃねえの」

「私がやったらあそこにいる生徒を強引に味方につけて鳩山を叩きのめすしかできなかったかな」

「それは校長のやったことと同じじゃないのか」


 俺の疑問に友人も頷く。


「立場が違うよ。私は生徒で、あっちは先生で生徒指導主任、実際にやったら相当恨まれることになるだろうね。その地位を保持したままで」


 ブルリと震える湊。

 それは本当にシャレになってないな。

 

「校長先生なら立場は上だからね。恨んでもどうしようも出来ないよ」

「え、じゃあ俺って滅茶苦茶良い仕事したの?」

「教頭先生では微妙なところだね。自己弁護能力は高そうだったからあいつ」

「奢りジュース二本でいいぞ」


 ジュース二本で喜ぶ安上がりな友達だ。


「まあ、私は動かなかったけどね」

「なんで?周平のピンチじゃん」

「・・・周平が私をかばってくれたから、かっこよくて邪魔したくなかったの」

「うげ~大量の砂糖をありがとうございます。甘すぎて気持ち悪いので先に行くわ~」


 友人は見えない何かを吐きながら玄関に向かった。

 俺?湊は可愛いなと思っただけだよ。


「しかし校長先生は凄かったね。経験の差かな」

「何が?」

「鳩山の恨みが向かないように私達の事を出さないように発言してたよ。そして手を繋いでいるのが問題だったのに、いつの間にか学生の本分になって、鳩山の教師としての問題にすり替えてるの。それも短い時間で、そして生徒達を味方にして私達をうやむやにして逃してくれた。鳩山を連れて行ったのは校長先生自身を恨ませて私達に向かうのを減らしてくれたのかな?」


 うげぇ、あの人の好さそうな校長そんなにしてたの。


「たぶん、鳩山は人格に問題ありで担任と生徒指導主任を降ろされるかな。初日に問題を起こして校長に注意されてそのままじゃ保護者から睨まれるだろうしね」


 その保護者に情報を流すのは湊さんなんですね。容赦ないな。

 

 俺が我慢してその場だけでも終わらせようとしたことが、優秀な人がするとあっという間に解決したことに地味にへこむ。


「確かに校長先生は凄かったけど、私を守ろうとしてくれた周平はもっと凄いよ。惚れ直しちゃった」


 照れるじゃないか。

筆者「実際にいた教師を参考にマイルドにしたのが鳩山です。昔はいたんですよこういう人が。あまりの理不尽さにキレた生徒にぶん殴られて、大人しくなっていつの間にかいなくりましたが。どちらもざまぁされたな( ̄▽ ̄;)」

鳩山を担任、生徒指導主任に推薦したのは教頭という事実。教頭を連れてきたらやばかった。

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