グラン、覚醒 その3
普段は小説を読む側のド素人が暇つぶしに書いてみた作品ですので、読者の皆様も暇つぶし感覚で気ままに読んでいただけたら幸いです。また、本業の方が忙しいときがありますので、感想や評価を読むことはあまりできないかかもしれません。ご理解いただけますとありがたいです。
「人間の情けない姿を女神様に見せてしまい、申し訳ないな.....」
「気にしないで下さい。予期せぬ別れのつらさは想像に難くないですから。」
聞こえない声で自分の素の思いを口に出したと思ったら、どうやらルシラに聞こえていたようだ。恥ずかしいことこの上ない。
「女神様からのお慈悲に感謝申し上げます。」
わざわざ俺のことを気にかけてくれたのはとてもありがたかった。ルシラ様のおかげで今現実を受け入れることが出来たからな。あの場面で会ったばかりの俺を抱きしめるなんて行動は普通ならできない。さすが女神様だ。俺はそう思いながら片膝を床につけるこうべを垂れる。.....もちろん、さっきの言葉を聞かれたのが恥ずかしいからでもあるが。
「いきなりそんな堅苦しい言葉でお礼を言わないでください!...それに私は神である立場としてやるべきことを行ったまでです。」
あれを当然のことだと思っているとは...女神ルシラ様の人徳の高さが垣間見えたな。他の神様も同じような感じなのだろうか。
「えっと...それよりもですね。先ほどの質問以外に何か聞きたいことはありますか?」
「大丈夫です。さっきの質問で吹っ切れましたから!」
「そういう意味で聞いたわけではないのですが...とりあえず伊織さんが前向きになれてよかったです。それでは、最初の質問の答えに戻りましょうか。しっかりと目を開けていてくださいね。」
そう言うと女神は指をパチンとならす。すると、10個前後のやや大きな水晶が空中に現れ漂っている。大きさでいうとボウリングの球くらいだろうか。俺の一番近くにあったそれに目を向けると、中には何か描かれていた。
「これは...地球ですか?」
「その通りです。私は他の神たちと共同で12の星の管理・観察を行っています。その12のうちの1つがあなたがさきほどまで住んでいた地球なのです。」
俺は他の水晶にも目を向けてみる。地球に似た緑豊かな星もあれば、星の表面すべてが砂漠のような黄土色で覆われている星もある。
「地球以外のすべての星にも地球人のように人間が住んでいるのですか?」
「ええ、住んでいますよ。生態系は地球とは異なりますが、それぞれの星すべてで人間が生活しております。私たちはそんな人間たちが安定した暮らしを送れるように星の秩序を維持する活動を行っているのです。」
そう言いながら女神は1つの水晶に触れる。するとまるで地図アプリをズームしたかのように徐々にその星が拡大されていき、しばらくすると1つの国らしきものが見えた。その国は、日本という先進国にいた俺としては立派な国とは言いがたいが、そこで活動する人々たちの様子は活気づいていた。
「これで私が神だというのを信じていただけましたか?」
「さすがにここまで見せていただいて信じないわけにはいかないですよ。」
神様だということを本気で疑っていたわけじゃないけど、こんな大掛かりなものを見せられて信じれないはずがない。それにこれ以上突っ込んでも優しくしてもらったルシラさんに迷惑がかかるだけだしね。だけど1つ気になったことがある。
「ちなみに、先ほどこの全部の星の秩序を管理・観察しているとおっしゃっていましたが、実際に現地で観察しているのですか?それともここで?」
「良い質問ですね、伊織さん。あなたならどのように管理を行いますか?」
「...え!?えっと...」
逆に質問されてしまった。どうもこうも働いていた企業で管理職に就く前に俺はこの場所に来てしまったから、そういった経験は一切無いのだから答えようがない。とりあえずそれっぽいことを答えるか。
「さっき、星の管理を行っているのはルシラさんだけではないと聞いたのですが...」
「はい、私のほかに2神の、三神体制で管理をしています。」
「...ということは単純計算でも1神あたり4つの星を管理することになりますよね。僕が4つの仕事を掛け持ちでやるとなったら、それぞれの全体的なチェックを自分が行って細かいところは部下に任せるといった感じですかね。」
「正解です!!」
「...へ?正解とは?」
意味が分からない。あなたならどうやって管理するか、と聞かれただけなのに正解もクソもないだろう。
「私たちも同じように管理を行っているのです。さきほどのように私が水晶に触れて星を拡大し、それで星に住む人たちの様子を観察します。そしてなにか不穏な状況が見えた場合、部下である『天使』に現地でそれを解決してもらうのです。」
「なるほど、そういうことだったのですね。」
「そして伊織さんの質問を良い質問だと言ったのには理由があります。というよりもここからが本題なのです!」
「え、今までの話は前座だったのですか?」
「当たり前です!それにさっき言ったはずですよ、あなたの今後に関わる話だと!通常でしたらあなたの魂についた垢、つまり前世の記憶を浄化してそのまま他の星へポンとすでに飛ばしています!」
彼女はなぜか胸を張ってそう答える。まず、俺の前世の記憶を魂の垢と表現するとはひどい言い草だな。それに、確かに今後の話をするとは言っていたものの本題だったとは聞いてない。今までの話はどうでもよかったんかい。...あ、だからさっき俺にしたハグは当然の行いだと言ったのか!
今までに何万人何十万人、いや何百万人の魂を転生させてきたのだろう。あの行動も仕事の1つだったのか。......それを先に言っといてほしかった。俺のルシラさんに感動した思いを返してほしい。
少し悲しくなっている俺をよそに女神は話を続ける。
「先ほど現地の調査・平定は『天使』たちにお任せすると言っていましたが、実は数が足りていなくてですね...1つの星に1体しかいないのです。もちろん、星の秩序を揺るがすような状況というのはめったに起こるものでは無いので現状1体でもなんとかなってはいるのですが、いざ実際に起きた場合に助けるのが1体だけというのは心もとないのです。」
...なんとなく女神の言いたいことがわかったが、俺は空気を読める男なので口を開けるのを我慢する。その代わりではあるが、何を言うかはもう決めてある。
「つまりですね...単刀直入に言います!伊織さん、私の『天使』になってくd」
「嫌です」
こんなド素人の作品を読んでいただいた読者の皆様、誠にありがとうございます。これを伝えるのは二度目になりますが、筆者自身は暇つぶしとして頭の中で思いついた世界を文章にしてみただけですので、投稿頻度は不定期になります。ご理解いただけるとありがたいです。