グラン、覚醒 その4
普段は小説を読む側のド素人が暇つぶしに書いてみた作品ですので、読者の皆様も暇つぶし感覚で気ままに読んでいただけたら幸いです。また、本業の方が忙しいときがありますので、感想や評価を読むことはあまりできないかかもしれません。ご理解いただけますとありがたいです。
「伊織さん、私の『天使』になってくd」
「嫌です」
...やっぱり言うと思った。今の話の流れからしてどう転んでも、俺をどっかの星の『天使』という名の神様の下で働く奴隷に仕立て上げようとする感じに持って行ってたもんな。即答する準備をしておいて良かったぜ。それにしても目の前にいる女神は笑顔のまま固まって動かない。どうやら俺の拒否が彼女に通じたようだな。
「っっ!!...伊織さん!私の『天使』になってk」
「嫌です」
「なんで拒否するんですか!あとせめて最後まで喋らせてください!2回目に至っては反射的に言ってたでしょ!」
...と思ってたが、彼女の反応は真逆だったようだ。2回も丁寧に断ったのに全然食い下がってくれない。この神様はおそらく頑固者だな。さっきまでの神としての威厳はどこにいったんだ。
「...なぜそこまで『天使』の補充にこだわるのですか」
「さっき言いましたよね!? 足りないからですぅ! 人材不足なんですぅ! 人材不足の問題はあなたたち人間の世界でもあることでしょ!?」
「あぁ、今さっきルシラさんが言ってましたね。」
俺に対する態度が変わったと思ったら、話し方すら神のイメージにそぐわない感じに変わってしまったが、神の行動1つ1つに対してツッコんでいたらキリがないので諦めることにした。さっきまでの俺の敬意も返してほしい。
話を切り替えて、確かに人材不足は日本でもよく耳にしていた。メディアで時々議論されていたり、大学の就活の際にも先輩方から話を聞いていたりもした。入社後は人事部との繋がりがあまり無かったからか、そういった苦労話は聞かなかったけど。
「『あぁ』だけで終わらせないでくださいぃ!これは神界に住む私たちにとっても重要なことなんですぅ!」
「...重要なのは分かったが、なぜ俺なんですか?」
頭をかきながらそう尋ねる。
「さっきまで礼儀正しい喋り方だったのに、なんなんですかそれぇ!?」
「...これが俺の素の態度ですよ。俺のことは良いから話してくれませんかね?」
「なっっ!!......チッ、わかりましたよ!」
神が舌打ちなんかしてもいいのか。もしかしてルシラはもともと人間だったんじゃないのか?
そう思っていると、ルシラが答えた。
「それはですね、偶然です!」
「は?」
「『は?』とはなんですか!神の奇跡によってあなたは選ばれたんですよぉ!そうじゃなかったら今頃あなたの記憶をぶっ潰して他の星にサヨナラバイバイしてるところなんですからねぇ!」
口悪すぎだろ、この女。会った最初は麗しい振る舞いをしていたけど、あれは企業でいう接客態度だったわけだ。俺が拒否したことでキレてあっちも素の態度が出たんだろう。それよりもこんな口悪いヤツがさっきの光のオーラを出せんのかよ。どういう理屈なんだよ、あれ。
「いや、選ばれたからには何か理由があるんだろうなぁ、と思ったんですけど」
「だからその選ばれた理由が神の奇跡だって言ってるんですよぉ!それとも神の奇跡が理由にはならないとでも言いたいんですかぁ!?」
「なんで逆ギレしてるんですか」
そろそろしんどくなってきた。こんなに女神がキレやすいとは思わなかった。今回はしょうがないとして次会ったときに活かそう。......二度と会いたくないけど。今もギャアギャア何か言っている。
「ハァ、わかりました。とりあえず『天使』の活動内容について詳しく教えてください。」
「そもそもですねぇ、...って引き受けてくれるんですか!?」
「まだやるとは言ってないですよ。とにかく内容を聞かないと、はいもいいえも言えないじゃないですか」
「くっ!...まったくあなたは素直じゃないですねぇ! いいですよ、私が今から教えます!」
さっき素の態度だって言ったはずだけどなと思いつつも、これを口に出したらまた余計なことになりそうなので心の中にしまっておく。
「『天使』の活動、とは言うものの基本的には1つしかありません。それはズバリ!?...」
「...星の秩序の維持・管理ですよね?」
「正解です! 先ほども言いましたが星の秩序に危機が訪れることはそうそうないです。といっても人間の感覚としては、ですけどね。平均的には百年に一度くらいの頻度ですね。」
「だったら必要ないのでは?」
「しか~し!さらにもう一つの問題があるんです!それは百年に一度の危機の中でも大きな部類の危機、千年に一度くらいの頻度の超大危機!それがとある星に訪れようとしているんです!」
「...そこに俺が行け、と?」
「そういうことです!」
「お断りします。」
「なんでですか!?」
「断るのは当たり前やろが!!誰が好き好んで死ににいく行動を取んねん!...あっ」
しまった。俺が封印していた「言葉の暴力(自称)」という名の関西弁を口に出してしまった。当たり前だが、関西弁自体が悪いものでは無い。ただ俺の場合は長らく東京にいたせいか、怒った時や理不尽な目にあった時にしか関西弁が出なくなってしまい、そのせいで引っ越した当初は少し怖がられていたのだ。だから俺はなるべくキレないようにしていたのだが、ここでそれが出てしまうとは。駄女神ことルシラでさえすこし引いている。
「さっき、これが素の態度だって自分で言ってましたけど、全然素では無かったんですね。ビックリしました。..話を戻しますが、もちろん適当にその星へ放り投げるなんていう自滅行動を取らせることはしません。その未曽有の危機に立ち向かえる最低限の力を与えますよ。」
「なんで最低限なんですか?普通にその危機を簡単に抑えられるような力を与えればいいじゃないですか。」
「努力してほしいからです。『ここでこの危機を止めなければ、今までの努力は水の泡だ!』なんていう気持ちで戦う方が力を十二分に引き出せるじゃないですか!」
このクソ女神、ヤバすぎる。「自分は戦わないから」って部下である『天使』の気持ちをフル無視しているんだろうな。
「言っておきますけど、無事に倒すことができたらその約百年後までは危機は訪れないので気ままに暮らすことができますよ。」
「...ホントですか?」
「ええ、ホントですよ。」
満面の笑顔でこの女はそう答えるが、さっきの姿を見た後では全くアテにならない。
「具体的にはどの程度の力がもらえるのですか?」
「それではあなたが今から行く世界について簡単にお話ししますね♪」
...勝手に行く前提で話を進められたがしょうがない、やるか。俺はそう心に決めた。
本当だったら2話分で女神との話を終わらそうと思っていたのですが、書いているうちに2話じゃ無理だということに気づきました作者です。次の話で女神との対話は終わると思います!...多分。
「早くグランの戦闘シーンが見たいんだよ!」という人がいるかどうかはわかりませんが、あと5・6話くらい先になると思います(もしかしたら10話くらい先かも)。期待している読者がいたらごめんなさい。
こんなド素人の作品を読んでいただいた読者の皆様、誠にありがとうございます。これを伝えるのは二度目になりますが、筆者自身は暇つぶしとして頭の中で思いついた世界を文章にしてみただけですので、投稿頻度は不定期になります。ご理解いただけるとありがたいです。